2023.08.13

CARS

ヤフオク7万円・走行約16万kmのシトロエン、10カ月の整備を終えてついに路上へ復帰! ついに天国に辿り着いたかと思いきや、地獄行き?【エンジン編集部員のシトロエン・エグザンティア(1996年型)長期リポート#23】

納車を祝って集まってくれたシトロエンたち。右側はかつて僕が託された3代目のエグザンティア。こうして今の4代目と2台が並ぶ日が来るとは、感無量である。

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ヤフー・オークションで落札した7万円のシトロエン・エグザンティアを、10カ月と200万円かけて修復したエンジン編集部員ウエダの自腹散財リポート。今回は細々した最後の仕上げと、車検を新たに2年取得し、いよいよ迎えた納車当日の様子をご報告する。

メンテは続くよどこまでも?

外装のオールペイント、内装の分解とリペア、各種補機類およびエンジンのヘッドのオーバーホール、オートマチック・トランスミッションの分解清掃、駆動系をはじめ、膨大な消耗品の交換などなど……。長きにわたってリポートしてきたシトロエン・エグザンティアの修復もここでようやく一区切りだ。

まさかこの後、地獄が待っているともしれず、これぞ天国と舞い上がっている著者。

シトロエン特有のハイドローリック回路など、部品の入手が困難で手を入れられなかった部分も多々あるのだが、予算の都合もあり、主治医のカークラフトでの10カ月間の作業はいったん終了。2022年3月末日、晴れて納車の日を迎えることになった。

とはいえ公道を走り出すには、細々とした作業が残っていた。具体的には灯火類とワイパーの補修、タイヤの選定と交換、バッテリーの交換と追加ケーブルやターミナルの新規作成、さらに車検および24カ月点検と、テスト走行で発覚した不具合の検証と整備、最後に室内外のクリーニングである。

まず灯火類。ヘッドライトは海外から手に入れた新品のユニットの内側とオリジナルの左側通行用ガラスをニコイチに、テールランプも前オーナーのストックしていたオリジナルに戻しておいたので問題なかろうと思っていたのだが、意外なところが駄目になっていた。ハイマウント・ストップ・ランプである。樹脂のケースの上側が割れていたので分解してみたところ、過去の改造だろうか。電球をLEDに代えた際に、回路を無理矢理押し込んだ形跡があった……。

元のハイマウント・ストップ・ランプを取り外したところ。外側のケースが割れている。時間が経ってくると、自然落下してしまうケースもあるそうだ。

純正のストック品があればよかったのだが、当然国内では欠品。割れた樹脂は残念ながら修復不可の素材だった。実は執筆時(2023年7月時点)では海外のショップの在庫を見つけているのだが、この当時は販売していなかった。そこで部品取り車のアクティバからランプを流用しようとしたところ、これがなんとまったくの別物。後期型に相当するアクティバのハイマウント・ストップ・ランプは、前期型のようにリアのガラス内側に付くのではなく、リア・ハッチ自体に組み込まれている。

まぁハイマウント・ストップ・ランプなんて汎用品が何処にでもあるだろう……と思ったのだが、意外と探してみると見つからない。高い照度は必要なく、むしろ信頼性と耐久性、電球の交換のし易さありきのパーツなので、LEDではなく普通の汎用の電球型で良かったのだが、目立たず、ちょうどいい幅のものがなかなかない。新車時に付いておらず、後から追加したのであれば外してしまってもいいのだが、元々あったものなのでそういうわけにもいかない。かつてはそれなりに需要があっただろうに……。

147用のランプを上下ひっくり返し、さらに加工して装着したところ。見事に違和感なし。

結局、カークラフトにあった部品取り車両のアルファ・ロメオ147用のハイマウント・ストップ・ランプをひっくり返し、さらに加工すると、ちょうどエグザンティアのリア・ガラス上部にぴったり合うことが分かった。

例によってこうやって文章で書いてしまうとたったの1行で済んでしまうが、ここに至るまで長い試行錯誤があることもお忘れなく。147だけでなく、初代ランチアYのランプもバラしたりしたそうだ。他車の部品を流用するこのような作業は、専門店やディーラーではなかなか難しい。多種多様なクルマを触っているからこそ、気づけることだ。カークラフトの篠原さんは、あれは使えないか、これはどうだろうかと、晩酌の合間や、たばこをくゆらせながら考えているんだよ、と笑う。

ワイパーだってオーバーホール

ワイパー・ユニットも、こういう時でないとまず手を付けない部分の1つだ。バルクヘッド側の清掃は終わっていたので、リンクとモーターを内部まで分解し、給油し、アームを再塗装し、ブレードとゴム類はもちろん交換した。

再塗装されたワイパー・アーム。黒いところが黒いとクルマが引き締まる。

「こんなところまで、まずほかの工場ではやらない」と篠原さん。でも、いったん壊れると、雨の日、確実に困るのは間違いないところだ。下手したら廃車になるまで分解しない場所ではあるが、先回りしてやっておけば、これからもずっと安心して乗れる。一事が万事、エグザンティアの整備はこういう感じで進んだ。それが結果的には、ユーザーが長くクルマと付き合えることに繋がるからだ。

ワイパー・ユニットの上のカウルは長い一体成形のものなのだが、残念なことに割れてしまっていた。ここは部品取り車もたいてい劣化して駄目になっているところだが、新品は例によって入手できなかった。この覆いがないとワイパー・モーターに直接雨風があたり、落ち葉やゴミも入る。幸いカバーは変形していなかったので、割れたままそっと組み付けることにした。外から見てもほぼ気がつかない場所だったし、脱着にはこの方がずっと楽である。

貴重なクラシック・カーであれば徹底してデッドストック部品を探してオリジナルを追求するのもいいし、個人的には1度ぜひやってみたいことではあるけれど、エグザンティアは毎日を共にする実用車だ。こだわりはある程度抑えたほうがいい、ときもある。なにせ予算が無尽蔵にあるわけじゃないですし。

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