2023.11.18

CARS

EVがまだ"買い"ではない理由とは? アウディQ4eトロンにモータージャーナリストの石井昌道が試乗! 【ドイツ御三家の最新BEV3台を乗り比べる その3】

アウディQ4 eトロン

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大半のクルマ好きから、あまりいいイメージを持たれていないEV。次々に新型車が登場し、続々と日本に上陸しているが、これらのEVは本当のところ面白いクルマになっているのか? 走って楽しいクルマなのか? 自動車造りの長い歴史を持つドイツ御三家、メルセデス・ベンツ、BMW、そしてアウディがいま、どうやってBEVを造っていこうとしているのか。果たして、クルマ好きにとってEVは敵なのか? それともクルマ好きの琴線に触れるところもあるのか? 国内外のBEVを片っ端からテストしているジャーナリスト、石井昌道が、ドイツ・プレミアム御三家の最新EVに乗って確かめることにした。1台目のi7、2台目のメルセデス・ベンツのEQEに続いて今回は、アウディQ4eトロンを取り上げる。◆1台目のBMW i7から読む場合はこちら!

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グループの中だからこそ

アウディは最初のEV、e-トロンの発売が19年と、それほど早い時期ではなかったが、100%EV化を目指す宣言は早かった。VWグループの1ブランドであり決断しやすいという面もあるだろう。さらにVWと共有のMEB、ポルシェと共有のJ1という2つのEV専用プラットフォームに、エンジン車と共有のMLBがあり、間もなくPPE(ポルシェと共同開発のEV専用プラットフォーム)がデビュー。現時点でEVに4つもプラットフォームを使えるのはグループメリットであり、100%EV化への道筋も立てやすい。今回の試乗車はQ4スポーツバックe-トロンでプラットフォームはMEB。VWのID4とハードウエアの多くを共有し、i7やEQEほど高級ではなく、プレミアムブランドとしてはエントリーモデルだ。



単体で乗る限りは十分に静かで、一度これに慣れてしまうとエンジン車に戻れなくなってしまいそうなほどだが、i7やEQEと比べてしまうとロードノイズはやや大きめ。路面が綺麗ならば静かでまったく気にならないが、ザラザラとした路面ではゴーッというノイズが聞こえてくる。絶対的な音量は大したことはないが、変化量が大きいので耳につきやすい。改めてEVのノイズ対策は難しいと知ったが、A3とA8を乗り比べれば高級車的な性能で差があるのと同じで、Q4スポーツバックe-トロンが悪いわけではない。同等クラスのEVと比べれば平均的だ。

では、EVになってもアウディらしさがあるかといえば、濃厚とまでは言えない。ボディ剛性の高さや引き締まったサスペンションによって、高速域でも高い安定感があるのはアウディらしいとも言えるのだがID4でも大差はない。Q4スポーツバックe-トロンのほうが、乗り心地を含めた動的質感がわずかに高いといったぐらいだ。現在のラインナップはRRのみでモーターのパワー&トルクも控えめ。MEBのなかでもベーシックに近いモデルであり、もう少しパワフルでクワトロになれば、雨の高速道路などでも我が物顔で突っ走っていける豪快なアウディらしさが出せるだろう。MEBはVWでは販売台数が多いことや半導体不足問題などで、豊富なグレード展開をしていくに至っていないのだ。その変わりに車両価格はプレミアムブランドのEVとして手頃なのは魅力。ボディサイズのわりに室内空間が広く、後席などはQ7並というのはEV専用プラットフォームならではのメリットを感じる部分だ。



アウディの名誉のために付け加えておくとe-トロンGTなどはアウディらしさが濃厚だ。同じJ1プラットフォームを使うポルシェ・タイカンと同じく、加速やハンドリングは凄まじいポテンシャルを誇るが、パフォーマンスの高さを誇示するだけではなく、上品さや安心感、快適性をも持ち合わせている。シャシーにロングドライブでも疲れが少ない特性があり、エンジンのような音・振動がシャットアウトされているのでなおさら疲れない。背が低いゆえに高速域での電費は望外に良く、グランドツアラーとして優れている。スポーティさとプレミアム感が高度にバランスしていて、クルマでの移動を速く楽しくこなせるのがアウディらしいところだ。

違いは明確にある、が……

現時点のドイツ・プレミアム御三家のEVに乗ってみて、100年に一度の大改革で変わらないものは明確に見えた。ブランドのアイデンティティを大切にするということだ。BMWは駆けぬける歓び、メルセデス・ベンツは快適かつ安心感の高さ、アウディはスポーティさと高品質感の両立といったところなのだが、シャシーに限ってはそれがEVでも十二分に表現されている。エンジン車よりもシャシー性能のポテンシャルが高いので、相反する性能との両立もやりやすいぐらいだ。



エンジンに比べると電気モーターは個性を出しづらいと言われるが、一概にそうとは言い切れず、EVを乗り比べていくと違いは明確にある。今回の3台はプレミアムブランドだけあって、トルクの出し方が上品で質感の高い走りを披露していた。

ただそれでもやはり、走らせているときのワクワク感は、良くできたエンジン車にはまだかなわないというのも正直なところだ。情緒的な魅力を加える方法はないものだろうか?

サウンドを作り出すのは一つの手ではあるが、本質ではないだろう。画期的なアイデアでエンジン車と同等以上の楽しさを得ることができるときがくるかも知れないが、いまのところ見えない。100年に一度の大変革で変わるものは、クルマの楽しさの質なのかもしれない。

とはいえ、究極の快適性を求める高級車ならEVは大いに向いていてエンジン車はもはや敵わないはずだ。メルセデス・ベンツなどはもっともEVとのマッチングが高いブランドと言えるので、現時点でも“買い”である。シャシー性能のポテンシャルにしても圧倒的に高いので、BMWやアウディにスポーティさを求める向きにもオススメはできる。ただし、シャシー性能は“買い”、加速性能も“買い”だが、パワートレインの情緒的な魅力だけはまだ“買い”ではない。全面的に“買い”になるのがいつなのかはわからないが、ユーザーに選択する権利だけは残しておいて欲しいものだ。

文=石井昌道 写真=郡大二郎


■アウディQ4スポーツバック40e-トロンSライン
駆動方式 後1モーター後輪駆動
全長×全幅×全高 4590×1865×1630mm
ホイールベース 2765mm
トレッド(前/後) 1590/1575mm
車両重量(前軸重量:後軸重量) 2100kg(1010kg:1090kg)
最高出力 150kW
最大トルク 310Nm
バッテリー容量 82kWh
一充電航続可能距離(WLTC) 594km
サスペンション(前) マクファーソン・ストラット+コイル
サスペンション(後) マルチリンク+コイル
ブレーキ(前/後) ディスク/ドラム
タイヤ(前) 235/50R20
タイヤ(後) 255/45R20
車両本体価格(税込) 758万円


(ENGINE2023年12月号)

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