2024.04.28

CARS

エンジンは黒子、こいつの最大の魅力は脚の仕立てだ! グランデ・プントはどんなアバルトだったのか? すべてが速さを見据えてセットアップされている!

アバルト・グランデ・プント

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中古車バイヤーズガイドとしても役にたつ『エンジン』蔵出し記事シリーズ。今回は2009年6月号に掲載された新生アバルト第1弾、グランデ・プントのリポートを取り上げる。イタリアでの発表から1年半。日本上陸の日がくることを待ちわびたテスターの編集部員は復活した蠍のマークのホットハッチをどう評価したのか? 


アルファとアバルトはどっちの方がホットなのか?

「アバルトってなによ?」と訝るむきが少なからずいても当然だと思う。その商標権を抱えながらフィアットはほとんど20年も飼い殺し同然の扱いを続けてきたのだから、往時の活躍ぶりを知らないひとにはピンとこなくて、当たり前だ。だからといって、30年も40年も前の輝けるレース戦績を語って聞かせたところで、いまさらの感は拭えない。

今に蘇ったアバルトが送り出すクルマを、ならばどのように受け止めたらいいのか? その問いに率直に答えようとすれば、「フィアット・グループ・オートモビルズのなかで最もレーシング・フィールドに近い部門が直接開発に関係して送り出す、硬派なスモールカー群」というしかないだろうと、僕は思う。

角度と伸長に調整の効くステアリング・ホイール。ペダル配置、6段MTのギアレバーの操作感も文句なし。6速のギア比は巡航用。


かつてと同じなのは、フィアット名義の小型車をベースに、とびきりホットな性格に仕立ててあることだ。「じゃあ、アルファ・ロメオとアバルトは、どっちがホットなのよ?」となれば、こう答えるべきだろう。「ロード・ゴーイング・カーに限っていえば、もちろんアバルト名義のクルマのほうである」と。

フィアットの同じプラットフォームと、FPT(フィアット・パワートレイン・テクノロジー社)が開発した、基本的に同じエンジンを使うアルファ・ミトとアバルト・グランデ・プントで較べれば、後者のほうがハードコア寄りの仕立てなのだ。


本気で高速型の脚

いまここで自信をもってそう言えるのは、イタリアでの国際試乗会から1年半を経て、ついに日本の慣れ親しんだ公道で存分にグランデ・プントを走らせることができたからだ。

アルファ・ミトとアバルト・グランデ・プントの国際試乗会は、どちらもバロッコにあるフィアットのテスト施設を拠点に行われた。しかし、プントはテストコースのみ、ミトは外の一般公道での試乗だった。あとでミトを借り出してアルプスを走り回ったこともあるが、テスト・トラックのように全開に次ぐ全開を試せるはずもない。路面条件も違う。

そんなわけで、動力性能ではほとんど選ぶところのない2台は、それぞれに「スポーティなスモールカーだなぁ」という印象を残して、今日まできたのだった。

ハイバック・タイプの前席は大柄な体格の人へも対応する形状と大きさを備えている。表皮はファブリック。内装色はこの黒のみ。


でも、一般公道でグランデ・プントを走らせ、記憶のなかのミトと較べることが可能になると、両者の違いが鮮明に浮かび上がってきた。

アバルトは本気だ。本気で速いクルマを仕立てている。アバルト・グランデ・プントは速く走れば走るほどに輝きを増す。ちょっとやそっと頑張ったぐらいでは底の見えてこないシャシーの速さにそそのかされてペースを上げていくと、いつのまにかとんでもない速度になっている。もし、公道でスポーティな雰囲気を楽しんでくださいという仕立てだったら、こうはならないはずだ。

それで合点がいった。借り出して街なかを走らせ始めたアバルト・グランデ・プントは、テストトラックで走らせた記憶のなかのそれとは違って、脚が硬いという印象が先に立った。「こんな感じじゃなかったのになぁ。もっとしなやかにロールしたのになぁ」と少し面食らった。

でも、それはコース幅が十二分に確保されたテストトラックのせいで速度に意識が及ばなかったからだと気づいた。レヴカウンターは注視していたけれど、そういえば速度計など見ていなかった。

思い切って走らせてみて分かったのは、そういうしなやかな感触が生まれるのは、かなりのハイペースに達してサスペンションへの入力が大きくなってからなのだ。確かめてみると、あの時と同じ感触はたしかに再現される。ただ、それが公道上ではちょっと憚られるようなペースに達してからなのだ。

路面がうねっていたり凹凸があったりすると、硬いスプリングはボディのピッチングを誘うが、当たりのしなやかなタイヤは路面をつかんで離さず、挙動も乱れない。タイヤそれ自体のグリップはとりわけ高いわけではないのに、そのもてる力を最後の最後まで使いきる。四肢をバンッと大きく開いて、路面を鷲づかみにしているような感触がある。ペースが上がるとピッチングも押さえ込まれる。サスペンションがよく動いて、いい仕事をしていることがいよいよ分かってくる。

4つのホイールアーチ・フレアを繋ぐようにボディ下端を一周する黒いトリムが見た目をギュッと引き締める。ストライプは標準。


鼻先に載るエンジンは155psを発揮するユニットとしては望外に軽いから、パワートレインの重さに負けて鼻先が外へ逃げていくこともない。高い限界に達して、じりじりとタイヤが逃げ始めるのを捉えていれば、結果的にかなりのアベレージ速度が保たれるという寸法だ。

これなら、サーキット・コースを使ったドライビング・レッスンやスポーツ走行も存分に楽しめるはずだ。ロード・ユースだけに焦点が合わせこまれたクルマとは違うのである。

中速域のトルクで走る

この脚の仕立てがアバルト・グランデ・プントの最大の強みにして魅力の核だろう。6段マニュアル・ギアボックスと組み合わされた1.4リッターの過給エンジンは、この脚のポテンシャルを引き出すための黒子といってもいいかもしれない。トップエンドのパワーではなく3000rpmから5500rpmぐらいまでの回転域でフラットに発揮される強力なトルクを、1速から5速まで巧妙に配分された常用ギアを繋ぎながら、駆動力を繋いでいく。脚にめいっぱい仕事をさせるためにだ。そういう使い方をしたときに輝くようになっている。これは、エンジンの感触を楽しむための仕立てではない。総てが速さを見据えてセットアップされている。

2日間アバルト・グランデ・プントを走らせ続け、僕は「もう少し若かったらなぁ」と何度も思った。

走れ、奔れとクルマが訴えかけてくる。それに嬉々として応え続けられるだけの体力が僕にはもうない。

身体を鍛え直すべきだろうか……。

文=齋藤浩之(ENGINE編集部) 写真=望月浩彦

◆中古車バイヤーズガイドにもってこい! 『エンジン』のアーカイブ記事を続々公開中! ラインナップ一覧はこちら

■アバルト・グランデ・プント
駆動方式 フロント横置きエンジン前輪駆動
全長×全幅×全高 4060×1725×1480mm
ホイールベース 2510mm
トレッド 前/後 1480/1475mm
車輌重量 1240kg
エンジン形武 水冷直列4気筒 DOHC 4v+ターボ過給
総排気量 1368cc
量高出力 155ps/5500rpm
最大トルク 20.5(23.5)kgm/5000(3000)rpm
変速機 6段マニュアル・ギアボックス
サスペンション形式 前 ストラット式/コイル
サスペンション形式 後 トーションビーム式/コイル
ブレーキ 前/後 通気冷却式ディスク/ディスク
タイヤ 前/後 215/45R17
車両本体価格 270.0万円(LHD)

(ENGINE2009年6月号)

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