2024.02.12

CARS

ミニ・コンバーティブル こんな中古車、どうですか? オープンの快適性で勝るのはメルセデスSLだけ!【『エンジン』蔵出しシリーズ/ミニ篇】

ミニ・クーパーSコンバーティブル

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快適で素直なクルマ

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雨上がり、じゃなくて雪上がりの路面はフルウェット。こころなしか空気もまだ湿っていて、ここは幌を下ろさずに行こうと決めてスタートしようとしたら、開発陣のひとりが駆け寄ってきて、「ぜひともオープンで行ってほしい」と言う。「新型はどんな時でもオープンを信条に開発したクルマなんだ。今日みたいな天気でもきっと快適だから」と、親指を上げてウィンクまでしてみせる。内心、ほんとにぃ? と思ったけれど、そこまで言われたら、オープン嫌いの僕でも幌を開けざるをえない。「寒いのイヤだなぁ」と不安を抱きつつも、ヒーターとシートヒーターを強めにセットして出発した。

驚いた。オープン時の快適性が、じゃなくて、その乗り心地の素晴らしいことにである。しっとりとした落ち着きがある。ふつうのミニよりクラブマンのそれに近い感触だ。



スタッドレス・タイヤのせいかと思ったけれど、いったん停まってタイヤを見ると、どうやら違うらしい。Vレンジの高速型だけに、トレッドがふにゃふにゃなんてことはない。コンパウンドこそ柔らかめのそれだが、ブロックは大きく、細かい切り込みもたくさんは入っていない。

だいたい、このクーパーSの標準装着サイズは195/55R16のはずなのに、オプションのひとまわり太い205/45R17がついている。ハイトの低い(フレクショナル・ゾーンの短い)タイヤはコツコツとした突き上げの処理に有利だったりするという事実はあるにしても、拡幅による不利を相殺してなおお釣りがくるほどとも思えない。



それに、スタッドレスとはいっても、これもランフラット仕様だ。脚のセッティングが上手い落としどころを見つけたからとしか思えない。コンバーティブルだから、クーパーSとはいっても「カートライクなミニ」たろうと度を過ぎて腐心する必要がなかったからではないだろうか。それと、リアの荷重が増えたことも幸いしているのだろう。

少なくとも乗り心地について、新型コンバーティブルは最良のミニだといって差し支えないと思う。


“オールウェイズ・オープン”

緩やかにくねる山間の道を、感心しながら走っていてもうひとつ気づいたことがある。コンバーティブルは、操縦性ももっとも素直なミニだということだ。ステアリング操作への反応は、タイヤの性格を勘案して考えても、よくしつけられている。過敏にならず鈍くならず、ソリッドな動きのなかに穏やかな時間感覚が織り込まれているのがいい。大人の乗り物たりえている。ステアリング操作とともに瞬時に鼻先が向きを変え、コーナリングを終えた途端にロールがビュンと鋼のように戻る傾向のあるメタルルーフ仕様ミニの癖は、綺麗に抑え込まれている。



そうこうしているうちに指定コースはいよいよ山のなかへと分け入っていく。と、いつの間にか、雪が降り始めていた。時折ワイパーを動かさないと、視界が遮られるようになったので気づいた。運転やクルマに意識を集中していると、身体が自動的に事の処理にあたるから、そういうことも時には起こる。けれど、それぐらい新型ミニはオープンで走ることが煩わしくないのだともいえる。

フルオープンでもサイドウィンドウを上げておけば、風仕舞いは模範的なそれで、シート背後のディフレクター(オプション)を立てると、事実上、無風の状態を作り出せるほど風のコントロールが周到だ。

もし、風に髪をそよがせたいのなら、頬を撫でてもらいたいのなら、ドア・ウィンドウを少し下げて具合を調整すればいいだけだ。すべては乗り手に委ねられている。そこが凄い。「オールウェイズ・オープン」とはそういうことなのか、と僕は思った。

それに気づいて一瞬、上を見上げると、雪が後ろへ飛び去っていくさまが見えた。まるでそこに見えないルーフがあるかのようだった。



運転を代わって助手席に陣取ってみると、新型ミニ・コンバーティブルの快適な空間はいっそう嬉しかった。もし、改良してほしいところがあるとすれば、膝から太腿あたりへ温風を導く工夫を何かしら考えてほしいということだけだろうか。

おそらくオープン・エア・モータリングの快適性でこのクルマにかなうライバルがあるとするなら、僕の知る限りではメルセデスSLだけだ。本当に上質な乗り物なのである。

それでいて、オープンカーとしてのスタイリングが幌を畳んだときの佇まいもふくめて、とてもクラシカルなのがいいと思う。

日本へはこの春、1.6リッター自然吸気のクーパーと1.6リッターターボ過給のクーパーSが、やってくる。

文=齋藤浩之(ENGINE編集部) 写真=BMWグループ・ジャパン

新型ミニ・コンバーティブルのおさえどころ
●フルオープン時の快適性をいっそう追求。
●ロールオーバー・バーはポップアップ式に変更。
●荷室の使い勝手を向上させるルーフエンド・リフトアップ
●日本市場導入はクーパーとクーパーSでこの春。

■ミニ・クーパーSコンバーティブル
駆動方式 フロント横置きエンジン前輪駆動
全長×全幅×全高 3714×11683×1414mm
ホイールベース 2467mm
トレッド 前/後 1453/1461mm
車輌重量(DIN) 1230kg
エンジン形式 ターボ過給水冷直列4気筒DOHC16バルブ
総排気量 1598cc
最高出力 175ps/5500rpm
最大トルク 24.5(OB:26.5)kgm/1600-5000rpm
変速機 6段マニュアル・ギアボックス
サスペンション形式 前 マクファーソン・ストラット/コイル
サスペンション形式 後 マルチリンク/コイル
ブレーキ 前/後 通気冷却式ディスク/ディスク
タイヤ 前/後 195/55R16 87V
日本市場発売時期 2009年春

(ENGINE2009年4月号)

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