教育を受けることが困難な地域で、熱い信念をもって教壇に立ち続ける3人の若き女性。彼女たちと子供たちの交流を捉えた、感動のドキュメンタリー映画が伝える大切なメッセージ。
15歳以上の識字率が41.2%
家庭が貧しくて就学費用がない、家の近くに学校もなければ先生もいない……。様々な理由から教育を受けられない子供たちは、世界に約1億2100万人もいる。いわゆる教育後進国では、この問題を解決するための様々な施策が講じられているが、その要となるのはやはり、子供たちを導くことのできる良き教師の有無だろう。エミリー・テロン監督によるドキュメンタリー映画『世界のはしっこ、ちいさな教室』は、そんな国々で奮闘する3人の女性教師の姿を捉える。

15歳以上の識字率が41.2%と、世界で最低ランクのアフリカ・ブルキナファソ。水道もガスもない僻地の村に派遣されたのは新米教師のサンドリーヌだ。2人の娘を持つ彼女は、家族を離れて6年間、この見知らぬ土地で暮らすことになる。だが、5つの言語が飛び交う児童約50人の教室では、公用語のフランス語を理解できる子はほとんどいない。
一方、雪に包まれたシベリアで、教材や机を乗せたトナカイのソリを駆りながら、遊牧民族・エヴァンキ族のキャンプ場をまわるスヴェトラーナ。1カ所につき約10日間の授業を行っている。ロシア連邦の義務教育だけでなく、彼女自身のアイデンティティでもあるエヴェンキ族の伝統や言語を子供たちに伝え残すことを使命としている。
揺るぎない信念をもって
そしてモンスーンの影響により、1年の半分は土地が水没してしまうバングラデシュの北部。ボート内に設けた教室で教鞭を取るのは、教育こそが子供たち、とりわけ女子の未来を変えると力説するタスリマだ。15歳未満の女子の約16%、18歳未満の約51%が児童婚を強いられる社会において、彼女自身が結婚を勧める親を説得して、高校を卒業した過去を持つ。

土でできた教室で、雪に閉ざされたキャンプ場で、はたまたボートの上で粘り強く、そして揺るぎない信念をもって児童たちと向き合う若き教師たち。その姿には感服するばかりだが、祖国や自分たちの民族を愛し、その未来を憂える心が、彼女たちのパワーの源となっていることが熱く伝わってくる。
もちろん熱意ある教師の力だけで変えられない暗い現実はいくらでもある。だが本作品のトーンはあくまで前向きで希望に満ちている。子供たちの輝かしい未来は、我々、大人たちのアクション次第であることを改めて、思い起こさせるかのように。
■「世界のはしっこ、ちいさな教室」は7月21日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国公開 (C)Winds - France 2 Cinema - Daisy G. Nichols Productions LLC - Chapka - Vendome Production
文=永野正雄(ENGINE編集部)
(ENGINE 2023年7月号)
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