2023.12.16

CARS

新たに生まれたクラシック・ポルシェの聖地「ポルシェ・クラシック・トレーニングセンター」に潜入! ポルシェの夢と情熱を繋ぐ場所

ここがポルシェ・クラシック・トレーニング・センター・ヴェルク・アインシュだ。

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930と993が収められたクラシカルな趣きのあるガレージ。実はここはポルシェ・ジャパンが横浜に開設したクラシックのテクニシャンを養成する専用の施設なのだ。

横浜のWerk1

東海道新幹線の新横浜駅から程近い場所に、ポルシェ・ジャパンのトレーニングセンターがある。現行のすべてのモデルに対応する最新設備が整い、毎日、全国のポルシェセンターからメカニックやセールススタッフらが集まり、トレーニングや研修が行われている、まさにポルシェ・ジャパンの舞台裏を支えているというべきこの施設の一角に、22年10月にオープンしたのが、ポルシェ・クラシック・トレーニングセンターだ。



「現在、新車を含め国内で10万台存在しているポルシェのうち、1.1万台が空冷の911、同じく1.1万台が996、997というデータがありますが、日本でもクラシック活動のさらなる強化をスタートし、現在では全国4箇所のクラシック・パートナーを展開しています。そうした動きをさらに盛り上げていくためには、やはりテクニシャンの経験、知識の向上は欠かせません」

と話すのは、ポルシェ・ジャパンのプロダクト&クラシックを担当する富田晃弘さん。これまでクラシックのトレーニングはドイツ本国で行われてきたのだが、高まる需要に合わせ、本社の方針でアメリカ、イギリス、フランス、イタリア、オーストラリア、日本に拠点を設立し、地域のハブとしてクラシック・トレーニングを行うことになったのだという。

エンジンの教材として930ターボと、993の空冷フラット6も用意。全員がフル・オーバーホールを体験する。

中でも日本が頭抜けているのが、その施設だ。建物内の一角にある部屋の扉を開けると、近代的な施設とは一変して、2基のリフトを備えたワークスペースと、ミーティングスペースを備えた木の床とレンガの壁で仕立てられたクラシカルなワークショップが現れる。

「日本でのトレーニングは22年4月から始まっているのですが、受講する皆さんにより夢と情熱を傾けていただけるように用意したのが、この部屋です」

実はこのポルシェ・トレーニングセンターの各部屋には、ル・マン、ニュルブルクリンク、富士などポルシェにゆかりのある世界各地のサーキットの名が付けられているのだが、この部屋の名前は“Werk1(ヴェルク・アインシュ)”。そう、鋭いポルシェ・マニアの皆さんならお分かりの通り、この内装は1938年に設立されたレンガ造のツェフェンハウゼン本社工場Werk1をモチーフとしたものなのだ。



2年間で6項目を学ぶ

続いてトレーニングの内容について、クラシック・トレーナーを務める初澤純さんに伺った。

「基本的には本国と同じで、6つのカリキュラムが設定され、1つにつき4日間のトレーニングを実施。全てが終了するのに約2年のスケジュールが組まれています」

具体的にはまず、すべてのクラシック・モデルの構造や機能、歴史などを学ぶ基礎研修からスタート。2つ目は80年型の911SC、95年型993を教材にトーションバーの取り付けや車高調整、マルチリンクのアライメント調整などを学ぶシャシー編。3つ目が89年型911ターボと、993のフラット6を教材にフル・オーバーホールを行うエンジン編。4つ目がポルシェ・シンクロの915型、ワーナー・シンクロのG50型のフル・オーバーホール、そしてキモというべきデファレンシャルの調整を学ぶギアボックス編。5つ目がキャブレター、ボッシュ・メカニカルポンプ、Kジェトロ、DMEなど種類も多くトラブルも多い、フューエル&イグニッション編。そして6つ目がテスターなどを用いて、実践的にトラブルシューティングを行う故障診断編となり、最後にドイツから担当者が来日し、1人につき合計6時間かけて行われる卒業試験となり、合格すると晴れてポルシェ・クラシック・テクニシャンの称号と、ポルシェ本社の認定証書を受領する仕組みになっている。


そのためにWerk1には、ポルシェ・ジャパンが所有する実車、エンジン、ギアボックスなどの教材、各モデルのマニュアル、専用工具、テスターなどが完備されているだけでなく、40年以上ポルシェ一筋に携わってきた初澤トレーナーの、豊富な知識と経験が詰まっている。

「ただ部品を交換するのではなく、構造、機能も知るのがトレーニング。お客様が情熱を持って所有されているように、直すテクニシャンも情熱を持って直す。それが行われていけば良いと思っています」

近年、特にクラシック系のパーツ、サポートが充実を見せているポルシェだが、クラシック・トレーニングを通じ、日本中のポルシェセンターで質の高いメンテナンスを受けられる状況が整うのは、ポルシェ・オーナーにとって何よりの安心材料になるはずだ。

文=藤原よしお 写真=茂呂幸正 取材協力=ポルシェ・ジャパン



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(ENGINE2023年11月号)

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