名機と言われる4気筒ツインターボ・エンジンを搭載するアルピナD3
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最先端のスーパーディーゼル少し内容を説明しておこう。アルピナD3の基本構成は、3シリーズに2リッター直列4気筒の直噴ディーゼル・ターボを載せ、6段MTもしくは6段スイッチトロニックを組み合わせたものだ。ボディはセダン、クーペ、ツーリングから選べる。すでにドイツ本国市場についで高い人気を博している英国市場でも販売しているから、もちろん、右ハンドル仕様も選べる。つまり、順列組み合わせは3×2×2で12通りあるわけだ。
エンジンはBMW123dに使われる、大小2基のターボチャージャーをシーケンシャル作動させるツインターボ仕様がベースで、そこにアルピナの洗練されたチューニングが加えられて123dでは204psの最高出力が214psまで引き上げられている。比出力は107ps。市販車用ディーゼルとしては未曾有のハイチューン・ユニットとなる。20年前ならそれこそ夢にも描けなかった、驚天動地のハイパワーである。2リッターディーゼルの平均的な最高出力は70ps程度にすぎなかったのだから、じつに3倍!である。出力以上に驚異的なのがトルクだ。D3のユニットは45.9kgmもの巨大な力を2000から2500rpmの範囲でひねり出す。M3の4リッターV8ユニットですら40.8kgmでしかないことを思い出してほしい。D3のユニットは並の5リッター級ガソリンV8ユニットに匹敵するトルクを、それより低い回転域で生み出すのである。
当然、変速機にはそれ相応に受容トルクの大きいヘビー・デューティな仕様を使うことになる。けれども、D3の6MTは武骨な感触を微塵も残さない。アルピナ(BMW)一流の軽やかな操作フィールを保っている。あぁ、それにしても素晴らしい。内燃機関の感触そのものに、からだの奥底から湧き上がってくる喜びを感じることなどそうそうあるものではないけれど、D3ビターボの4気筒ツインターボ・エンジンはその数少ない名機のひとつだ。タイプこそ違っても、コルベットZ06のV8や911GT3のボクサー6、599のV12のエンジンと同じぐらい大きな感動をもたらしてくれるエンジンだ。ディーゼルということでトップエンドでのふん詰まり感や、音、振動を危惧するひとがいるかもしれない。でも、一度、これを実体験したら、そんなものは昔話にすぎないということを即座に理解するはずだ。アルピナは4気筒2リッターディーゼルではせいぜい4500rpm辺りが上限のレヴリミットを5200rpmまで引き上げることに成功しているし、電子制御ガバナーの介入の仕方も綺麗な減衰感に結びついている。振動にしたって、ベース・ユニットにもともとバランサー・シャフトが組み込まれているから、この高回転型ディーゼルにして2次振動の嫌がらせも出ない。音も問題なし。唯一アイドリングでこそディーゼルだとわかるものの、だからといってキンキンカンカンゴロゴロとしたものではない、ごくごく控えめな音量でギリギリと鳴るソフトな音質だ。最新の多段階噴射技術の成せる技である。因みに、高出力実現のために大容量型とせざるをえないインジェクターは、緻密な噴射(燃焼)制御を難しくするが、D3には高価なピエゾ式を使い、ネガを抑え込んでいる。エンジンがあまりに感動的なもので、ついその話ばかりになってしまった。しかし、アルピナの真骨頂はその心臓にもまして、麗しい脚さばきにある。D3もその例外ではない。ひたひたとよく動き、しなやかに路面をとらえ続ける。これも感動的。D3は、最良最高の3シリーズだ。文=齋藤浩之(ENGINE編集部) 写真=望月浩彦◆中古車バイヤーズガイドにもってこい! 『エンジン』のアーカイブ記事を続々公開中! ラインナップ一覧はこちら(ENGINE2009年4月号)
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