2024.06.23

CARS

ジャガーXJがイタリア車になって蘇ったような感覚! 4.7リッターになった2009年型クワトロポルテSは、どんなマセラティだったのか?

2009年モデルのマセラティ・クアトロポルテSのロード・テスト。

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雑誌『エンジン』の貴重なアーカイブ記事を厳選してお送りしている「蔵出しシリーズ」。今回は、2009年2月号に掲載された記事を取り上げる。発表から数えて5年目の夏にフェイスリフトを受けたマセラティの4ドア、クアトロポルテSがニッポンに上陸したのを機にテスト・ドライブしたリポートだ。

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まるでパーティに行くみたい

東京・港区芝公園にあるコーンズのショウルームでクワトロポルテSを受け取った。夕暮れの町の中で見るそれは、これからパーティに行くみたいにドレッシーでエレガントで、うれしくなった。ちょっとボーッとした。ボディ・カラーは「ボルドー・ポンテベッキオ」と名づけられたエンジのメタリック。新デザインのライト、グリルも違和感がなく、昔からこうだったみたいに見える。

Sはステアリングのパドルが標準となる。ウッド・パネルの増加により、インテリアは従来型よりクラシコ・イタリア度を増した。


ドアを開けると、ポルトローナ・フラウ製のレザーに覆われたインテリアが私を待っている。

一見して、ウッドが初期型より増えている。Sの標準は「ウェンゲ」と呼ばれる東アフリカ産の木である。人間は森の中に住んでいた。いや、よく知らないけど、少なくともわがニッポンの国土の70%は森林である。木を見ると、ホッとするのは人間の本能なのである。

センター・コンソールには新たにBOSEマルチメディア・システムが搭載された。ナビゲーションとBOSEのオーディオ・システムが同居しているのだから、鬼に金棒、渡りに船である。パーキング・ブレーキは電気仕掛けとなり、便利になった。しかしながら、そういうことより、エクステリアもインテリアも、思わずきれいだ、といいたくなるくらいきれいで、こんなにきれいなクルマと3日間も過ごせるのである。どこか遠くへ行きたい。知らない町へ。なんて思ったりするのである。

フロント・ミドに搭載されるテスタ・ロッサの4.7リッターV8は430ps/7000rpm、50.0kgm/4750rpmを発生。ギアボックスはZFの6段AT。


とはいえ師走である。諸般の事情で、翌日知ってるところの箱根に行く。クワトロポルテSの真骨頂は、兄弟車のグラントゥーリズモSと基本を同じくする4.7リッターV8を得たことである。4.2リッター版のボア&ストロークを延ばして、447cc排気量をアップ、馬力にして30ps、トルクにして5kgm豊かになった。

ただし、グラントゥーリズモSより10ps控えめで、サウンドもおとなしい。うおぉおおっ、なんて唸らない。ごくジェントルに、欲しいだけのトルクをスッと提供する。停止中も、どくん、どくん、というV8の鼓動が伝わってこない。おそらくオーストリアでの国際試乗会で乗ったときより洗練されている。

全長×全幅×全高=5110×1895×1440mm。ホイールベース3065mm。リアはLEDライトが特徴。サイド・スポイラーも新しい。


クワトロポルテSは、前後異サイズの巨大な19インチ・タイヤが標準だけれど、スカイフック・サスペンションを「ノーマル」にしていれば、不快なショックは伝えない。滑らかに、厳かに走る。レザーとウッドに囲まれ、粛々とドライブしていると、う~む、これは現代のジャガーではあるまいか。いや、現代もジャガーはあるから表現がムズカシイけれど、昔のジャガー、たとえばアルミ・ボディになる前のXJがイタリア車になって蘇って来たような感覚。全長5m超の巨体なのに山道が得意であることも似ている。もともと大型スポーツ・サルーンというコンセプトは同じ。そこへもってきてクワトロポルテSは中低速トルクが増強され、ショーファー・ドリブンとして通用するぐらい、いや、通用する静かさと快適性を得たのだ。

ただし、「スポーツ」にすると、あるいは高速領域になると、スカイフックはおのずと足を固め、乗り心地が若干、攻撃的になる。荒れた路面だと、ゴツゴツして男っぽい。その落差ときたら、エロティックなくらい。ああ~ん。

文=今尾直樹(ENGINE編集部) 写真=望月浩彦

(ENGINE2009年2月号)

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