2024.08.21

CARS

ちょっと古いギブリに乗るマセラティ・ジャパンの木村隆之さん まさか憧れのガンディーニがデザインしたクルマに乗ることになるとは!

1998年型のマセラティ・ギブリとオーナーの木村さん。

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ネオクラシックがいい

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そしてクルマの持つ様々な側面に惹かれるようになった木村さんは、クルマ業界を目指すようになる。

「クルマって、人が家の次に大きなお金を使うものですよね。家の場合、とても大きな買い物なのでみんな合理的に、慎重に選びますが、クルマは私みたいに衝動的に何百万円も使う人がいる(笑)。それはマーケティング的にもとても面白く、仕掛け側もやりがいがある仕事だと思うんです。だから絶対自動車業界に行きたいと思っていました」



大学卒業後、木村さんはトヨタ自動車に入社。アメリカとヨーロッパに赴任したり、日本でのレクサスの立ち上げを行ったりした後、日産の海外法人の社長などを経て2014年にボルボ・カー・ジャパンの社長に就任。21年からはマセラティ・ジャパン社長、アジア・パシフィック統括責任者として手腕を振るっている。

その間にも様々なクルマを乗り継いできた木村さんだが、ボルボ時代にはクーペのP1800、ワゴンのP1800ESを所有。その流れで横浜にボルボのクラシック・ガレージを立ち上げた実績もお持ちだ。

「昔から古いクルマは好きだったのですが、海外勤務をしている時は機会がなかった。それで日本に戻って腰を落ち着ける話になって、そろそろいいかなと……」

そう聞くと、木村さんが敢えてギブリを手に入れたのも納得がいく。

新車同然のエンジン・ルーム、使用感が感じられない内装など、素晴らしいコンディションを誇る奇跡の1台。

就任してまず「最新のモノに乗っておかないと」という思いからグレカーレを「お客様優先で1年2カ月待って」買った木村さんは、マセラティ・クラブ・オブ・ジャパンに入会。続いて次の照準を古いマセラティに定めたものの、どのモデルを選ぶべきか? という難問に行き当たった。

「さすがにノン・パワステ、ノン・エアコンは辛いので、ネオクラシックがいいと思ったものの、ビトゥルボは危ういし、3200GTはジウジアーロでカッコいいけど、突き抜けてモダンすぎるし……」

マセラティにしかない世界観

そんな時に木村さんの目に止まったのが、東京・世田谷のコレッツィオーネにあったギブリだった。

「買う気はなく、取り敢えず見てみようと。そしたらこれが凄く良い。最終モデルで相当良くなっているという話を聞いたのと、この個体のボディ剛性が凄く良いのが決め手でした。早速買ったその足でマセラティ目黒に挨拶に行ってすぐ納車整備をお願いした(笑)。というのもガレーヂ伊太利屋時代からの詳しいメカニックが1人、残っているんです」



そこで3カ月ほどかけ、じっくりとメンテナンスを施したこともあり、木村さんのギブリは機関も快調でエアコンもよく効き、内外装も驚くほど綺麗に保たれている。

「これまでマセラティに乗ったことがなく、性能にも偏見を持っていました(笑)。でもいい意味で裏切られた。マセラティってクルマ自体がめちゃくちゃビシッとしてる。よく躾けられ、チューニングされている。それは最新のグレカーレでは特に感じます。さすがはイタリアのモーターバレー出身だなと。ギブリはそういう伝統や味を受け継ぎながら、しっとり感もあって、よく走るんです」

「前オーナーがオーディオ・マニアだったのか良いスピーカーがついていて、音が素晴らしいのも気に入っています」

それに加えてマセラティにしかない世界観にも大いに魅せられていると木村さんはいう。

「イタリア人にしか作れないデザイン、クラフトマンシップ、とかそういう感性に訴えるものがマセラティにはある。ラグジュアリーって、クルマもカバンも、技術だけでなくアートとか、クラフトマンシップの要素がないと認められない世界ですよね。そういう意味でもマセラティは稀有なポジションにいる。インパネの時計なんてビトゥルボがやって、自動車業界を変えるだけの勢いがあったでしょう。カッコいいだけじゃない、おおーっと感性に響くものがある。イタリア人のああいう人の心をつかむ上手さというのかな。今年マセラティは創業110周年を迎えますが、こんな良いヘリテイジのあるブランドを今からじゃ作れない。そういう意味でも歴史は大事にしていきたい」

文=藤原よしお 写真=筒井義昭



(ENGINE2024年8月号)

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