2024.12.07

CARS

アストン・マーティンの旗艦、ヴァンキッシュに自動車評論家の大谷達也が試乗 スーパー・スポーツカーとアストン・マーティンとの決定的な違いとは?

最高出力835psの新開発V12エンジンを積むアストン・マーティン・ヴァンキッシュ

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決定的な違い

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そのことはエンジン音にも表れている。たとえば市街地や高速道路を軽く流しているとき、アストン・マーティンが新たに開発したV12エンジンはその存在を隠しているかのごとく、エグゾースト・ノイズは控えめで穏やかに回り続ける。そして、そういった速度域でも実に従順で扱い易い特性に躾けられていることは特筆すべきだろう。

ステアリングの意匠などはDB12と近しいが、中央コンソールの造形などはさらに凝ったもので、DB12とは大きく異なる。


とはいえ、ひとたびスロットル・ペダルを深く踏み込めば、どんな速度域からでも驚くべきレスポンスとパワーを発揮して、エレガントなデザインのフロント・エンジン・クーペを力強く加速させていく。そんなときには「クォーッ!」というV12エンジンらしい咆吼を控えめに響かせるとともに、やはりV12でしか味わえないスムーズで規則正しいビートを刻んでドライバーの心を高揚させてくれるが、荒々しさや押しつけがましいところは一切なし。この辺が、いわゆるスーパー・スポーツカーとアストン・マーティンとの決定的な違いといっていい。



だからといってワインディング・ロードが退屈なわけでもなく、走行モードをスポーツ・プラスに切り替えれば、どんなハード・コーナリングでもロールをしっかり抑え込むダンピングをサスペンションが生み出し、安定したフォームを保ったままコーナーを駆け抜けていく。しかも、ナチュラルかつリニアリティに優れたハンドリングは慣れるのに時間を要さず、ひとつめのコーナーから自信を持ってステアリングを切り込んでいけるほど優れている。



いっぽうで、タイヤを限界まで追い込む走りをしなくても深い満足感が味わえるのも興味深いところ。ロータス出身のエンジニア氏は「サーキットを走らせても実に楽しい」というが、そんなポテンシャルを内に秘めながらも、ワインディング・ロードやハイウェイを適度なペースで走り続けるとき、ヴァンキッシュは最良の一面を発揮するように思える。

最新のインフォテイメント・システムを備えたキャビンの作りは上質かつ品がいい。それはエクステリア・デザインにも共通していて、無駄な装飾は持たないのに質の高さや育ちのよさがそこはかとなく漂ってくる。ぜいたくな作りの新開発V12エンジンを積んでいても、決してそのパワーや存在感をひけらかすことなく、あくまでもエレガントな振る舞いに徹するヴァンキッシュは、英国貴族の矜持をいまに伝えるアストン・マーティンらしいグランドツアラーといえるだろう。

文=大谷達也 写真=アストン・マーティン



■アストン・マーティン・ヴァンキッシュ
駆動方式 フロント縦置きエンジン後輪駆動
全長×全幅×全高 4850×2044×1290mm
ホイールベース 2885mm
トレッド(前/後) 1680/1670mm
車両重量 1910kg
エンジン形式 水冷V型12気筒DOHCターボ
排気量 5204cc
最高出力 835ps/6500rpm
最大トルク 1000Nm/2500-5000rpm
トランスミッション 8段AT
サスペンション(前) ダブルウィッシュボーン+コイル
       (後) マルチリンク+コイル
ブレーキ(前後) 通気冷却式ディスク
タイヤ(前/後) 275/35ZR21/325/30ZR21
車両本体価格 非公開

(ENGINE2025年1月号)

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