2024.03.11

CARS

スープラやZと勝負 新型アストンマーティン・ヴァンテージにGT4のレーシングカーが登場

ビッグ・マイナーチェンジで大きな進化を遂げた新型アストンマーティン・ヴァンテージ。その発表では同時に新型をベースにしたGT3規格のレーシングカー、「ヴァンテージGT3」もお披露目された。あれから1か月も経過しないうちに、今度はGT4規格のレーシングカーとなる「ヴァンテージGT4」が発表された。これで新型ヴァンテージはロードカーが1台、レーシングカーが2台揃ったことになる。GT4もアストンマーティン・レーシング(AMR)がGT3と並行して開発、製造を担っている。

ニュル24時間レースなどで大活躍

GT4規格を持つアストンマーティンの最初のモデルは、ロードカーの「V8ヴァンテージ」をベースに2009年にデビューし、ニュルブルクリンク24時間レースや、ドイツからヨーロッパへと広がってきたGT4カテゴリーのレースで存在感を見せてきた。先代のヴァンテージGT4は2018年の発売以来、こちらも数多くの国際耐久レースや国内のGTシリーズで活躍し、クラブレース・イベントやサーキット走行会でGT4を選択するチームが増えている。



競争力をさらに高める

新型GT4は先代のレースでの実績に基づいて開発され、GTレースのジュニア・カテゴリーで高い競争力を発揮することが期待されている。市販仕様の新型ヴァンテージと同様に、シャシーやエアロダイナミクス、ドライブトレイン、効率性の向上など、次のステージに到達したことになる。

とはいえ、厳しいGT4レギュレーションの元での進化であり、市販仕様と近い基本性能や装備が用意されている。基本構造とメカニカルアーキテクチャの約80%を市販車と共有化。その中心を担うのが、構造用接着剤を使った接着アルミニウム・シャシー(ボンデド・アルミニウム・シャシー)であり、厳しい安全要件を満たすためにカスタマイズされたロールケージも装着される。



レース・モデル向けにシステムを変更

4.0リッターV8ツインターボとトランスミッションは市販車のコンポーネントをベースとしていて、電子制御システムをレース・モデル向けに変更した。ボッシュ・モータースポーツ製ECUとAMRの手による特注のソフトウェアが搭載され、主にエンジンの管理とターボ制御システムを正確にコントロールする。GT4選手権の厳格なBoP(性能調整)基準を満たすために採用されている。

さらに、トランスミッションには市販車のATを制御するZF社とAMRの共作となるモータースポーツ・ソフトウェアが組み込まれた。このATのソフトウェアは、8段をオートモードなしの6段パドルシフトに変換し、巡航速度での燃費向上を担うオーバードライブ・レシオの7速と8速をロックアウト(閉鎖制限)する。同時にギアシフトも最適化され、モータースポーツならではのトラクションコントロールを作動させることも可能だ。メーターは市販車用に替えて、最新のボッシュ製「DDU 11ディスプレイ」が配置されている。



レギュレーションの範囲でチューニング

シャシーもレギュレーションの元で改良された。インボード・サスペンションの取付位置は市販車と同じだが、レース車に必要なキャンバーの範囲を確保するため、認められた範囲でサスペンション・リンケージに変更を加えた。また、新型車に装着される21インチ・ホイールよりもインチ・ダウンとなる18インチのホイールとタイヤのパッケージに適合されている。アルミホイールはAMRの特注の鍛造ホイールを装着している。

脚まわりでは、新たな2ウェイ調整式KW製ダンパーの採用も注目点だ。過去6年間のドライバーからの膨大なフィードバックに基づいて開発され、より正確でコントロールしやすいフィーリング、操作性が確保されているという。



エクステリアの大半を市販車と共通化

エクステリアもレギュレーションに沿ってわずかな変更にとどまっているため、当然ながらロードカーと似通っている。新型GT4のエアロダイナミクスの最適化には、数値流体力学(CFD)が採用された。アストンマーティンのデザイン部門からフィードバックに基づき、変更点のすべてが最終デザインに確実に反映されたそうだ。

そのため、新型GT4のボディ・パネルの大半を市販仕様と共通化している。例外なのはボンネットで、サステナブルな天然亜麻(リネン)繊維の複合材を用いてコルクの芯材で補強、さらにエア・アウトレットも新設されている。



リア・ウイングを追加

GT4のレギュレーションでは空力性能の変更も制限されているが、新型GT4には大型フロント・スプリッターと新しいリア・ウイングが追加された。従来型のGT4よりもダウンフォースが増え、空気抵抗が減少している。

また、エンジンとブレーキへの冷却気流の管理にも注意が払われている。両方ともに市販仕様のデザインの恩恵を受けていて、ラジエーターの開口部が大きくなったことで、エンジンの冷却システムに流れ込む空気量が増加。ブレーキへの冷却風も大幅に増え、リア・ウイング上の気流を乱すことなくエンジンとブレーキの冷却性が改善している。

新しいヴァンテージGT4は2024年1月末にアメリカ・フロリダ州で開催された「ロレックス・デイトナ24時間レース」の「IMSAミシュラン・パイロット・チャレンジ」ですでに国際レースへのデビューを果たした。生産は順調に進んでいて、すでに数台のマシンがチームのもとに届いている。なお、2024年シーズン中に40台以上の受注を見込んでいるという。



文=塚田勝弘

(ENGINE WEBオリジナル)

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