2024.02.08

CARS

公道では速すぎる脚を持つ2代目メガーヌRSとは、どんなルノーだったのか? ちょっとやそっと頑張ったぐらいでは、限界に届きもしない(汗)【『エンジン』蔵出しシリーズ/ルノー篇】

駆動系と脚をR26の硬派なものにそっくり入れ換えた羊の皮を被った狼メガーヌ!

全ての画像を見る
中古車バイヤーズガイドとしても役立つ雑誌『エンジン』の貴重なアーカイブ記事を厳選してお送りしている「蔵出しシリーズ」。2代目トゥインゴGTに続く今回のルノー篇は、2008年秋に日本仕様に仕様変更が加えられたマイナーチェンジモデルの2代目メガーヌRSのリポートをお届けする。トピックは差動制限機構(LSD)の組み込み標準化だ。


R26に準じる硬派の仕立て

欲しくて欲しくてどうしようもなくて、無理をしてホットハッチを手に入れた若かったころを思い出した。もし、あのころこんなスーパーなクルマがあったら、それこそ来る日も来る日もため息をついていただろう。

フットウェルのスペースに無理はなく、フットレストを含めた4ペダルが適切に配置される。6MTのギアレバーの操作性もいい。


実用的な5ドア・ボディにネガのほとんどない念入りな仕立ての右ハンドル仕様というだけでも食指が動くところへ、ターボ過給の弱みをほとんど見せないパワフルな2リッター4気筒エンジンとよく考え抜かれたギア比の6段マニュアル・ギアボックス、さらには、素晴らしく速い脚までそなえているのだから、抗いがたい。

最新型のメガーヌ・ルノー・スポールを走らせて、僕は、なんだか少し甘酸っぱい追憶に浸ったのだった。

いま買えるメガーヌRSはこの5ドア(RHD)のほかに、3ドア(LHD)もある。ただし、後者は受注発注という形態を取る。どうしても左ハンドルが欲しい、あるいは3ドア・モデルが欲しいというひと向けの設定で、基本はこの5ドア・モデルということになる。



5ドア仕様にはリミテッド・スリップ・ディファレンシャルが新たに標準装備されているのがトピックだ。ヘリカルギアを使うタイプで、ロック率は35%。前輪駆動用のLSDとしてさほど過激なセッティングではないけれど、その理由はワインディングロードでペースを速めてみるとわかってくる。じっさいのところ、かなり攻め込まないことには、出番が回ってこないのである。前輪のグリップが強力で、LSDに頼らなければならないような状況がそもそも現出しにくい。フロント・サスペンションのデキがいいのである。

ストラットにサブ・ピボットを設けて、接地荷重がタイヤ接地面中心に近いところに垂直荷重として掛かるように工夫されたRS専用サスペンションは、同時にキングピン・オフセット量も小さくできることから、ターボ過給エンジンの大トルクがそのままトルクステアに直結するような事態を招きにくい。しかも、最新型はスプリングやダンパーのセッティングが、メガーヌ・トロフィーやR26に準じる締め上げられたものになって、この巧妙なサスペンション・システムのポテンシャルを、さらによく引き出すものになっている。

脚を硬めれば、左右輪間の荷重移動速度が速くなり、タイトコーナーなどでは内輪荷重が急速に減って空転しやすくなる道理で、だからこそのLSD装着なのだろうけれど、そもそも接地性のいい基本設計をもった脚に、パイロット・スポーツPS2というスーパータイヤの組み合わせだから、セオリーを守って走らせているかぎり、容易にグリップが抜けたりはしないのである。

8J×18の軽量アルミホイールに235/40ZR 18Y(パイロット・スポーツPS2)を組み合わせる足もと。ブレーキもドリル穴が穿たれたタイプが使われる。フロントにはブレンボの4ピストン式アルミ固定キャリパーが奢られる。


タイヤのサイズはR26などに使われているのと同じ235/40R18という過激なもので、リムサイズも8J、ブレーキ・ローターもドリルド・タイプと、すべてR26のそれに準じるヘビーデューティ仕様とされている。5ドア・ボディに224psエンジンという組み合わせは、本来、スタンダードRSのものだけれど、日本仕様のこの新型は、駆動系と脚をR26の硬派なものにそっくり入れ換えてある。見た目は超硬派モデルのR26Rのように過激ではなくても、シャシーの速さは穏健派のそれではぜんぜんないのだ。ちょっとやそっと頑張ったぐらいでは、限界に届きもしない。そういう意味では、公道で走らせるのには、速すぎる脚といってもいい。

そんなわけだから、乗り心地はそれ相応に硬い。脚作り巧者のルノーらしく、角の立ったきつい突き上げをくらうことはまずないものの、街中ばかりを生息地とするには少しばかり覚悟が要るだろう。

ツインスクロール・ターボチャージャーを使う過給の制御は十分に煮詰められている。低い回転域でもピックアップに優れ、扱いやすいギアボックスと相まって、混雑した街中でもストレス・フリーだ。もちろん相応しい場所で鞭を入れれば、胸のすく速さを惜しげもなく披露してくれる。いま日本で買えるホットハッチのキングは、間違いなくこのクルマである。

文=齋藤浩之(ENGINE編集部) 写真=小野一秋



(ENGINE2009年3月号)

無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。

無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。

いますぐ登録

advertisement

PICK UP



RELATED

advertisement