2023.10.30

CARS

国沢光宏の体験談! こんな傷の支払いが45万円以上!? ビッグモーターの不正で分かった自動車保険の黒の領域

写真:つのだよしお/アフロ

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取引きのあった損保ジャパンの社長辞任にまで発展したビッグモーターの不正請求事件。この問題の根底にあったのは、白と黒の基準を曖昧にしてきた自動車保険業界の在り方にあった……。

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灰色の領域が広い理由

現実社会は基本的に「白」と「黒」で明確に分けられない。例えばスピード違反を考えて頂きたい。60km/h制限の場所を61km/hで走ったら、原理主義からすると「黒」になります。けれど現実社会だとそこは「灰色」とされる。61km/hで走っていても見逃される。速度の場合、70km/hくらいまでなら灰色。そこから徐々に黒という“解釈”が出てくると思う。ちなみに灰色の領域は広いほど成熟された居心地の良い社会とされている。そして灰色の領域を決める基準といえば、マナーやルール、慣例、慣行などです。

自動車保険の業界、灰色のゾーンがとても広い。なぜか? 被害者と加害者の関係に於ける対応だからだ。考えて頂きたい。大切な新車のバンパーを傷付けられたとしよう。自分で修理するならコストパフォーマンスを重視するため、上手な業者を探しバンパー表皮の再塗装をすると思う。まぁ3万円くらいの出費です。けれど追突されたら最低でもバンパー交換くらいしてもらいたくなる─そんな人間の機微を保険会社は汲み、本来なら塗装で済むケースでもバンパー交換に応じる。白に近い灰色ですね。

修理期間中、代車を用意する。本来なら同等クラスの車両だ。けれど「自分の大切な新車を傷物にされた」という被害者の気持ちを慰謝するには、上の車格の代車を「用意出来るクルマがこれしかないので」という理由を付けて出すのは、やはり灰色である。どこの保険会社でも、修理工場でも、被害者でも灰色を上手に使い事故の処理をしてきた。そして灰色の領域は、関係者の良識によって運用されている。いわゆる「性善説」というヤツで、黒の領域に入ったら「保険金詐欺になる」という暗黙の了解です。



保険料は安くできる?

今回、ビッグモーターは黒の領域に入ってきた。速度違反なら50km/hオーバーといったイメージ。

損保会社が事故の被害者をビッグモーターに紹介する。入庫した車両に対し過剰修理や過剰請求を行う。追突事故で、本来ならバンパー交換で済むケースも、バンパーを外しフレーム修正機に掛けている写真を添付すれば、それだけで修理代金は大幅に水増し可能なのだった。擦れば消えるようなキズも、デコレーションした写真撮って板金修理に仕立てる等々。その気になれば修理金額の上乗せなど簡単にできてしまう。

代車だって黒の領域に入るケースは多い。ビッグモーターにはナンバー付きの在庫車がいくらでもある。代車として使い、レンタカーと同じくらい高い金額で請求すれば大儲け。3日間で済む修理で4週間掛け、ずっと代車を出していれば、それだけで60万円近い請求が出来る。こういった請求、ビッグモーターだけに限らないかもしれない。今年実際にあった私の例だけれど、家人が風にあおられ隣のクルマのドアを傷付けてしまった。ドアパンチですね、名刺を置いておくと連絡があって修理に。

相手の車両は2009年まで売られていたメルセデスC200。私の保険会社から「修理が終了し支払います」と連絡あり、明細を見たら修理代18万7000円+代車料26万4000円の合計45万1000円だった。どう考えたっておかしいけれど、コチラは加害者だし保険会社が「払います」と言うので、値切る必要無し。ビッグモーターじゃないです(笑)。

こんなケース、多いと思う。金融庁がしっかり管理して「限りなく黒に近い灰色」を是正出来たら、保険料はググッと安くなると思う。

文=国沢光宏

(ENGINE2023年11月号)

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