2024.03.29

CARS

ヤフオク7万円で買ったシトロエン、修理の間は代車生活【シトロエン・エグザンティア(1996年型)長期リポート#34/ランチア・ゼータ2.0t(1997年型)短期リポート前篇】

ランチア・ゼータ2.0tは1990年代後半、10数台が輸入されたようだ。当時の価格は約500万円。

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カングーくらいの存在感

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インストゥルメント・パネルの中央からにゅっと飛び出ているのはシフトノブ。ミニバンではあまり見ることはないが、このゼータの変速機は5段のマニュアル。ステアリング・ホイールはリモコン・スイッチがなく、中央のエアバッグ・ユニットにランチアのロゴが入っているが、シトロエン・エグザンティアとまったく同じものだ。濃いグリーンのシートに合わせて、フロア・カーペットも薄いグリーンにしているのがすごくお洒落である。



ボディ・サイドには「Z 2.0t」と、小さな小さなエンブレムが付いている。これをめざとく見つけて「これってターボなの? 初めて見たよ」とおっしゃったのはモータージャーナリストの清水草一さん。そう、イベント会場などを除き、僕もこれ以外のゼータが、日本の道を走っているところを見たことがない。

屋根の上のウイングのように見えるものは、前後に分割され、スライドし、ルーフ・キャリアになるみたいだ。ただしこれはゼータ用ではなく、後継モデルのフェドラ用を加工して取り付けたものらしい。前席と2列目席の頭上には、それぞれ大きなガラス・ルーフが付いている。




2.0tという記号が示す通り、短いボンネットの中にはエグザンティア・ターボCTアクティバと同じ、2リットルSOHC 8バルブの直列4気筒ターボ・ユニットが横置きで搭載されている。最高出力と最大トルクは147ps/5300rpmと24kgm/2500rpm。駆動するのは前輪のみで、4輪駆動の設定はない。

車体サイズは当時のイタリア版のカタログによれば、全長4470mm、全幅1832mm、全高1714mm。現行のルノー・カングーよりも20mm短く、12mm広く、96mm低いのだが、駐車場で隣に並べてみると存在感はほぼ同じくらいである。とはいえ座席はカングーは前後2列、ゼータは前中後の3列だから、いかにクルマが大きくなっているかよく分かる。ただし車両重量は1690kgとなかなか重めだ。



ゼータはもともと、1990年代初頭にフィアット・グループとPSAが共同で開発・生産した6〜8人乗りのミニバンのバリエーションの1つである。開発の主導はPSA側にあったようで、プジョー版が806、シトロエン版がエヴァジオン、フィアット版がウリッセという名でそれぞれ販売された。車体の基本部分は共通だが、灯火類や前後の造形は異なっていて、その中の最上級版がランチア・ゼータというわけだ。なお当時すでにグループ内に属していたアルファ・ロメオ版は存在しない。

ゼータをふくめ、このフィアットとPSAの共作はすべて日本に正規導入はされなかった。これまで日本でウリッセとエヴァジオンを見たことはないが、わずかな数の806と、10数台程度のゼータが並行輸入の形で上陸したのは確認している。ゼータの多くはこのターボ・エンジンとブルーの外装と緑のアルカンタラ内装の組み合わせだが、レザー内装や2リットルDOHC 16バルブ自然吸気4気筒エンジンと4段ATを組み合わせたモデルもやって来ているらしい。

ハズレの代車かと思いきや

代車だから仕方がないのだがドリンク・ホルダーが何個も付けられ、レーダーやシガーソケットなどの配線が室内のあちこちに張り巡らされているのは正直好みじゃないし、走行距離も積算計上ですでに22万km以上、実際にはメーター・ユニットが交換済みらしく25万kmを越えているらしい。エグザンティアの主治医であるカークラフトの代車なので、そうとう入念なメンテナンスを受けているはずだけど、そこはしょせん大きなミニバンだろう、と思っていた。



カークラフトとの付き合いは長いが、この代車のゼータに乗ることはこれまでなく、今回あてがわれた時は、正直ハズレだと思った。僕の生活の中でここまで多くの人を乗せる用途は99%ない。

どうせ同じMTなら、こんな大柄なクルマより、以前代車として時々乗せてもらった、初代ランチア・イプシロンが良かった。あっちは1.2リットルDOHC 16バルブ・エンジン搭載車で、身軽でキビキビしていてすごく好みだったからである。

ところが、この僕のゼータに対する間違った考えは、運転席に座り、走り出してすぐに覆されることになった。うわっ! 何コレ? こんなに濃厚な運転感覚のミニバンがあったのか!!

次回の後篇では、ゼータという知る人ぞ知る名車について、イタリア車的でありフランス車的でもある操縦性と、華美な表層に隠された、実用車としてとても正しい造り込みの詳細をご報告する。

文=上田純一郎(ENGINE編集部) 写真=神村 聖(集合写真)/上田純一郎 撮影協力=カークラフト

■CITROEN XANTIA V-SX シトロエン・エグザンティアV-SX
購入価格 7万円(板金を含む2023年3月時点までの支払い総額は234万6996円)
導入時期 2021年6月
走行距離 17万4088km(購入時15万8970km)

(ENGINE WEBオリジナル)

◆エンジン編集部ウエダのシトロエン・エグザンティア(1996年型)長期リポート連載一覧はコチラ
ヤフオク7万円25年オチのシトロエンの長期リポート連載!

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