令和7年4月1日からMT免許の教習カリキュラムが大幅に見直される。教習内容だけでなく、教習料金も変更となる。この記事では、元教習所指導員の視点から、新しいMT免許のカリキュラムがどのように変更されるのか、教習料金への影響、そして実際の運転にどのような影響があるのかをが解説する。
令和7年4月1日からMT免許の教習課程が大幅変更 令和7年4月1日より、全国の指定自動車教習所における普通車MT免許の教習課程が大幅に変更される。
これまでMT免許を取得する際は、最初から最後までMT車で教習を受けるのが原則だった。新しいカリキュラムでは、AT車での教習を先に行い、その後MT車の場内(教習所内)教習を受ける流れに変更される。つまり、AT限定免許の教習に「限定解除」の教習が組み合わされたものが、今後のMT免許教習の標準形となるということだ。
MT免許を取得するために教習所に入校した場合でも、路上教習はAT車のみとなり、MT車での路上経験のないままMT免許を取得することになる。
MT免許の新カリキュラムへの移行期間の対応 警察庁の通達によると、全国一律で新しいカリキュラムへの移行が定められているが、教習所では、旧カリキュラムから新カリキュラムへの移行数を最小限にしようとしているようだ。
教習所に新カリキュラムへの移行について聞いてみると、「新しいカリキュラムになっても従来の方法をしばらく継続する」や「新しいカリキュラムへの移行時期を検討しており、いつ移行するかは答えられない」という回答だった。また、ホームページ上で「新カリキュラムへの移行に伴い、MT免許の入校を一時的に停止しております」という教習所もある。
つまり、令和7年4月1日からMT免許の新しいカリキュラムが始まるものの、移行対応や導入時期は教習所ごとに異なるため、教習を始めたい方は事前の確認が必要だ。
カリキュラム変更に伴う料金の改定 MT免許のカリキュラム変更に伴い、教習料金も変更される。ホームページ上で新たなカリキュラムへの変更のお知らせを公表している教習所では、「大幅な料金改定があり、MT免許取得にかかる料金が値上がりします」と書かれている。
新しいカリキュラムへ変更された場合、料金も変更されることは明らかだ。具体的にどのくらい料金が変わるのかは教習所によって異なる。
新カリキュラムがMT車運転に与える影響 今回のカリキュラム変更で最も大きなポイントは、MT車での路上教習がなくなるという点だ。
MT免許を取得する際にAT車で教習が多くなると、MT車の運転操作の基礎でより苦労する可能性が高くなるのではないかと筆者は考えている。新しいカリキュラムでMT免許を取得した人が、初めて一般道でMT車を運転する際に、「エンスト」や「発信時の手間取り」を多発してしまうのではないだろうか。また、場内教習では1速〜2速での走行が中心で、一般道を走行する際に必要となる3速以上のギア操作の練習ができない点も見逃せない。
MT車の運転では速度に応じてギアを選べるということがポイントであり大きなメリットでもある。速度に応じたギア選びができないままMT免許を取得することになるため、運転操作に不安を抱える方が増える可能性は否定できない。
免許取得後、別途「実地練習」が必要になる可能性
新カリキュラムでMT免許を取得した場合、教習中にMT車で一般道を走る経験がないまま卒業することになる。
免許取得後すぐにMT車を一般道で走らせることができるかは未知数ではあるが、筆者は免許取得直後にMT車で路上を難なく走れる可能性は低いのではないかと思っている。
これまでのカリキュラムでは、卒業時にはある程度MT車の運転に慣れた状態で免許を取得できたが、新カリキュラムでは免許取得後の自主練習が前提となるかもしれない。
スムーズな免許取得か、確実な技能取得かAT車が主流となった日本において、今回のMT免許カリキュラム変更は、教習がスムーズに進み、効率よく運転免許の取得ができるようになる可能性は高い。
しかし、運転の基礎を学び、安全な運転者の育成という教習所の本来の目的で考えると、従来のMT免許の教習課程(MT免許で入校した場合は原則として最初から最後までMT車で教習)の方が運転技術の習得という意味では優れていたとも言えるのではないだろうか。
文=齊藤優太
(ENGINE Web オリジナル)