2023.08.03

CARS

100周年のル・マンで58年ぶりの大勝利! マラネロからル・マンまで激走1200km、フェラーリの旅!!

100周年のル・マンに、50年ぶりの復帰で、58年ぶりの大勝利をおさめたフェラーリ。

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100周年を迎えたル・マンにフェラーリが戻ってきた。トップ・カテゴリーのハイパーカー・クラスに50年ぶりに参戦し、その初戦で、表彰台の中央に立つ大勝利を収めた。そんなフェラーリの勇姿を見るために、マラネロからル・マンまで旅をした。1日目はマラネロを出発して、西へ。ミラノ、トリノ付近を通過して、フランスとの国境を越え、クレルモン・フェランまで。2日目はミシュランを見学した後、一路ル・マンを目指した。乗り込んだのは296GTS。エンジン編集長のムラカミがリポートする。

ル・マンへの道

今回のル・マン24時間レース取材の旅はイタリアのマラネロから始まった。世界各国からジャーナリストたちがフェラーリ本社に集まり、そこからプロサングエ、296GTB&GTS、ローマなどの試乗車に分乗し、1200kmあまりの道を2日間かけて走ってル・マン入りする。100周年を迎えたル・マン24時間レースのトップ・カテゴリーに50年ぶりに復帰するに当たって、フェラーリは「ル・マンへの道」と題されたスペシャル・ツアーを企画したのだ。それに参加しないかという電話をもらった時、私はふたつ返事で、もちろん行きます、と答えていた。5連勝中のトヨタに加えて、フェラーリ、ポルシェ、キャデラック、プジョーもトップ・カテゴリーに参戦する今年のル・マンは間違いなく近年になく面白いレースになる。その現場を目の当たりにできるなんて、またとない幸運である。ましてや、フェラーリの最新モデルでロング・ドライブする機会も得られるのだから、こんなチャンスは滅多にない。

私の担当は296GTS。運転するのはこれが初めてだった。

とはいえ、その時、フェラーリがきっと勝つだろうと思っていたかというと、正直なところ、そう簡単にはいくまいと考えていた。私はこれまでに3度、ル・マン24時間レースを取材している。最初は2003年、ベントレーの応援に行き、みごとに73年ぶりの勝利を飾ったが、それは復帰から3年がかりで夢を叶えたものだった。2度目は2014年、16年ぶりにトップ・カテゴリーに復帰するポルシェの応援に行ったが、結果は惨敗。2台とも完走さえ叶わなかった。しかし、3度目に訪れた翌2015年には、ポルシェが17年ぶり17回目の勝利を飾っている。つまり、ル・マンでの勝利は、どんなトップ・メーカーでも何度も苦渋を嘗めて経験値を増やさないと叶わないのだ。それは20回目のル・マン挑戦で2018年、ついに勝利を勝ち取ったトヨタの例を持ち出すまでもなく、誰の目にも明らかなことだろう。

そのトヨタが今年のWEC(世界耐久選手権)でも、ル・マンの前の3つのレースで圧勝する安定感の高さを示していた。それを見ている限りでは、今年は圧倒的にトヨタに分があると言わざるを得なかったのだ。

マラネロのフェラーリ本社の駐車場に並ぶ試乗車たち。

ところが、レース直前になってFIA(国際自動車連盟)が異例の発表を行なった。ルールにはない性能調整(BoP=バランス・オブ・パフォーマンス)をするというのだ。その結果、トヨタが37kg、フェラーリが24kgの重量増を課された。他のチームはキャデラックが11kg増、ポルシェが3kg増、プジョー、グリッケンハウス、ヴァンウォールが重量増なし。これがレースに少なからぬ影響を及ぼしたことは間違いないが、ではどのチームにどれだけの有利不利が出たかは、レース前はもちろん、終わった今でも、本当のところはよくわかっていないのだ。

サウンドの魅力を体感

それはともかく、マラネロから1200kmのル・マンへの道のりは、本当に気持ちの良いグランド・ツーリングだった。私にあてがわれたのは296GTS。GTBには乗ったことがあるが、ルーフの開くGTSに乗るのはこれが初めてだった。そのおかげで、ル・マン・マシンの499Pとも共通するV6エンジンをミドシップに搭載するハイブリッド・カーである296の最大の魅力は、この新V6エンジンの吹け上がりに応じて様々に変化するサウンドにこそあるのだということを、強烈に体感することができた。高速道路を矢のように走る時にはクローズで、山道を気持ち良く飛ばす時にはオープンで、というように使い分けられるGTSは、このクルマの持つ素質を存分に味わい尽くすためには最高の選択だと思った。ダンパー設定をソフトにしておけば、乗り心地もこの種のスーパースポーツカーとしては驚くほどいいから、1日700kmのロング・ツーリングでもまるで苦にならなかったのである。



フランスとの国境近くのパルドネッキアという街でランチ。

途中、ミシュランの本社があるクレルモン・フェランに寄って1泊し、博物館と施設を見学してから、再び残り500kmのル・マンへの道をひた走り、たどり着いたのは、この地方にはところどころにあるという古いシャトーだった。そこでカクテルを楽しみながら、ハイパーポールをTV観戦。フェラーリ50号車が最初に出していたトップ・タイムを、長い赤旗中断の後の最後の1周でトヨタが破れなかった時には、大歓声がシャトーに響きわたった。

終点はル・マン近郊のシャトー。その威容に圧倒された。

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