2024.08.20

CARS

打倒メルセデAMG E63 & アウディRS6 BMW M5ツーリングが727psのPHEV で14年ぶりに復活 

2024年8月15日、BMWは、米国カリフォルニア州で開催されているモンテレー・カー・ウィーク2024の中心イベントのひとつである「ペブルビーチ・オートモーティブ・ウィーク」の会場で、新型「BMW M5ツーリング」をワールドプレミア(=世界初公開)した。

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M5ツーリングの設定は3世代ぶり

約14年、3世代ぶりに復活した新型M5ツーリングは、1992〜95年に生産されたE34/5S型と呼ばれる3代目5シリーズと、2007〜10年に生産された5代目のE61型に続き3世代目となる。今回は、7月にグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードで世界初公開された新型M5セダンの北米プレミアと合わせて、新型M5ツーリングも実車が公開された。



プラグイン・ハイブリッドをチョイス

電動化を推進しているBMWは、新型5シリーズ・セダンとツーリングに電気自動車=バッテリーEV(BEV)の「i5」をラインアップしているが、M5ではプラグイン・ハイブリッド(PHEV)をチョイスしてきた。メルセデスAMGも続々とPHEVを投入。フェラーリやランボルギーニといったスーパースポーツ系ブランドもPHEVが主流になりつつある。現時点で欧州ブランドの多くは、電動化時代のハイパフォーマンス・カーの最適解をPHEVと考えているのだ。

「G91」の開発コードを持つ新型M5ツーリングは、全長×全幅×全高=5096×1970×1516mmで、全長と全幅は新型M5セダンと共通だが、全高は6mmだけ高くなっている。3006mmのホイールベースと前1684mm、後1660mmのトレッドはセダンと同じだ。



M専用の内外装

エクステリアは、水平方向のスリットが特徴的な意匠でアイコニックなLEDイルミネーションを備えたMキドニー・グリルや、大開口のエア・インテーク・グリルを備えたフロント・バンパー、大胆に広げられた前後ワイド・フェンダー、力強く伸びやかなショルダー・ライン、ソリッドブラックのルーフ、特徴的な形状のルーフ・スポイラー、左右各2本出しのエグゾースト・エンドと一体でデザインされたディフューザー形状のリア・バンパーなどによって、極めてダイナミックで獰猛なルックスに仕立てられている。

インテリアには、12時の位置にレッドのマーカーをあしらったMレザー・ステアリング・ホイールや、メリノレザーのMマルチファンクション・シート、Mモデル専用の表示デザインを採用したBMWカーブド・ディスプレイ、Mモデル専用のレイアウトで様々な情報をフロント・ガラスに投影するBMWヘッドアップ・ディスプレイなどを装備。最新世代のBMW iDriveはBMWオペレーティングシステム8.5を採用し、直感的な操作でMセットアップ・メニューにアクセスできる。



4.4リッターV8ツインターボ+1モーター

ハイブリッドのパワートレインは、ツインスクロール・ターボチャージャーや、最大350バールの噴射圧を実現した直噴システム、可変バルブタイミング機構であるバルブトロニック、可変カムシャフト・タイミング機構のダブルVANOS(ヴァノス)などにより、最高出力585㎰/5600-6500rpm、最大トルク750Nm/1800-5400rpmのスペックを実現した4.4リッターV8ツインターボに、197㎰と280Nmを発揮し、プレギアリング・ステージによりトランスミッション入力時の有効トルクを450Nmまで増大させることを可能にした永久磁石式同期モーターを組み込んだ、ドライブ・ロジック付き8段ATのMステップトロニック・トランスミッションで構成される、XM譲りの「Mハイブリッドシステム」を搭載する。

システム合計出力で727ps/1000Nmもの超高性能を実現した新型M5ツーリングは、0-100km/h加速が3.6秒、0-200km/h加速は11.1秒という卓越した加速性能を実現。最高速度は250kmでリミッターが作動するが、オプションのMドライバーズ・パッケージを選択すれば305km/hに引き上げられる。



最大67kmのEV走行も可能

車両重量は2475kg。PHEVになったことで先代(F90)より約500kg重くなった新型M5セダンよりさらに40kg重いため、加速性能はセダン(0-100km/h加速3.5秒)に若干劣る。とはいえ、それでもハイパフォーマンス・ワゴンとして文句ないパフォーマンスを備えていることに違いはない。

車両後部に搭載されるリチウムイオン・バッテリーは、グロスで22.1kWh、ネットで18.1kWhの蓄電容量を持ち、EV走行時にはWLTPモードで最大67kmの航続距離を実現。最高140km/hまで電気モーターのみで走行できるので、街乗りから高速道路まで、短距離の移動であればBEV的な使用も可能だ。ちなみに充電は、欧州仕様については最大11kWのAC(交流)充電のみで、DC(直流)急速充電には対応していない。



後輪操舵をはじめ、最新のシャシーを持つ

シャシーには、アクティブMディファレンシャルや後輪操舵システムのインテグラル・アクティブ・ステアリング、可変ダンパーのアダプティブMサスペンション、フロント・サブ・フレームにボルトで接続された可変ギアレシオ・ステアリング・システムのMサーボトロニック・ステアリング、2段階のペダル・フィールとレスポンスを設定したインテグラル・ブレーキング・システムなどを採用。Mモデルならではのダイナミックなパフォーマンスと、ロングドライブにおける快適性を、高レベルでバランスさせた。

5月にオーストリアのザルツブルクリンクで、M5セダンのプロトタイプに試乗した筆者としては、新型M5ツーリングは非常にGT性能を備えた快速スポーツワゴンになっていると想像する。なお、欧州市場では2024年11月に発売される予定で、日本上陸は年明けになる模様だ。

興味深いのは、通常モデルの新型5シリーズ・ツーリングおよびBEVのi5ツーリングは北米市場で販売されないが、新型M5ツーリングは、今回、北米のペブルビーチでワールドプレミアとなったことからも分かるように、北米市場へ導入される。間もなく追加されると噂されている、こちらもPHEVの線が濃厚な次期「メルセデスAMG E63ステーションワゴン」と、BEVになると言われている次期「アウディRS6アバント」と、新型M5ツーリングは三つ巴で激しいバトルを世界中で繰り広げることになりそうだ。



文=竹花寿実

(ENGINE WEBオリジナル)

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