2024.08.01

CARS

イタリア人ジョッキー、ミルコ・デムーロがランボルギーニに試乗! 人気騎手は、馬ならぬ2台の猛牛、ウラカン・テクニカとウルスSを乗りこなせたのか?

2台の猛牛、ウラカン・テクニカとウルスSに「騎乗」したデムーロさんの感想は?

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ウラカンはアドマイヤマーズ

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「最初は運転の難しいクルマなのかなってちょっと構えていたんですけど、すぐに慣れましたね。でもスピードが半端ないですね。一番気に入ったところはノン・ハイブリッドのV10エンジン。音も加速もサイコーでした」

ウラカンを競走馬に例えるならば、「アドマイヤマーズ」と答えた。2019年にデムーロさん騎乗でG1の「NHKマイルカップ」に勝利した馬だ。パワー感、スピード感が似ているという。

自然吸気V10エンジンをミドに搭載したランボルギーニ・ガヤルドが登場したのは2003年。あれから20年の歳月をかけ集大成とも言えるV10が完成した。車名のテクニカに相応しくランボルギーニの技術が結晶したウラカン・テクニカは2023年に登場した。

騎手という職業柄、常人とは異なるスピード感覚をもっているようだ。競馬には常に危険が伴う。怖くないのか尋ねると「速い乗り物はなんでも好きですね。もちろんリスクはあるけど」と事もなげにいう。実はモーター・サイクルも大好きで、地元ではずっと乗っていた。「ジョッキーじゃなかったら、F1ドライバーかバイクレーサー、どちらかを目指していたと思う。F1はスポンサーが必要だしお金がいるから、やっぱりバイクかな」

さすがはF1とMotoGPが人気の国の人だ。はじめて日本に来たときの印象をこんな風にユーモアを交えて語ってくれた。

あくなき競争心と向上心

「町を走ってるクルマがあまりにも遅くて驚いた。こんなんじゃ日本からは絶対にF1ドライバーは生まれないよっ!て。イタリア人はみんなもっとやんちゃ。そして子供の頃から競争心をもっている。最初は自転車で、次にバイクに乗って。地元でめっちゃ速いといわれるようになったら、隣町の速いやつと夜中に競走する。そこにまた速いやつがいたりして、もっと速くなりたいって思う。

やんちゃな人たちは、警察に追われても逃げきれたらオッケーで、見事にかわしたら、あいつすごいな、運転上手だなってなる。日本じゃ危険だしあり得ないですけど、イタリアだとそんな人も多いですね」“道がクルマをつくる”という言葉があるが、まさにそれは言い得て妙だ。



競走馬に乗ることとモーター・サイクルに乗ることには共通した感覚があるという。もっとも大切なのは体重移動だ。運転がうまくなるために必要なことはと聞いてみると、

「上手くなりたいという向上心を持ち続けること。そして、とにかくいっぱい、いっぱい練習すること。僕は3歳のときから馬に乗っているけど、いまだに馬のことが大好きだし、もっと速く走りたいと思っている」

この取材の前日は、日本ダービーだった。コスモキュランダに騎乗したデムーロさんは惜しくも6着。勝利したのは横山典弘騎手が駆るダノンデサイルだった。横山騎手は56歳、日本ダービー&JRA・G1最年長勝利記録を更新した。

「56歳でダービーに勝った。すごいよね、年齢じゃないんだよ。競馬は、レース結果のほとんどが馬の実力で決まります。でもジョッキーの腕も、運もすべてがうまくいかないと勝てない。実力があっても勝てない。すごく難しい。でもだから勝てたときは最高にうれしい」



デムーロさんはいま45歳、勝利への、そしてスピードへの探求心は、いまだ衰えることを知らない。

「ウルスもウラカンも300km/h出ると思う。そこが素晴らしい。僕が乗ってたレヴァンテはちょっと厳しい(笑)」

どうやらデムーロさんのいいクルマの基準のひとつには、300km/hで走れるか否かがあるようだ。

スピードとデザイン

デムーロさんがイタリア車を好きな理由はいたってシンプル。「やっぱりスピードね、飛ばしたら気持ちいいじゃない。あとはカタチ。見てよこのランボルギーニ2台、めちゃくちゃカッコいいじゃない」

ではイタリア人にとってランボルギーニとは、どんな存在なのか。

「フェラーリとランボルギーニはやっぱり特別。フェラーリはやっぱりF1のイメージ。ランボルギーニはコルサ(競走)のイメージはあまりないけど、実際に乗ってみるとやっぱり特にエンジンがレースカーのようだね」



近年はランボルギーニもウラカンのGT3マシンをつくって日本のスーパーGTをはじめ世界のGT選手権で活躍していること。さらに今年からはLMDh車両であるSC63を投入し、世界耐久選手権(WEC)とIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権に参戦していることを話すと、なるほどとコルサ・モードの存在に納得がいったようだった。

生来のスピードスター

「フェラーリは最後に乗るクルマ、ランボルギーニはもう少し若々しいイメージがあるかな。イタリア人は若くて元気なうちにランボルギーニに乗って、年を取ったらフェラーリみたいな感じ」

デムーロさんは以前ローマでアウディR8に乗っていたことがあるという。所有したクルマの中でも歴代でお気に入りの1台だったと話す。実はウラカンとは兄弟車だと説明するととても驚いていた。無意識のうちにエンジンの気持ちよさに共通点を感じていたようだ。

撮影を終えて都内への帰り際、ウラカンの運転席に乗り込むと「競走する?」と屈託のない笑顔をみせる。日がな一日デムーロさんと過ごしていると、イタリア人はカッコよくて速いクルマと、美しい女性を愛するDNAを生まれもって備えている、という話があながち誇張ではないとよくわかる。陽気で明るくて、根っからのスピードスターなのだ。

文=藤野太一 写真=茂呂幸正



■ランボルギーニ・ウルスS
駆動方式 縦置きエンジン4輪駆動
全長×全幅×全高 5112×2018×1638mm
ホイールベース 3003mm
車両重量 2197kg
エンジン V型8気筒DOHCツインターボ
排気量 3996cc
最高出力 666ps/6000rpm
最大トルク 850Nm/2300~6000rpm
変速機 8段デュアルクラッチ式自動MT
サスペンション 前 マルチリンク/エア
サスペンション 後 マルチリンク/エア
ブレーキ 前&後 通気冷却式ディスク
タイヤ 前/後 285/35ZR23 325/30ZR23
車両本体価格 2852万801円

■ランボルギーニ・ウラカン・テクニカ
駆動方式 ミドシップ縦置きエンジン後輪駆動
全長×全幅×全高 4567×1933×1165mm
ホイールベース 2620mm
車両重量 1590kg(車検証)
エンジン V型10気筒DOHC
排気量 5204cc
最高出力 640ps/8000rpm
最大トルク 565Nm/6500rpm
変速機 7段デュアルクラッチ式自動MT
サスペンション 前 ダブルウィッシュボーン/コイル
サスペンション 後 ダブルウィッシュボーン/コイル
ブレーキ 前&後 通気冷却式ディスク
タイヤ 前/後 245/30ZR20 305/30ZR20
車両本体価格 2999万2917円

(ENGINE2024年8月号)

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