あなたのちょっと古いクルマ見せてください！　ランチア・デルタがお気に入りのジャーナリスト、桐畑恒治さんの「僕がデルタに乗る理由とは？

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2014年型のランチア・デルタに乗るモータージャーナリストの桐畑さん

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ちょっと古いクルマに乗り続けてはや30年。その時々の生活スタイルに合ったものを選んできたというモータージャーナリストの桐畑さんがいまチョイスするのは、ちょっとニッチなイタリアン・ハッチだ。

期待を裏切るデルタ乗り

“ちょっと古いクルマ”というには新しい部類に入るであろう、僕のいまの愛車は2014年式ランチア・デルタだ。「デルタに乗っている」というと大抵の人はかつてWRCを席巻したHFインテグラーレを思い浮かべるが、僕の愛車はそれから2世代後のモデル。日本でも一時正規輸入されていたが、すぐに途絶えてしまったので、街で遭遇する機会はほとんどない。だから「あのデルタですか！」なんて言われると、期待を裏切ったようで申し訳ない気持ちになったりもするが、個人的にはチョーお気に入りの1台なのである。

ブラウンとブラックの2トーンでコーディネートされた2014年式ランチア・デルタ。

ブラウンとブラックの2トーンでコーディネートされた2014年式ランチア・デルタ。

手に入れたのはちょうど2年前のこと。それまでスマート・ロードスターとメルセデス・ベンツML（2代目）という2台体制を敷いていたが、20年勤めた某自動車雑誌編集部を卒業し、フリーランスとなったばかりの当時の僕にとって、都内住みで2台持ちは経済的にちょっと厳しかった。その前年に新しい家族として迎えた柴犬との生活も維持していかなきゃならないからと、2台を手放し、身の丈に合った1台にしようというときに出会ったのがこのデルタだった。

なぜこんなマイナーなモデルを選んだのかというと、それはランチアというブランドやこの世代のデルタそのものに親近感を覚えていたからにほかならない。

スマートRSのような小型オープンはまたいつか手に入れたいという。

ランチアを知ったのは幼少の頃。初めて親に買ってもらったRCカーがアリタリア・カラーのストラトスだったのである。他の何にも似ていない楔形のフォルムは幼い僕の心を鷲掴みにし、四六時中そのストラトスで遊んでいた。それがきっかけでランチアにはずっと特別な思いを抱き、いつかはと目論んでいたのが現実のものとなったのは2007年のこと。前職の編集部で中古車長期テストを担当することになり、95年式デルタHFインテグラーレと2年ほど生活を共にしたが、憧れのランチアとの生活は幸せに満ちたものだった。その時点で12年落ちの中古車だったから多少のトラブルには見舞われたものの、それを補ってあまりあるドライビング・ファンと所有する喜びが得られたことが強く印象に残った。そのときに現在の愛車となる第3世代デルタの新車試乗記を担当し、印象もすこぶるよかったのだ。

フラウ製のレザー・インテリアも上質で、シートの掛け心地が抜群なのもお気に入りのポイント。

フラウ製のレザー・インテリアも上質で、シートの掛け心地が抜群なのもお気に入りのポイント。

3代目のデルタは当時のメルセデス・ベンツCクラスなどとほぼ同サイズのハッチバックゆえ、居住性と使い勝手の高さは抜群。ボテッとした印象を受ける見た目にも、どこか優雅さが漂っているのもいい。その時すでに「これが中古車になったらアリかも」と思っていたから、一昨年に走行7万8000kmの個体に出会い、販売価格を確認すると同時に「これください」と言ったのは必然だったといえる。

実際にデルタと2年を過ごしてみたが、いまもって不満はほとんどない。後席が広く居住性が高いところも、家人と愛犬をリア・シートに乗せる我が家の乗車スタイルには合っていた。ふたりのショーファーとなる僕にしても、素直なハンドリングやしなやかな乗り心地は何よりの癒しである。1.6リッター直4ディーゼルターボの出力は120ps／31.0kgmだから出力的には物足りず、6段セミATの鈍重なマナーも残念なところではあるが、仕事を忘れてのんびりとドライブする日常にはそれくらいがちょうどいい。この手のイタリア車にありがちなトラブルも皆無で、この2年で約1万kmを走ったが、見舞われたのは社外カーナビの装着に起因する熱暴走のような症状くらい。それもすぐ解消された。

昔からのランチアへの憧れを壊すことなく、自分の生活スタイルにしっかりと寄り添ってくれているデルタは、所有する喜びを与えてくれる存在だ。そんなさりげなく良いモノ感を漂わせるデルタからは当分離れられそうにない。

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文＝桐畑恒治　写真＝望月浩彦

1.6リッター直4ディーゼル・ターボのパワーに物足りなさを覚えることもあるが、日常遣いでは必要にして十分の仕様。