2023.12.31

CARS

1万まで刻まれたイエロウのレヴ・カウンターは、イタリアン・センス満開! 458イタリアは、どんなフェラーリだったのか? 【『エンジン』蔵出しシリーズ/フェラーリ篇】

絶好の中古車ガイド! 「エンジン蔵出しシリーズ」、フェラーリ458イタリア

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六本木から首都高へ

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六本木通りに出るために最初のT字路を右折しようとして、ステアリング・コラムのターン・シグナル・レバーを探した左手は空振りした。昨年末にマラネロで乗ったときのことを思い出した。458イタリアのイノヴェーションのひとつは、ターン・シグナルを含む使用頻度の高い操作類がすべて、ステアリング・ホイール上に配置されていることだった、と。だから、430より大きくなった操作しやすいシフト・パドル以外に、コラムに付属するレバー類はなにもない。方向指示灯のスイッチは、F40同様、センター・パッドの両サイドのスポーク上にある。

この458には、カリフォルニアで初採用された2ペダル7段マニュアルの「F1デュアル・クラッチ・トランスミッション」(DCT)だけが載る。このDCTはあきらかに、カリフォルニアのそれと制御が違う。変速中、エンジン・トルクの駆動輪への伝達が途切れることがない。カリフォルニアのDCTの変速はすばらしくスムーズだったという記憶があるが、458のシフトはそのレベルをこえている。独立して制御される奇数ギアと偶数ギア用の2本の入力シャフトが、2つのクラッチの締結/開放の動作が重なる時間をゼロにしている。変速時間がゼロなのだ。

魅力的であるだけでなく機能的な運転席まわり。ステアリング・パッド右サイドの走行モード切り替えツマミであるマネッティーノで選べるモードは(1)低グリップ(2)スポーツ(3)レース(4)CT(トラクション・コントロール)オフ(5)CST(トラクション&スタビリティ・コントロール)オフの5つ。F430にあったICEモードがなくなり、CTオフが加わった。


オート・シフト・モードで街路を行くと、40km/hでもう4速に入っている。50km/hでは6速、60km/hで7速トップだ。変速したことは耳で知る。トルクが切れないからショックがまったくない。狐につままれたみたいだった。

リッター127psというロード・カーとしてはあり得ない高比出力を発揮するこの自然吸気の4.5リッター、570ps/9000rpmのV8は、540Nm(55・1kgm)/6000rpmの最大トルクの80%を、すでに3250rpmで得るというフレキシビリティを備えるから、高いギアに低い回転という状況でも、いや、いつでも十分以上の力がある。それに、少しでも右足を沈めれば、瞬時に太いトルク・バンドのど真ん中を使えるギアにまで、シフト・ダウンしている。ロード・カーにこれに比肩できるシフトを持つクルマは1台もない。隔絶した高みにある驚異のギアボックスだ。

首都高から東名へ

テスト・カーは、モデナ県のリージョナル・カラーであるイエロウにペイントされていた。黄色はまた、フェラーリのコーポレート・カラーでもある。室内はブラック。フェラーリの古典的な色合わせだ。

量感たっぷりのポルトゥロナ・フラウ製のレザーを張った贅沢なシートだけでなく、ダッシュボードやステアリング・ホイールのエッジにも、黄色の飾りスティッチが配される。そして、10000(!)まで刻まれ9000(!)からレッド・ゾーン(ちなみに、9000rpmの回転限界は、ロード・カーとして世界最高である、とフェラーリは主張する)に飛び込む大きなレヴ・カウンターの盤面がまた、イエロウだ。イタリアン・センスが満開している。

この趣味を派手の一語で片づける御仁もいるかもしれないが、それはちがう。エレガントというべきだ。エレガントとは、巧みにデザインされた魅力的スタイルを指すのだから、派手とか地味とかの問題ではない。



この室内はたんに美的センスに優れているだけではない。機能的にも優秀な設計がなされている。ドライバーがコントロールするすべてのスイッチ類がステアリング・スポークおよびその直近にわかりやすく集約されていることのほかに、ドライバーとパセンジャー専用に2つずつ、最適の角度で空調アウトレットがセットされている。エア・ヴォリウムもたっぷりで、外の熱暑が完璧に遮断される。そして、当然、非常に低く座るのだが、スカットルも低く、斜め後方を除く視界は非常に良好で、見切りもいい。不必要に幅が広い感じがしないから運転者に余裕が出る。

フェラーリの常として乗り心地はしなやかだ。458には新世代の磁性流体ダンパーが組み込まれ、反応速度が599の倍近くになったとされており、じっさい、そのすこぶる滑らかな乗り心地は、スポーツカー界に敵なしのレベルに達している。首都高3号線のワイドな目地段差なぞ、タンタンと聞こえてくる音によってしか察知できない。

左サイドのステアリング・スポーク上の、ダンパーの絵文字入りスイッチを押すと、右側スポーク上の「マネッティーノ」なる走行モード選択ツマミのポジションにかかわらず、足のストロークがより深くなって、路面を問わない快適至極の乗り心地がもたらされる。それやこれやで、「高性能スポーツとしては」という留保なしに、クルマとしてのデキがすばらしいのだった。



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