2024.02.01

CARS

1シリーズのボディに3リッター直6ターボを押し込んだ135iクーペは、どんなBMWだったのか?「こんな中古車が欲しい!」【『エンジン』蔵出しシリーズ/BMW篇】

BMW 135iクーペ(2008年)

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中古車バイヤーズガイドとしても役立つ雑誌『エンジン』の貴重なアーカイブ記事を厳選してお送りしている「蔵出しシリーズ」。今回は、 コンパクトBMWの135iクーペを取り上げる。程度のいい中古車があったら即買いの魅力あり!


「マルニ・ターボの再来か? BMW135iクーペ、日本上陸!」ENGINE 2008年5月号

忘れもしない昨年7月、「アウディvsBMW」の特集の取材でミュンヘンを訪ねた際、新型M3とともに、まだ試乗はできないけれど見るだけなら、という条件で、BMW本社が用意してくれたのが、フォト・デビューを済ませたばかりの135iクーペだった。その時は撮影のためにほんの短い距離を動かしただけだったけれど、それでも“駆け抜ける歓び”をギュッと凝縮したような独特のフィールが伝わってきて、「これは箱根を走らせたら、きっと楽しいゾ」と興奮を覚えた。

長いノーズに収まるのは、335iから移植された3リッター直6直噴パラレル・ツイン・ターボ・ユニットで、最高出力=306ps/5800rpm、最大トルク=40.8kgm/1300-5000rpmを発生。全長×全幅×全高=4370×1750×1410mm。ホイールベース=2660mm。トランスミッション=6段MT。車重=1530kg。車両本体価格=538万円。(6段AT仕様は549万円でデリバリー開始は5月頃)。


正直に言って、本来の“駆け抜ける歓び”の代表選手であるモダン・テイストの新型M3よりも、時計の針を70年代あたりまで巻き戻したような、ちょっとクラシックなスタイルを持った135iクーペの方が、私にはずっと魅力的に見えたのである。

「マルニの再来」とBMWが謳っている通り、ショート・オーバーハングにロング・ノーズ、そして後方に寄せられた小さなキャビンを持ったサイド・ビュウは、古典的なFRの典型的なプロポーションを再現し、コンパクトさと速さを見る者にアピールしている。

実際、1シリーズをクーペ化したボディに、M3を除くノーマル3シリーズのトップ・モデル、335iの3リッター直6直噴パラレル・ツイン・ターボ・ユニットを搭載しているのだから、速くないわけがない。メーカー公表値では、0-100km/h加速=5.3秒。335iは5.6秒だから、100kg軽いことの恩恵は大きい。先代M3(E46型)の5.2 秒にも肉薄する速さだ。

インテリアは基本的に5ドアの1シリーズと共通。


シートはMスポーツ仕様の電動レザーで、座り心地、ホールド感ともに秀逸。

しかし、速さもさることながら、軽くコンパクトなボディがもたらす最大の恩恵であるハンドリングの良さをこそじっくりと味わってみたい。そんな期待に胸ふくらませながら、試乗できる日を待っていたのだ。

日常使いにも困らない

試乗会の拠点となった大磯プリンス・ホテルで再会した135iクーペは、やはり魅力的に映った。低めのシートに腰を落ち着かせ、スタート・ボタンを押してエンジンに火を入れた途端、唸るような排気音とともに正確にビートを刻む微かな振動が手のひらに伝わり、あの痺れるような興奮がいっぺんに甦ってきた。

西湘バイパスを箱根へ向かう。5ドアの1シリーズ同様、足腰は驚くほどしっかりしていて、重厚かつ骨太な乗り味が印象的だ。ボディの剛性感は5ドアを上回っており、どんな入力にもミシリとさえいわないくらい強固なものの中にいる感覚がある。サスペンションはかなり固められていて、西湘バイパスの悪名高い目地段差を超えると、ビシッと激しい突き上げを食らうが、鍛えられた足腰はそれを正面から受け止め、一発で振動を収めてしまうから、不快どころか、むしろ清々しい気分になる程だ。スポーティな4座クーペとして実用面でみても、日常使いに困ることはなかろう。

リアで特徴的なのは、LEDをL字型に配したテール・ランプとブラック・クローム仕上げのツイン・テール・パイプ。トランク・リッドには小さなスポイラーがつく。


箱根の峠道に入ると、いよいよ本領を発揮し始めた。コーナーへの進入でステアリングを切り込んでいくと、面白いようにノーズがスッと内に入っていく。試乗車にはオプションのアクティブ・ステアリングが装備されていたから、そのシャープさはなおさらだ。そこから、アクセレレーターをジワッと踏み込みながらステアリングを戻していくのだが、驚いたことに、135iには電子制御による自動姿勢安定装置、DSCが装備されているにも拘わらず、それをオンにしていても、リア・タイヤがわずかにホイール・スピンしながら横滑りしていくのを、大目に見てやるとでも言わんばかりに許容して、ブレーキやトルク制御など余計な介入をしてこないのだった。だから積極的に踏み込んで、タイヤを目一杯使って走ることができる。これは楽しい。むろん度が過ぎるとランプが点滅して制御が入って来たから、そういう味付けにしてあるのだろう。BMWのハンドリングに対する自信の現れ、か。

この骨太な、軽快感は独特だ。ある意味、新型M3やGT-Rとは対極の、プリミティブな走りの快楽の世界。トゥ・マッチでないところも、実に清々しい。

文=村上 政(ENGINE編集部) 写真=望月浩彦

(ENGINE2008年5月号)

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