2024.02.21

CARS

ついに300馬力超え! ボクスターSの限定モデル、RS60スパイダーとは、どんなポルシェだったのか?【『エンジン』蔵出しシリーズ/ポルシェ篇】

ポルシェ・ボクスターSの限定モデル、RS60スパイダー

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中古車バイヤーズガイドとしても役立つ雑誌『エンジン』の貴重なアーカイブ記事を厳選してお送りしている「蔵出しシリーズ」。今回は、2008年8月号に掲載されたポルシェ・ボクスターSの限定モデル、RS60スパイダーの記事を取り上げる。1960年代にモータースポーツで活躍した「タイプ718 RSスパイダー」。その名を受け継いだ、ボクスターSの限定スペシャル・モデルは、どんなポルシェだったのか?


911のパフォーマンスを超えてはならない?

今回の限定モデル「RS60スパイダー」の最大の注目点は、ボクスター・シリーズ初のオーバー300馬力という点にあると、私は思っている。これまでのボクスターSの最高出力は295馬力。かつて996型911は、現在のボクスターSと同じ3.4リッターのフラット6から300馬力の最高出力を得ていたのに、なぜボクスターSは同じ排気量でありながら、しかも技術的に進んだバルブ・リフト機構まで備えながら、300馬力の大台に届かないままでいるのか、ずっと疑問だった。

インテリアでの最大の特徴は、ボディ同色に塗られたメーターまわり。フードが廃され、大型の3連メーターが眼前に並ぶデザインは60年代のレーシング・カーを彷彿させる。シフト・ノブも専用デザイン。


その背景には、弟分のボクスターが兄貴の911のパフォーマンスを超えてはならないという、ポルシェ暗黙の掟があるのではないか、と半ば冗談、半ば本気で疑っていたのだ。そこに昨年末、この限定モデルがボローニャ・モーターショウという目立たぬ舞台でデビューした。そのスペックにさらっと書かれた「303ps」の文字を見た時から、「これはボクスター好きにとって大事件だ!」という興奮とともに、近く911にもなにか動きがある、と直感したのだった。

予想どおり911はこの6月、09年モデルからエンジンを直噴化して大幅なパワー・アップを図ることを発表した。今後、ポルシェのフラット6は順次直噴化されていくはずで、そうなれば当然、ボクスター系の300馬力超えは必至だ。今回の限定モデルは、その前触れとも言えそうだ。ポルシェはモデル末期に、次世代のパフォーマンスを暗示するような限定版をよく出している。996型911のHPEしかり、986型ボクスターの550スパイダー・エディションしかり。

グローブ・ボックス上にはシリアル・ナンバー・プレートがあしらわれており、今回の試乗車には「0014/1960」と刻印されていた。



パワーよりサウンドが強烈

さて、それはともかく、ようやく日本上陸を果たしたその限定モデルに、いち早く乗る機会を得たことは誠に幸運だった。一番の興味はむろん、オーバー300馬力がどんなふうにボクスターの世界を一変させるかだったが、実際に乗ってみたら、ほとんど何も変わらなかった。もともとSのエンジンだから、パワーがあるのは当然で、+8psなど、体感的には言われなければわからないほどの違いに過ぎなかったのだ。

だが、それとは別に驚かされたのは、サウンド・チューニングの方だった。この限定モデルには、排気系の改良が施されるとともに、スポーツ・エグゾースト・シテスムが装備されており、それをオンにすると、周囲の人が振り向くような強烈なサウンドを響かせるのだった。とはいえ、あくまで音質はノーマルと同じで、それが大きくなるだけ。イタリアン・スポーツのような演出の入った妖艶な音がするわけじゃない。そこがポルシェらしくて、なんだかとても嬉しかった。

文=村上政(ENGINE編集部) 写真=小林俊樹

外観上の特徴は、スポーツ・デザイン・パッケージのフロント・スポイラーとブラック塗装のフロント・ガラス・フレーム。リア・コンビネーション・ランプは、ノーマルのホワイトからレッドへと換装される。動力性能では、改良されたエグゾースト・システムとデュアル・テール・パイプにより、最高出力が303psまで高められている。


(ENGINE2008年8月号)

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