2024.03.05

CARS

電動化前のロータスは最高だった! 260馬力で910kgの超軽量マシン、エキシージ・カップ260は、どんなロータスだったのか?【『エンジン』蔵出しシリーズ/ロータス篇】

ロータス・エキシージ・カップ260に試乗

全ての画像を見る
中古車バイヤーズガイドとしても役立つ雑誌『エンジン』の貴重なアーカイブ記事を厳選してお送りしている「蔵出しシリーズ」。今回は、2009年6月号に掲載されたロータスのエキシージ・カップ260のリポートを取り上げる。


「最新が最良」なのはポルシェだけじゃない!

近年、新型に乗るたびに乗員との一体感が増した感がある。「最新が最良」というフレーズはポルシェで有名だが、ロータスに関しても同じことが言えそうだ。

ハンドル位置は左右どちらでも選択が可能。エアバッグは運転席、助手席とも外されているが、ABS、ローンチ・コントロール、トラクション・コントロールは標準装備。


最新のエキシージ・カップ260は、ロード・カーのエキシージとして過去最強の、260psと24.1kgmにアップしたエンジンを搭載する。カーボン・ファイバー製パーツの割合が圧倒的に増えたが、それは主にボディ上部、重心の高い部分を軽くすることが、いかに運動性能、つまり俊敏なフットワークやハンドリングに効くかを実証することになった。

軽量化だけではない。弾けるようなレスポンスとパンチ溢れるエンジン特性だから、その走りはもうほんとうに目が覚めるほど刺激的である。往年のライトウェイトは、非力なエンジンでも軽量シャシーがその分を補い、コーナリング・マシンに変身させた。が、そんな次元の話とはワケが違う。現代の安全基準を満たしつつ、ハイパフォーマンス・エンジンとハイグリップ・タイヤを組合せての、現代版ライトウェイト。試乗車は910kgだからパワー・トゥ・ウエイト・レシオ3.5kg/ps。0-100km/hは4.1秒。0-160km/h加速9.9秒。最高速は245km/hに達する。絶対値よりもそこに到達するまでの瞬間移動のような弾ける速さこそがカップ260の生命である。

エンジンルームにインタークーラーがそびえ立っているため、後方視界はまったく望めない。そのためバックミラーは最初からない。


軽量化はカーボン・ファイバー製ボディがメイン。まず室内はサイドシルたるバスタブ上面にカーボンを貼り、ワンピースのダッシュ・パネルも、FIA公認HANS(衝撃を受けた際のヘルメットの動きを規制する防具)対応バケット・シートもカーボン製。肝心なのはボディ上部で、インダクション・スクープ付きルーフ、フロント・アクセス・パネル、リア・ゲート、リア・スポイラーほかのカーボン化で頭部がスッキリと軽くなった印象。

そのほか軽量のバッテリー、リア・サブフレーム、フライホイール、バルクヘッド・パネルなどメカニカルな部分と、カーペット(トランク含む)、サンバイザー(代わりにインナー・パネルが前部にせり出して日除けに)、リア・ゲート・ダンパーを取り外す等々で、従来のエキシージ・カップ255から“38kg”の軽量化を達成した。


レーシング・エンジンの鋭さ

過給による出力増強はターボではなく、S/C(スーパーチャージャー)であるところがキモ。やはりクランク直結で駆動する過給器は、レスポンスが違う。量産というよりも完璧にレーシング・エンジンの鋭さがある。7500rpmで1つ、8000rpmで2つ、8300rpmレブ・カットで3つめが点灯するレッドのウォーニング・ランプは回転上昇が鋭いため瞬く間にすべてが点灯する。脳天を突き抜けるかのような高周波の直4サウンドとイートン製S/Cの過給音が入り混じる加速Gの凄まじさ。逆にサーボが効き過ぎかと思うほど軽いペダル・タッチでも強力な減速Gを立ち上げるブレーキ力が、安心感をもたらしてくれる。勢い余って飛び出した……というエネルギーを瞬時に鎮める余裕のストッピング・パワーである。

全長×全幅×全高=3805×1725×1160mm。ホイールベース=2300mm。車重=910kg。車両本体価格=949万円


尋常じゃないコーナリング速度

冒頭の乗員との一体感とは、加減速、旋回によるボディの動きが人間の感性にぴたりと合うという意味だ。アイバッハ製スプリングと、ビルシュタイン製ワンウェイ・アジャスタブル・ダンパーにアンチ・ロールバーのチューニングの巧みさ。これにカーボン製ボディ・パネルの効力で、特に旋回時の横Gによるロールをじつに自然に抑え込み、いかにも低重心な安定性で、尋常じゃないコーナリング速度を可能にする。

カップ260は、早朝の伊豆の山岳路をニュルブルクリンクに変身させた。加減速の前後Gと、左右の横Gとで、バケット・シートにハーネスが体に食い込むほど締めあげたにも拘らず、上体は木の葉のように前後左右に強烈なGフォースを受けて、もうヘトヘトに。ただしストロークさせて、それを減衰するダンパーの動きは突き上げを和らげて、それまでのエキシージからすると断然乗り心地がいい。最良のロータスは最新のロータスである。

文=桂 伸一 写真=望月浩彦

(ENGINE2009年6月号)

無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。

無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。

いますぐ登録

advertisement

PICK UP



RELATED

advertisement