2023.05.28

CARS

【後篇】「やっぱりフェラーリだ!」これがSF90ストラダーレに乗ったモータージャーナリストが叫んだ生の声だ! SF90ストラダーレ、296GTB、ローマに乗って激論座談会!

SF90ストラダーレ、296GTB、ローマに乗って激論座談会!

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4ドア4シーターのスポーツカーと自ら主張するプロサングエの登場を待つまでもなく、このところ新たなジャンルのスポーツカーを続々と世に問うているフェラーリ。その現在とこれからについて話し合うべく、モータージャーナリストの島下泰久氏と藤原よしお氏、エンジン編集部のムラカミの3人が3台のフェラーリに乗って、座談会を行った。今回はその後篇をお送りする。◆前篇から読む場合はコチラから!

先んじていたSF90

村上 そういう意味ではSF90は過渡期のクルマという気がする。296では電気で走っているのもエンジンで走っているのも関係ないって言ってたけど、SF90は今、何で走っているのか、エンジンか電気か、じゃあいつ四駆になるんだ? みたいなことを常に意識させるんだよ。

藤原 それはホントそうだわ。

試乗車はアセット・フィオラノ仕様で、ヴェルデ(緑)・ブリティッシュのボディにはシルバーの矢印が入っていた。


村上 最初に乗った時、試乗車を六本木で借り出し、東名の東京料金所まで電気だけで走れて本当に驚いた。フェラーリ変わったなって思いましたよ。だけど山で走っていると「やっぱりフェラーリだ!」ってなる。

藤原 結局、エンジン型式は何でも関係無いってことじゃないですか。ポルシェみたいに絶対フラットシックスじゃなきゃいけないっていうことはない。エンジン型式が何でも結局フェラーリになっちゃう。駆動方式だって、四駆だろうが何だろうが。

ドライバーが視線を動かすことなく、運転に集中できるようにデザインされたSF90のインテリア。ステアリング上のタッチ・スイッチを操作して、必要な情報を液晶メーターに呼び出せる。


島下 歴史上、エンジン型式も駆動方式も色々と変遷してきているんですよね。今日の3台だって全部違っているという。

村上 V8フェラーリだってある期間のもので、ディーノから繋がっているかって言ったらそうでもない。今回これで無くなっちゃうかもしれないしさ。そしてまた新しい花が出てくる。ずーっと同じ花を発展させていく、というものではないんだね。

藤原 だから名前も見た目もコロコロ変わる。けれど、それはその時々の正解なんです。ポルシェみたいに垂直に進化させるのではなく、水平展開していくのがフェラーリ流。

島下 SF90も、何かの後継みたいなしがらみに囚われずに作ったから前輪モーター駆動みたいなこともできた。こういうスペチアーレ的なモデルは将来に活かされる何かを試しているんですよね。過渡期というより、先んじているんですよ。

斬新なデザインのバケット・シートはフルカーボンにレザー張り。


ローマは若い!

村上 実はSF90では僕のスマートフォンに入っているクラシック音楽、ブラームスやベートーベンを聴きました。でも296、そしてローマではまったく聴く気にならなかった。

藤原 ローマは室内にエンジンのサウンドが結構響くんですよね。

村上 そう、イメージがまったく逆だよね。SF90は1000psだし、レーシングカーみたいなのかと思って乗ったら、びっくりのジェントルなクルマだった。一方、ローマはすごくエレガントな乗り物なのかと想像したら、エンジンはスゴい音がするし、まさに全開丸出しのスポーツカー。これは賛否両論かな、きっと。



島下 僕としては、そのエロさの演出がストレート過ぎるかな、と思った。612スカリエッティとかは、オヤジの湿った感じのいやらしさですよね。でも、ローマはもっと若い。

藤原 そう、若いんだよね。

村上 今日乗った3台の中で、実はコレが一番ヒリヒリしました。クラシック音楽をかけるには見た目は最適なんだけど、音スゴいし、スポーツカーそのものだからね。おそらくSF90だと、フェラーリをわかっている人が買うクルマだから、静かでも「こういうのもアリだよね」って言ってもらえる。けれど、ローマでそれはダメなんだね。

斬新でエレガントな外観同様、まったく新しいコンセプトのデザインを取り入れたインテリアを持つローマ。運転席と助手席はそれぞれが繭のように包み込まれた形状になっている。


島下 ローマは間口を広げに行っているから、皆にフェラーリらしいと思ってもらえるものになっているのかもしれない。

藤原 価格的にもエントリーに当たるモデルですしね。

村上 「おーっ、これがフェラーリか!」ってなりたいもんな。

シートをはじめ、フラウのレザーをふんだんに使い、スポーティかつラグジュアリーな空間を演出。ミニマムながらリア・シートも用意される。


王国、ナポレオン、共和政

島下 こうして見ていくと、フェラーリって実はすごく市場やユーザーを見て、そこに響きそうなものを出しているんですね。実際、プロサングエもそういうクルマだと思うし。

藤原 一番、旬のモノをパッと出して。美味しいでしょコレ? って。それができるからずっとトップでいられるわけですよね。

村上 僕は2000年にこのENGINEが始まって以降しか知らないんだけど、その頃のフェラーリは、モンテゼーモロという人に象徴されるブランドだった。それがね、プロサングエの試乗会に行った時に話した若いエンジニアは、今のラインナップはすべてマルキオンネになってから出たもので、プロサングエも彼がいなければ絶対に出なかったんだって、すごく誇りに思っているんだよ。マルキオンネになって初めて、デザイナーもエンジニアも各々が自分の考え、意見を通せるようになった。そういう感覚なんだよね。

