2024.01.07

CARS

見事復活を遂げたロータリー! だが昔のローターにあらず?! MX-30ロータリーEVは、マツダが問うユニークな問題作だ!

マツダMX-30ロータリーEV

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マツダRX-8の生産終了から11年、マツダのアイデンティティというか、魂そのものと言っても過言ではない、ロータリー・エンジンが再び姿を現した。発電用という黒子に徹する新ユニットは、マニアを唸らす出来を有していたか? モータージャーナリストの高平高輝がリポートする。

これが今の現実

「ロータリー復活!」と興奮している方にはお気の毒だが、ここは明確にしておいたほうがいいだろう。マツダMX-30ロータリーEVに搭載された新開発の8C型ロータリー・エンジンはあくまで発電専用であり、いわばまったくの黒子。かつてのように、どこまでも天井知らずに鋭く吹け上がる、血沸き肉躍るスポーツ・ユニットではないどころか、正直その存在すら感じることが難しい。残念ながら、これが今の現実である。



観音開き式4ドア(マツダが言うところのフリースタイル・ドア)を特徴とするクロスオーバーSUVのMX-30には既にマイルド・ハイブリッドと電気自動車(BEV)が存在するが、新たに追加された「ロータリーEV」は、その名の通りロータリーを発電用として使うプラグイン・ハイブリッド(PHEV)であり、「EVの可能性を広げる新たな選択肢」と位置付けられている。

したがって、エンジンが掛かっても、お祭りの屋台の裏側で唸りを上げる発電機のような(まさにその通りなのだが)ブーンという音が遠くから聞こえてくるのみ。ただし市街地走行程度では、EVモードはもちろん、ノーマル・モードでも滅多にエンジンは掛からない(ほかにチャージ・モードが備わる)。

観音開きの4ドア・ボディなどパッケージングは変わらず、リサイクル材を上手に用いたシンプルで上質なインテリアも従来通り。

電池の残量が少なくなったり、急加速が必要な場合はキックダウン・スイッチのようなストッパーを越えてフルにペダルを踏み込むとメーターパネルに小さなロータリー・マークが表示されるとともにエンジンが始動するが、音量そのものは小さく、ある程度以上のスピードなら走行音に紛れてしまうぐらいのものだ。メカニズムに詳しくない人にはエンジン音と認識してもらえないかもしれない、発電という役目に徹した音色と音量である。


上手にまとめ上げた

繰り返すが72ps/4500rpmと112Nm/4500rpmを発生するロータリー・エンジンは発電用で、実際の駆動は170psと260Nmを生み出すモーターが担っている。パワフルとまでは言えないが、この種のクルマとしては十分だろう。

最高速は140km/hという。発電用ユニットとしてロータリーを選んだのはコンパクトさが理由と説明されるが、実は車重は2倍の容量のバッテリーを積むBEV仕様よりも130kg増えた1780kgもある。ロータリーを発電機として使用、モーターで駆動するPHEVという複雑なシステムを搭載するためのジレンマである。

価格は423.5万円~。

しかも増加分はほぼフロント部に集中しているから、そのせいか当たりは洗練されているものの、路面によってはピッチングがやや気になる場面もあった。


ちなみに、シリーズ・ハイブリッドとしての燃費は15.4km/リッターと発表されており、今時特筆すべき数値ではないが、燃料タンク(レギュラー)は50リッター入りとマイルド・ハイブリッドとほとんど変わらないので、EV走行距離の107kmと合わせると、およそ800kmの長い脚を持つことになる。

普段は充電電力(DC/AC両方の充電ポートあり)で走り、遠出をする際にはハイブリッドとして電池の心配をせずに使う、という用途にはうってつけだとは思うが、そこに「ロータリー」 という記号が加わるせいでかえって論議を呼ぶかもしれない。よくぞここまでまとめ上げた、と個人的には思うものの、マツダらしいユニークな「問題作」である。


文=高平高輝 写真=宮門秀行

(ENGIINE2024年2・3月号)

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