911誕生60周年を記念して『エンジン』の過去のアーカイブから"蔵出し"記事を厳選してお送りするシリーズ。10回目の今回は、991型911の登場を機に2015年6月号に掲載したポルシェ911特集から、「ポルシェ911原論」と題した901から991まで続く進化の歴史を紐解いたストーリーの3回目、水冷化された996から991までの大躍進の様子をお送りする。◆1回目の901から読む場合はこちら!
1997年、ついにタイプ996を発表 完全刷新と賛否を分けた水冷化
サスペンション問題をついに解決したポルシェは、長年、信を置き続けた空冷エンジンと遂に決別の時を迎える。新設計水冷エンジンの採用が要求するボディ設計刷新は、ボディを大きくするが、運動能力も大きく引き上げた。
ポルシェは、新規に完全水冷式の新世代エンジンを開発して996型を投入することになる。901プロトタイプの発表から、実に35年後のことである。ポルシェの空冷エンジンからの撤退は、チェコのタトラが空冷V8エンジンをリア・マウントするT600/700系の生産を打ち切り、乗用車部門を撤収したのと、奇しくも同時期となった。

タイプ996は空間設計の刷新に合わせて、911史上初めて、居住空間が拡大された。水冷化や厳しくなった衝突安全規制への対応と同時に居住性向上を行ったわけである。シャシーのサイズは993において先行して拡大されていたが、996ではホイールベースを80mm伸ばして、シャシー性能のさらなる引き上げも行われた。
構成部品の何もかもが901型ポルシェから離れた996は、その投入前に市場導入されていたミドシップ・エンジンの2座オープン・スポーツカー、ボクスターとボディ前半やエンジン設計を同じくするなど、量産車としてのスケール・メリットがタイプ993までの911から飛躍を遂げ、長年つきまとっていた経営難の問題からついにポルシェを解放する大役を成し遂げる



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