へリボーン・ギヤをイメージした創業当時のエンブレムをモチーフとした新しいコーポレート・ブランド・アイデンティティとロゴを2020年に発表したシトロエン。以降、新たなスタイルの構築を目指している中で、中核車種の1つとなる「C4」のマイナーチェンジ・モデルの日本導入が開始された。
新しいデザインを紐解くそれにともない、その新しいデザインを紐解く「Citroen New C4 Master Class Design」と題したプレゼンテーションが、パリのデザイン・スタジオと繋いで行われた。プレゼンターを務めたのは、6年前からシトロエンのチーフ・デザインオフィサーを務めるピエール・ルクレール氏と、カラー&マテリアルデザイナーの柳沢知恵氏のふたり。
新たなデザイン言語の構築6年前にシトロエンのデザイナーに就任した時、ルクレール氏にはデザインのリセットボタンを押し、様々なブランドを抱えるステランティス・グループにあって、シトロエンとしての新たなデザイン言語を構築することが求められた。具体的にはそれまでの流行に則った「ボディに丸いラインを多用し、多彩なカラーバリエーションを用意する」というデザインから、他のライバルとの競争力を高めるものへの脱却が求められたのだ。
その変革の過程で、過去のデザインを振り返ったルクレール氏は「世間に一石を投じるデザインの新しい言語を構築」してきたのがシトロエンの特徴である反面「一目でシトロエンとわかるアイコニックかつ、シンプルでスッキリとしたボディ表現」を守っていくことも大事だということに気がついたという。
直線を組み合わせるそこで新時代のシトロエン・デザインでは、ただ丸いだけでなく直線を組み合わせることでコントラストを生み出し、エクステリアには豊かな形状、インテリアには居心地のいい空間を実現するとともに、軽やかに見せることにも留意したそうだ。
そうした経緯を踏まえて欧州のCセグメントで2位のセールスを誇るC4のデザインを見直すと、様々なラインや面が交錯し「複雑」という印象があったと、ルクレール氏は率直に話す。そこで彼は新しいデザイン言語を取り入れながら「大胆で、力強く、シンプル」にリファインすることを心がけた。
3つのLEDライトその最大の特徴といえるのが、新しいアイデンティティとなる3つのLEDライトでホリゾンタル(水平的)に配置することで、クルマがワイドに見えるようデザインされている。加えて新デザインのブランドロゴはバーチカル(垂直的)に配置することで、誇り高さを表現する、シトロエンの「新しい顔」に生まれ変わった。
リア・ビューもフロントに呼応して3つのLEDライトを配置するとともに、シンプルにすることを心がけることでキャラクターラインが整理され、ホリゾンタルでスッキリとした印象に変わった。ルクレール氏によると、前後のデザインに統一性があることも重要な要素であるそうだ。
シートも刷新また、これまでブラックアウトされていたボディ下側にまでボディ・カラー部分が伸びたことで、ホリゾンタルなデザインとともに、よりどっしりとした印象を与えることに成功している。余談だが、足元のホイールも形状こそは変わっていないように見えるものの、空気抵抗を減らした新しいものとなっている。
インテリアに関しては、メーターナセルのディスプレイが5インチから7インチに変わり、視認性がアップしたことが最大の特徴。また「C3」、「C3クロス」と同じ「チョコレート・タブレット」と呼ぶ四角い模様のついたアドバンスト・コンフォート・シートが採用されたのも新型の特徴で、インナーのクッションが15mmと厚く、座り心地がいいことを含め、ルクレール氏のお気に入りだ。
日本仕様初のハイブリッドそんな新型C4のトピックの1つが、日本に導入されるシトロエンとして初めてハイブリッド・モデルとなったことだ。タイミングベルトからタイミングチェーンに変更することで耐久性の向上を図った専用のEB21LT型1.2リッター直列3気筒ガソリン・ターボと、48Vで最高出力29ps(21kW)の電気モーターを組み合わせることで、システム最大145psを発生。30m/hまではモーターのみの走行が可能なほか、80~120km/hの高速走行では再加速時にモーターがアシストすることで、ターボラグ極力まで少なくする機能も備わっている。
そこに組み合わせるトランスミッションは滑らかかつ素早いシフトチェンジを可能とする湿式デュアルクラッチ6段AT。燃費はWLTCモードで、クラス最高の23.2km/リッターを誇るのも特徴である。
これまでのC4の美点はそのままもちろん、ダンパーinダンパーの「プログレッシブ・ハイドローリック・クッション」(PHC)がもたらす、極上な乗り心地のサスペンション、最新のインフォテイメント・システム、そしてアクティブ・クルーズコントロール、アクティブ・セーフティブレーキ(被害軽減ブレーキ)をはじめとするADAS(先進運転支援システム)も搭載するなど、これまでのC4の美点はそのまま。
さらに新しいC4には、ルージュエリクシールという赤、ブランオケニトゥという白に加え、新色としてブルーエクリプスという濃い青、そしてルクレール氏もお気に入りのマンハッタングリーンというカーキグレーに似た4色をボディ・カラーに用意されており、気になる価格は432万円(税別)となっている。

文=藤原よしお
(ENGINE WEBオリジナル)