2023.08.07

CARS

タワマンから市街地レースが観戦できる!? 2024年3月に有明で開催! フォーミュラEが東京にこだわった理由

ローマで開催された第13戦より 写真:PORSCHE AG

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フォーミュラEが来春、東京で開催されることが発表された。最新のこのレースはどういうものになっているのか、また今回の決定は、フォーミュラEにとってどんな意味を持つのか?

市街地で行えるレース

フォーミュラEが東京にやってくる。6月20日、フォーミュラEは2024年に行われるシーズン10の開催カレンダーを発表。全17戦のうち、3月30日(土)に開催する第7戦に東京を組み込んだ。臨海エリアの東京ビッグサイト(江東区有明)周辺に特設コースを設置する。

フォーミュラEは専用の電気自動車によるレースシリーズで、14年に始まった。エンジン車のように走行中に排ガスを出さず、爆音を撒き散らさない特徴を生かし、市街地コースで行うのを特徴とする。車両を走らせるのに使う電気は、バイオ燃料を使って現地で発電する(ゆえにカーボンニュートラル)。レース会場といえば人里離れたエリアと相場が決まっていたが、アクセスに便利な場所で開催するのがフォーミュラEの特徴。すべての走行プログラムを1日に集約し、観戦しやすくしたのも特徴だ。レースを目的に見に来る人たちだけでなく、普段から周辺を回遊している人たちに、レースやサステナビリティに興味を持ってもらう狙いである。

23年のシーズン9から、車両はGen3と呼ぶ第3世代に切り替わった。カーボンモノコックを核とするシャシーとバッテリーは全車共通。モーター、インバーター、減速機で構成される電動パワートレーンは独自開発が可能だ。この電動パワートレーンは参戦マニュファクチャラーが自前で開発することも可能だし、他社から供給を受けることも可能な規則となっている。



ニッサンが参戦

量産車のEVシフトとリンクすることもあり、フォーミュラEはシリーズ開始当初から活況で、シーズン9は11チームが参戦。このうち自動車メーカー系チームは8チームあり、ポルシェ、マセラティ、ジャガー、DS、クプラ、マヒンドラ、NIO、日産が参戦している。

ドライバーもF1やル・マン24時間を経験した一流どころが多く、A・ロッテラー(アンドレッティ)、S・バンドーン(DS)、S・ブエミ(エンビジョン)、L・ディ・グラッシ(マヒンドラ)、A・ダ・コスタ(ポルシェ)と多士済々だ。

Gen3車両はGen2より100kW大きい350kWに最高出力が引き上げられたのが特徴で、最高速度は320km/hに達する。コースレイアウトの制約でマックス値に達するとは限らないが、目を見張るほどに速いのは間違いない。広いランオフエリアがある常設サーキットと違い、市街地特設コースで行なうフォーミュラEは観客席とコースが近く、迫力は満点。腕自慢のドライバーたちが繰り広げる肉弾戦(文字どおり)を間近に望むことができる。EVは音が静かでツマラナイと決めつけている向きは、本当にそうかどうか、現地で確かめてみるといいだろう。きっと予想を裏切ってくれるはずだ。

ベルリンで行われた第7戦より

フォーミュラEを日本で開催しようとする動きは、シリーズが始まった当初からあった。15年8月には東京・六本木けやき坂通りでデモンストレーション走行が行われ、約5000人の観衆を集めた。16年11月にはイルミネーションが照らす東京・丸の内仲通りでデモンストレーション走行が行われた。

公道レースを実現するには法整備を含め、関係各所との連携が欠かせない。地道な運動が実り、ようやく実現の運びとなったのだろう。先導役に東京都が手を挙げたのが大きい。ゼロエミッション車の普及拡大を図る東京都にとって、その可能性を示すフォーミュラEは都民に向けたうってつけのPRツールだ。同時に、東京の魅力を世界に発信する絶好の機会でもある。

一方、フォーミュラEにとっても、東京は喉から手が出るほど欲しい開催地であり、シリーズ発足当初からラブコールを送り続けたと伝わる。シーズン10の開催地にはベルリン、ローマ、ロンドンといった世界に名だたる都市が含まれているが、フォーミュラEの存在価値を高めるためにも(広告主にアピールするためにも)、東京は極めて重要。シリーズのさらなる発展の起爆剤となる可能性を秘めている。その意味でも注目の一戦だ。

文=世良耕太

(ENGINE2023年9・10月号)

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