『ENGINE』9・10月号では「2023年、推しの1本はこれだ!」をテーマに時計を大特集(後篇)。編集部が信頼する時計ジャーナリストと目利きたちで結成したエンジン時計委員会のメンバーのみなさんに、時計好きとしての原点に立ち戻って、2023年のイチオシの時計について、その熱い想いを打ち明けてもらった。
今回はショパールから、1997年のオリジナルを進化させた「L.U.C 1860」を紹介する。
何から何までご本人
菅原茂(時計ジャーナリスト)ショパールのL.U.Cコレクションは、ムーブメントの開発初期から取材してきたので親近感がある。それは、現在の共同社長カール-フリードリッヒ・ショイフレさんそのものだ。ムーブメントの機能や性能、品質へのこだわりは、ご本人のクルマ好きに通じるし、少し地味だけど品の良さが際立つデザインは、彼が常に心がけるジェントルマンとしての服装や立ち居振る舞いを思わせるのだ。そして今度は、彼が積極的に推進する再生スティールを通して持続可能なラグジュアリーの最前線に立つ。「大切なのは情熱と実行力」、以前そんな話をしていたっけ。どこを切ってもショイフレさんの姿がある最新作の「L.U.C1860」も、そんな彼のエッセンスに他ならない。
長年探していた1本
松尾健太郎(「THE RAKE JAPAN」編集長)ついに出た! 「 L.U.C 1860」は、私が長年探していた1本である。1997年に初代が発表されたとき、実は都内のホテルでの披露会に出席していた。時計関係者はザワついていたが、当時は何がスゴイのか分からなかった。しかしその後、時計に詳しくなるに連れて、どうしてもこの時計が欲しくなってしまった。オリジナルの文字盤は銀・黒・青・ピンクの4種類がある。そして後者2本はとてもレアだ。海外通販サイトでも全然みつからない。2018年にはショパール×THE RAKE本国版がコラボして、復刻(限定10本)がリリースされたが、あっという間に売り切れてしまった。そこに今回のニュースである。やはり買うべきか? 誰か私に勇気とお金を下さい……。
環境への配慮が貴族的
本間恵子(ジュエリー&時計ジャーナリスト)ケースの素材「ルーセントスティールTM」は、リサイクルしたスティールを80%含有している。再精錬して不純物を除いているので、単に古い金属を溶かして使っているわけではない。しかもこの素材は従来品よりも硬度が高く、サージカル・ステンレス並みの抗アレルギー性を持ち、いいことずくめ。これを使うことで時計製造に伴う二酸化炭素排出量も抑えられるのだという。環境に配慮したエシカルなモノ作りは、世界的ビッグブランドのノーブレスオブリージュともいえるもの。本作の佇まいにもノーブルさがにじみ出てきているのはそのせいだ。こういう表にギラギラと現れてこない部分にデリケートな配慮を注いだ時計こそ、本当に知的で貴族的ではないか。
今年の一目ぼれウォッチ
篠田哲生(時計ジャーナリスト)今年のウォッチズ・アンド・ワンダーズ ジュネーブで発表されたときに、「おっ、これはいいぞ!」と、おもわず笑みがこぼれたモデルがこれ。そもそもショパールのL.U.Cムーブメントの仕上げやプロポーションが好みな上に、ケースも36.5mmと小ぶりにすることで、スモールセコンドの位置を慎重にデザインしているのも好感が持てる。エシカルな再生素材である「ルーセントスティールTM」を使用する方針も今風であり、サーモンカラーのダイアルも、華やかで特別感がある。ラグスポ人気に陰りはないが、その次はドレスウォッチへの回帰が進みそうな予感もある昨今、腕元で遊べるドレスウォッチとして、ちょうどいい選択肢になりそうだ。
ショパールL.U.C 1860
独自の再生素材ルーセントスティールTMを用いた直径36.5mmの小ぶりなケースとギヨシェ彫りを施したサーモンカラーのゴールド製ダイアルを組み合わせた最新作は、自社製L.U.Cムーブメントを搭載して1997年にデビューした初代モデルから想を得たもの。COSC認定クロノメーターおよびジュネーブ・シール認証取得の薄型自動巻きムーブメントのL.U.C 96.40-Lも初代L.U.C1.96からの進化版だ。パワーリザーブ65時間。30m防水。326万7000円。※ショパールブティック限定。
問い合わせ=ショパール ジャパン プレス Tel.03-5524-8922
(ENGINE2023年9・10月号)
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