2024.02.05

CARS

TTシリーズ初のSモデル、TTSはどんなアウディだったのか? アルミ・ボディでゴルフGTIよりも軽く、しかもフルタイム4駆!【『エンジン』蔵出しシリーズ/アウディ篇】

コンパクト4WDスポーツ、アウディTTS

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中古車バイヤーズガイドとしても役立つ雑誌『エンジン』の貴重なアーカイブ記事を厳選してお送りしている「蔵出しシリーズ」。今回は、アウディ篇として昨年生産終了がアナウンスされたアウディTTを取り上げる。2008年、売れ行き好調のアウディのラインナップに追加されたTTの2つのモデル、新たな旗艦となったTTSと2.0TFSIのクワトロ・バーション。中古車ならGRヤリスより手軽にコンパクト4WDが楽しめるかも。

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“軽さ”が魅力の2代目TT

2006年に第2世代に生まれ変わったアウディTTの最大の特長は“軽さ”にある、と思っている。アウディお得意のアルミ技術であるASF(アウディ・スペース・フレーム)を採用したボディは、同じパワートレインを持つVWゴルフGTIより約100も軽い。その結果、先代よりホイールベースで45、全長で120、全幅で75大きくなったボディを持つにもかかわらず、乗り味は先代よりも、そしてゴルフGTIよりも、ずっと軽快感あふれるものになっているのだ。

ドライバー・オリエンテッドなコクピットのデザインはノーマル・モデルと共通。


その2代目TTの日本仕様には、これまで3つのモデルがラインナップされていた。2リッター直噴直4ターボを搭載する前輪駆動の2.0TFSIと3.2リッターV6搭載の4WDである3.2クワトロの両クーペ、それに後から追加された2.0TFSIのロードスターだ。なかでも、2代目TTの特徴をもっとも体現しているのはクーペの2.0TFSIで、4WDならではの安定感を見せる3.2クワトロに対して、鼻先の軽さを生かした圧倒的に軽快なハンドリングが魅力的なモデルだった。

しかし、そんなFFのTTにも弱点があった。運動性能のカギを握る前後重量配分を理想に近づけるため、ボディの後部のみスチールを使ってハンドリングを向上させたのはいいのだが、その分フロントが軽くなって、急坂を上っている時などトラクションが抜け、ともするとホイールスピンしやすい傾向があったのだ。

試乗車のシートはオプションの本革仕様だった。ブラック・レザーに野球のグローブのようなシルバーのスティッチが組み合わされる。


それだけに今回新たに加わった2つのモデル、すなわち高性能版2リッター直噴直4ターボを搭載する4WDのTTSと2.0TFSIのクワトロ版がどんな乗り味を持っているのか、興味津々、試乗会に赴いたのである。

圧倒的に軽快なのに過剰ではない

まずはTTSから試乗。走り出した瞬間から、これまでのFFモデルを遥かに凌ぐ圧倒的な軽快感がクルマ全体からブワーッと噴き出してきて、“こりゃ、今どき珍しい、カッ飛びグルマだぁ~”と叫び出しそうになった。アクセレレーターを踏む足に少し力を込めるだけで、ヒューンと文字通り“カッ飛んで行く”。

こんなに軽快でホントに大丈夫なのかと心配になってくるほどなのだが、過剰な感じはまるでしないところが凄い。クワトロ・モデルだけあって、ホイールスピンしないのはもちろん、少々のことではリアを滑らすことなどままならないくらい安定していることに、しばらくして気づいた。冷静にならなければ、そんなことも忘れてしまうくらいの快感が、走っている間じゅうドライバーを襲ってくるのだ。アダプティブ・ダンパーのアウディ・マグネティック・ライドを標準装備しているおかげで、乗り心地も悪くない。まるでジェット・コースターにでも乗っているような感覚で、脳味噌がグズグズになってしまいそうな気持ちよさに興奮しているうちに、短い試乗時間は終わってしまった。

新しい2.0TFSIクワトロは499万円。FFは439万円の新価格に。


次に2.0TFSIクワトロに乗り換える。さすがにこちらは落ち着いて乗ることができた。で、改めて感心したのは、TTはこんなにルーフが低いのに、前席にいる限りちっとも窮屈な感じがしないことだ。サイドシルを跨いで乗るくらいフロアが低く、座面が低く、アイ・ポイントも低い。だから、運転席につくだけで、スポーツカーに乗っているというワクワク感がある。

冷静に考えてみると、やはりTTSは特別なモデルだったのであり、この2.0TFSIクワトロのバランスこそがTTのベストではないかと思えてきた。FFからの重量増は60kg。鼻先の軽さからくるハンドリングの良さはそのままに、一方でどんな時もホイールスピンしないトラクション性能はしっかり確保してある。

いずれにせよ、新たにふたつのモデルが加わったことで、TTのラインナップは一気に充実した。これを機に従来のFF版2.0TFSIが値下げされたのも朗報である。それでも私なら、新しい直4ターボ+クワトロ・モデルのどちらかを選ぶ。TTSの快感が、2.0TFSIクワトロのバランスか。どちらも絶品だ。

文=村上 政(ENGINE編集部) 写真=望月浩彦

全長×全幅×全高=4200×1840×1380mm。ホイールベース=2465mm。車重=1470kg。車両本体価格=675万円。


(ENGINE2008年11月号)

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