2024.02.21

CARS

こんなにオーナーの愛情が注がれた旧車を僕たちはいまだかつて知らない! マトラ・ボネ・ジェット5Sとルノー8ゴルディーニ これ以上増車の必要はないという、その理由とは?

マトラ・ボネ・ジェット5S(1966)とルノー8ゴルディーニ(1967)に乗るオーナーの丸山さん

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マイスターと出会う

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そして、このルノー8ゴルディーニを手に入れたことが、丸山さんの人生の大きな転機になった。

「雑誌のアルピーヌ特集で、同じ愛知県にスゴイ人がいる! と見つけたのが加藤仁先生でした。それでイベントの時にお声がけして“ゴルディーニ買ったんです”と言ったら“クルマ来たら見せに来てよ”と。それが23歳の時で、以来今に至るまでお付き合いが続いています」

こうして日本を代表するアルピーヌ・コレクターでマイスターでもある加藤さんのガレージに足繁く通うようになった丸山さんは、彼に倣って自身でメンテナンスを手がけるようになる。



「買ってから数年後、走っていたら突然バーンって音がして、バルブがピストンを突き破ったんです。その時も先生にエンジンの構造から、組み方まで教えてもらいながら、自分でオーバーホールしました。あと20年くらい前にオイル上がりがあった時にもオーバーホールしましたが、それ以降は問題ないですね。先日も大阪南港まで行って、フェリーで松山に渡り、ブルーアイランド・ラリーで350kmほど走ってから自走で戻ってきたところです」

聞けば、過去には傷んできたルーフや、ドアの裾も自分でスプレーガンを使って塗装したのだという。ガレージといい、クルマといい、どうしてそんな玄人はだしの腕前をお持ちなのだろうか?

「昔からモノ作りが好きで、名古屋芸術大学で工業デザインの勉強をしてました。実はゴルディーニのサイド・ウインドウのステッカーも、自分でデータを作ってカッティング・マシーンで作製したものです」




約20年かけて直しました

そんな丸山さんの集大成と言えるのが、もう1台の愛車であるマトラ・ボネ・ジェット5Sだ。

「前オーナーがレストアしようとして置きっぱなしになっていたものを譲ってもらいました。1998年くらいのことだと思います。その時点ではボディとフレームがバラバラの状態でした」

そこからフレームにサンドブラストをかけ、錆止めを塗り、ボディの修正、塗装を行い、エンジンや各部をオーバーホールし、内装も仕立て直してアッセンブリーするという、文字通りのフルレストアが行われた。

しかもボディの塗装をプロに任せた以外は、これもすべて自分自身で行ったというのだ。

仏の自動車メーカー、DBの名の由来の“B”にあたるルネ・ボネが、ルノーのパワートレインを流用し1963年に発売した世界初のミドシップ・スポーツカーがジェットである。64年末にマトラによって買収された際にボディ・ワークなどを改良。


「ボディの修正は、大学でのFRPの授業が活きましたね(笑)。外装色はマツダのトラック、タイタンの純正色です。というのも小さなパーツなどは自分で塗ったので、今後のことも考えて色合わせしやすいようにしました。あとインパネも傷んでいたので木目が揃うように自分で整形したりとコツコツ仕上げて、ようやく2020年に完成しました」

その出来栄えの素晴らしさは、2022年に愛知県名古屋市で行われたコンクール・デレガンス、第1回コッパ・チェントロ・ジャッポーネのクラスCで見事に優勝を飾ったことが、何よりの証と言えるだろう。



そのうえで狭いエンジン・ルームに熱がこもらないようにBMWのバイク用ファンを増設したり、軽自動車のオルターネーターを装着するなど、見た目のオリジナリティを損なわないアップデートを随所に施している。おかげで完成以来特にトラブルもなく、奥様を助手席に各地のイベントへ出かけ、順調に距離を伸ばしているという。

「もうこれ以上クルマが増える予定はないです(笑)。この2台を末長く楽しめればいいと思っています」

クルマ好きにとって、1台のクルマに長く乗り続けるというのは1つの理想形だが、20年以上にわたって2台のクルマを所有するだけでなく、ドライビング、メンテナンス、ガレージ・ライフ、レストアまでを楽しみ尽くすという丸山さんの姿は、まさに“究極の2台持ち生活”と呼ぶにふさわしいものだった。

文=藤原よしお 写真=阿部昌也



(ENGIN2024年2・3月号)

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