2024.05.24

CARS

あなたはオープン派、それともクーペ派? ポルシェのミドシップ兄弟、718ボクスターと718ケイマンを島下泰久が乗り比べる できるなら、2台とも欲しい!!

ポルシェのミドシップ兄弟、718ボクスターと718ケイマンを乗り比べる!

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オープンで走るのが正装

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続いては718ボクスターに乗り換える。ルービースター・ネオと呼ばれるボディ・カラーにホワイトのホイール、ストライプという出で立ちは眩しく、思わず気後れしそうになる。しかもオープンカーである。街行く人の視線がまずクルマに向き、次の瞬間には「どんな人が乗っているの?」と、ドライバーに向いてくるのが分かる。オープンで、しかも派手なスポーツカーとなると、乗るだけでも気合いが必要である。

視線を集めるポップなカラーリングの718ボクスターはやはり、屋根を開けた状態が似合う。


もっとも走り出してしまえば自然と運転に夢中になり、些細なことは気にならなくなる。アナログメーター、PDKのゴツいセレクター・レバーなど、今となってはやや古めかしい雰囲気も悪くない。

走りもタッチは古典的だ。乗り心地は、路面からの突き上げが大きめ。タイヤサイズは20インチで先程まで乗っていた718ケイマンと変わらないが、こちらはPASMが備わらず、しかもオープン・ボディということで、粗っぽいとまでは言わないが結構ガツガツ来る。PASMは、やはりあった方が良さそうだ。

718ボクスター・スタイル・エディションの試乗車は7段PDKモデル。


とはいえ普通の基準で見たら決してヤワなボディというわけではない。実際、操舵に対して正確に反応し、右足との連携で姿勢を自在に整えられるフットワークは、しっかりとした車体があってこそのものである。

更に言えば、オープンにして走ればネガは半減する。718ボクスターの正装は、やはりこちらなのだ。

エンジンは共通だが、こちらはPDK。発進に手間取ることはないが、初期の反応の鈍さにアクセレレーターを踏み込みすぎると、ブーストが立ち上がった途端に首が後ろに持っていかれることになる。回転上昇は鋭く、パワーの立ち上がりもピーキーなためギクシャクしがち。しかしながら、それをパドルシフト、左足ブレーキなどを駆使してスムーズに走らせるのは、なかなか面白い。

インテリアは基本的に718ケイマンと同様だが、試乗車はホワイトのレザーシートが組み合わされ、カジュアルな印象を受ける。


本当ならば、ピーク・パワーなど追いかけなくていいから、もっと小型のターボチャージャーを使って低回転域からトルク豊かな特性にした方がクルマには合っているはずだ。けれども、次の718シリーズはBEVになる。こうしてエンジン特性について話せるのも今のうちかと考えれば、それも許せてしまう。

今の気分なら718ケイマン

走りの違いから見てきたが、オープンとクーペは、とりわけこの718ボクスターと718ケイマンは、快適性や実用性の面でもそれぞれ異なる特徴を備えている。そこに触れずして、2台を語ることは不可能だ。

前述の通り718ケイマンはきわめて快適性が高いが、優れた実用性も間違いなくそのセールス・ポイントである。車体はキャビンの前後に荷室が備わり、フロントにはキャリー・オンのスーツケースが収納可能。個人的に気に入っているのがテール・ゲートの存在で、911の場合はクーペだとストイック感が出てくるところ、こちらはグンとカジュアルに見えるのだ。このいい意味での抜け感にソソられるのである。



テール・ゲートは機能的なメリットも大きい。何しろ間仕切りを外せばゴルフのキャディバッグを2セット並べて積み込めるのだ。長尺のドライバーは抜いてシート背後に置いた方が良さそうだが、それでも2人ぶんの荷物を積み込むスペースとして、まったく不足は無い。

コンパクトカー並みのサイズ、良い意味で目立ちすぎないデザイン、良好なドライバビリティなどが相まって、718ケイマンは何の苦もなく普段使いすることができる。日常域のドライバビリティやエンジン・フィールの質を考えると、GTS4.0辺りが相応しいとも思えるが、ともあれスーパーへの買い物だって気負わず行けるカジュアルな、しかし本物のポルシェである。もちろん、行くのは“高級”スーパーの方が似つかわしいが、こうした部分もまた718ケイマンの大きな魅力なのだ。

無論、718ボクスターも普段使いに困ることは皆無である。但し、クーペの718ケイマンと較べると、特にオープンで走らせている時には、先に記したように周囲の視線も相まって、いい意味で平常心では居られなくなってくる。同じ基本骨格、同じエンジンで、これほどまでに気分が違ってくるものかと、改めて唸らされてしまった。



そう考えると、こちらは2.0リッターターボの活発なキャラクターが、まさにお似合いだ。PDKならば普段はリラックスして楽しめる一方、時にはパドル操作で思い切り回してやれば、思い切りテンションを上げていける。日常の何気ない瞬間、普段の道なのに、ルーフを開けるだけで、あるいはアクセレレーターを踏み込むだけで、ハレの日に変えることができるのが718ボクスターなのだ。

どちらも間違いなく魅力的な、この2台。個人的には、今の気分で選ぶならば718ケイマンだろうか。こういうクルマをサラッと使いこなす。そんなカーライフが送れたらカッコ良い。一方、ライフよりもカー成分を重視して選ぶなら718ボクスターだろう。もちろん、それはそれで違った幸せが待っていることは間違いない。いずれにしても言えるのは、冒頭に記した通り718ボクスターと718ケイマンの2台は単に同じクルマのオープンとクーペではなく、それぞれ別のキャラクターが際立った存在だということである。可能なら、両方いっぺんにガレージに収めたいぐらいなのだ。

文=島下泰久 写真=神村 聖


■718ケイマン・スタイル・エディション
駆動方式 エンジン・ミドシップ縦置き後輪駆動  
全長×全幅×全高 4379×1801×1295mm  
ホイールベース 2475mm  
車両重量(車検証) 1580kg  
エンジン形式 水平対向4気筒直噴DOHCターボ  
排気量 1998cc  
トレッド(前/後) 1515/1530mm  
最高出力 300ps/6500rpm  
最大トルク 380Nm/2150-4500rpm  
トランスミッション 6段MT  
サスペンション(前後) マクファーソン・ストラット+コイル  
ブレーキ(前後) 通気冷却式ディスク  
タイヤ (前)235/35ZR20、(後)265/35ZR20  
車両本体価格(税込) 952万円  

■718ボクスター・スタイル・エディション
駆動方式 エンジン・ミドシップ縦置き後輪駆動  
全長×全幅×全高 4379×1801×1281mm  
ホイールベース 2475mm  
車両重量(車検証) 1880kg  
エンジン形式 水平対向4気筒直噴DOHCターボ  
排気量 1998cc  
トレッド(前/後) 1515/1530mm  
最高出力 300ps/6500rpm  
最大トルク 380Nm/2150-4500rpm  
トランスミッション 7段ツインクラッチ式自動MT(PDK)  
サスペンション(前後) マクファーソン・ストラット+コイル  
ブレーキ(前後) 通気冷却式ディスク  
タイヤ (前)235/35ZR20、(後)265/35ZR20  
車両本体価格(税込) 991万円  

(ENGINE2024年6月号)

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