島下 それぞれに「フェラーリとはなんぞや」を持つ人たちがエネルギーをぶつけ合っているのが今。だから“らしくない”“らしい”で言ったら間違いなく“らしい”と思います。誰か個人の顔が出るんじゃないのが、今のフェラーリらしさ。



村上 ある意味、エンツォ・フェラーリの時代は王国だったわけじゃない。それが一旦グチャグチャになって、出てきたナポレオンがモンテゼーモロ。けれど結局は敗れて共和政になったという。共和政になる時には、あるいはマルキオンネはロベスピエールみたいに沢山の人をギロチンに送ったのかもしれないけれど、結果として良い国ができた。

島下 ナポレオンも必要ではあったんですよね。

村上 もちろん、彼がいなければ共和政も生れなかった。さて、そろそろ結論に行きましょう。変わったんでしょうか、それとも変わっていないんでしょうか、フェラーリは。

島下 ずっと変わり続けてきたんじゃないですか。今まで変わっていないわけではなくて。

村上 確かフランツ・カフカの言葉で、「変わらないもの、それは変わろうとする意志だ」というのがあるんだけど、そういう常に変わろうとする意志を持ち続けて、実際にどんどん変わっていくのが、フェラーリなのかも知れない。

藤原 実際のところ、パワーが要るじゃないですか、変わり続けるのって。その情熱たるや、やはりこのメーカーは違うなと思います。ひとつところで掘り下げるより、どんどん水平移動して変わっていく。そういう変わり方をしていると思う。

村上 だから、次にどんなものが飛び出してくるか、まったく予想できない。とにかく、変わろうとする意志は常に変わらないのだからね。

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話す人=島下泰久(まとめも)+藤原よしお+村上 政(ENGINE編集長) 写真=柏田芳敬

■ローマ
駆動方式 フロント縦置きエンジン後輪駆動  
全長×全幅×全高 4656×1974×1301mm  
ホイールベース 2670mm  
車両重量(車検証) 1630kg(前軸810kg:後軸820kg)  
エンジン形式 直噴90度V8DOHCツインターボ  
排気量 3855cc  
ボア×ストローク 86.5×82.0mm  
最高出力(システム計) 620ps/5750-7500rpm  
最大トルク 760Nm/3000-5750rpm  
トランスミッション デュアルクラッチ式8段自動MT  
サスペンション(前) ダブルウィッシュボーン/コイル  
サスペンション(後) マルチリンク/コイル  
ブレーキ(前後) 通気冷却式カーボン・セラミック・ディスク  
タイヤ(前/後) 245/35ZR20/285/35ZR20  
車両本体価格(税込み) 2676万円  

■296GTB
駆動方式 ミドシップ縦置きエンジン+電気モーター後輪駆動  
全長×全幅×全高 4565×1958×1187mm  
ホイールベース 2600mm  
車両重量(車検証) 1660kg(前軸660kg:後軸1000kg)  
エンジン形式 直噴120度V6DOHCツインターボ  
排気量 2992cc  
ボア×ストローク 88.0×82.0mm  
最高出力(システム計) 663ps/8000rpm(800p)  
最大トルク 740Nm/6250rpm  
トランスミッション デュアルクラッチ式8段自動MT  
サスペンション(前) ダブルウィッシュボーン/コイル  
サスペンション(後) マルチリンク/コイル  
ブレーキ(前後) 通気冷却式カーボン・セラミック・ディスク  
タイヤ(前/後) 245/35ZR20/305/35ZR20  
車両本体価格(税込み) 3710万円  

■SF90ストラダーレ
駆動方式 フロント縦置きエンジン後輪駆動  
全長×全幅×全高 4710×1972×1186mm  
ホイールベース 2650mm  
車両重量(車検証) 1800kg(前軸800kg:後軸1000kg)  
エンジン形式 直噴90度V8DOHCツインターボ  
排気量 3990cc  
ボア×ストローク 86.5×82.0mm  
最高出力(システム計) 780ps/7500rpm(1000ps)  
最大トルク 800Nm/6000rpm  
トランスミッション デュアルクラッチ式8段自動MT  
サスペンション(前) ダブルウィッシュボーン/コイル  
サスペンション(後) マルチリンク/コイル  
ブレーキ(前後) 通気冷却式カーボン・セラミック・ディスク  
タイヤ(前/後) 255/35ZR20/315/30ZR20  
車両本体価格(税込み) 5340万円  

(ENGINE2023年6月号)

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