2023.12.14

CARS

幅広大径のランフラット・タイヤを見事に履きこなす! ランフラット歴20年余のBMWの独壇場 自動車ライターの渡辺敏史がX5に試乗【3シリーズ、8シリーズ、Z4、X5にイッキ乗り/その4】

3シリーズ・セダンに、8シリーズ・クーペ、ロードスターのZ4に、SUVのX5。これまで長らく歴史を刻んできたBMWを象徴する4台のモデルに自動車ライターの渡辺敏史があらためて試乗して感じたこととは何か。今回は、最後の4台目、X5をリポートする。

強靱な意向がみてとれる

1999年、BMWの新たな軸としてSAVというコンセプトがX5によって提示された。SUVのUがユーティリティならSAVのAはアクティビティ、すなわち活動的なレジャーのみならず、ドライビングにまつわる歓びも担保するという二重の意が込められている。そのコンセプトに相応しいオンロードでのパフォーマンスは当時の同カテゴリーのモデルとは完全に一線を画すもので、ポルシェ・カイエン以降、相次いで登場することになるスポーツ系SUVの先駆けになったともいえる。



数えて4代目となるX5の取材車は50e。直6のB58型に197psを発するモーターを組み合わせ、25.7kWhのバッテリーを用いてWLTPモードで110kmのBEV航続距離を実現する。一方でシステム総合出力は490ps、0-100km/h加速は4.8秒と、SUVらしからぬ速さも両立したものだ。

BMWはiシリーズの誕生以来、並行してPHEVも手掛け続けている。10年以上に及ぶそのキャリアの中で、完成度を着々と高めてきた。余談ながら直近までの日本での5シリーズの販売は、ディーゼルの523dとガソリンPHEVの530eがほぼ同じだったという。気づけばBMWの電動化戦略は、我々のカー・ライフの中にしっかり浸透していたというわけだ。





50eの洗練度はBEVとしてはもとより、HEVとしてみても相当なレベルにある。クラッチ制御で動力源を差配する仕組みはどうしてもその連携に違和感が現れがちだが、50eのそれはギア段の選択も含めて、可能な限りそのアラをなまそうとしているエンジニアの努力が伝わってくる。加えてモーターとの連携という点でいえば、用いるエンジンが応答の滑らかな直6という点での利は大きい。ちなみにBMWは電費的効率においても注目すべきところがあって、50eも後日、電気モノの苦手な高速道路を走ってみると、前面投影面積の大きさにもかかわらず70km程度をバッテリーのみで走り切った。

同時に注目したいのが、X5のクルマとしての仕上がりの良さだ。幅広大径のランフラット・タイヤを走りのみならず快適性の面でも見事に履きこなす、この辺りはランフラット歴20年余のBMWの独壇場といえるところだろう。

X5の50eからは、パワートレインがどうなれど、BMWならではの動的な魅力は必ず担保するという強靭な意向がみてとれる。今回の4モデルはいずれもBMWのど真ん中を支えるものだが、とりわけ彼らの今を最も端的に映しているのは、意外やこれかもしれないと思った。

文=渡辺敏史 写真=神村聖


■X5xドライブ50eMスポーツ
駆動方式 フロント縦置きエンジン+モーター4輪駆動
全長×全幅×全高 4935×2005×1770mm
ホイールベース 2975mm
トレッド(前/後) 1685/1695mm
車両重量 2540kg
エンジン形式 水冷直列6気筒DOHCターボ+モーター
排気量 2997cc
最高出力 313ps/5500rpm+197ps/7000rpm
最大トルク 450Nm/1750-4700rpm+280Nm/100-5500rpm
トランスミッション 8段AT
サスペンション(前) ダブルウィッシュボーン+エア
       (後) マルチリンク+エア
ブレーキ(前後) 通気冷却式ディスク
タイヤ(前/後) 275/45R20/305/40R20
車両本体価格 1260万円


(ENGINE2024年1月号)

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