2023.09.14

CARS

アルファ・ロメオの名車、4Cはどのようにして生まれたのか? 誕生前夜の4Cを解剖、解読する!【『エンジン』蔵出しシリーズ アルファ・ロメオ篇#1】

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「これなら、本当にありうるな」と思った。なんの前触れもなくジュネーヴ・ショウに現れ、アルフィスティを熱狂させるにとどまらず、広くクルマ好きの心をわしづかみにしたアルファ4Cコンセプト。その市販型のシャシー開発をダラーラ社が請け負うというのは、理に適っている。

アルファ・ロメオは誰が製造することになるかについて堅く口を閉ざしているが、昨年6月にアバルトの関係者がアバルト・オリジナルの2座本格スポーツカーを作る計画を漏らしたさいに、KTM社(オーストリアの2輪メーカー)のX‐Bowとの関連を仄めかしていた。その話とうまく繋がるのである。

X‐Bowは2007年に市販が開始された、全長3.74mのオープン2座スポーツカーである。そして、そのX‐Bowの開発を請け負ったのがダラーラなのだ。アルファ4Cの全長は4mである。4Cのホイールベースは2.4m未満と発表されているが、X‐Bowの軸距は2.43mとそれにごく近い。

それになにより、4CにCFRP(炭素繊維強化樹脂)製バスタブ型センター・モノコックを使うと、アルファ・ロメオは公言している。それによって市販型4Cの車両重量を、なんと850kg以下に収めるという。X‐Bowこそはまさにその手法によって、790kgという超軽量を実現していたのである。ジュネーヴに出展されたコンセプト・カーはボディ外皮もフルカーボンだったけれど、量産市販型では射出成型によるGFRP(ガラス繊維強化樹脂)が使われる可能性があることを、英国のスポーツカー専門誌evoが訊き出している。それでも重量はほぼ変わらず、目標値内に収まるらしい。アルファ・ロメオは市販型4Cの車両価格を約4万5000ユーロと口にしている。CFRPタブを使うクルマとしてはすぐには信じがたい安さだ。だが、思い出す必要がある。当初、年500台の予定で生産が立ち上がったX‐Bowの車両価格は約4万ユーロ。後に追加された公道も走れる“ストリート”バージョンでも5万ユーロだった。アルファ・ロメオは4Cを年間1500台規模で生産すると言っている。バスタブ剥き出しのX‐Bowにはなかった外皮の製造コストを、GFRP化によって低く抑えることができるならば、十分に可能な価格だろう。

リア・フェンダーの肩が力強い。大型コンビ・ランプが8Cを想起させる。中身は既に市販型に近い由。タイヤは前18/後19in。

X‐Bowの見込みをはるかに超える需要に対応するためにKTM社はグラーツの工場を年産1000台規模に拡張したが、リーマン・ショック後の世界同時不況で売れ行きは急降下。グラーツ工場はアイドリング状況に陥っている。空いている。

ダラーラにはCFRPタブの設計開発ノウハウが豊富にある。そして、KTMの余剰生産設備がある。

ダラーラにはサスペンション開発技術もある。世界最速の市販ロードカー、ヴェイロン16.4のシャシーやサスペンションにも、ダラーラは協力していたぐらいだ。4Cはフロントにアッパーアーム・ハイマウント式のダブルウィッシュボーン、リアにマクファーソン・ストラットを使うらしいが、ダラーラならその開発を易々とやってのけるだろう。

4Cプロジェクトは昨年末に実車開発へのゴー・サインが下っている。偶然にもその頃、ダラーラ社は1000万ユーロもするラップ・タイム・シミュレイターを導入している。F1のトップ・チームぐらいしか持っていない超ハイテク装置だ。CAD支援開発技術の進化によってわずか9カ月ほどにまで短縮されている新車開発期間を、さらに短縮することを可能にする新兵器である。

アルファ4Cの欧州での発売予定は2012年夏。信じて待つべし。

文=齋藤浩之

(ENGINE2011年6月号)
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