2025.04.18

CARS

「GTAを駆ったときの胸のトキメキが甦った」と島崎七生人(モータージャーナリスト)が思わずウルっときたクルマとは? 上半期注目の5台の輸入車にイッキ乗り!

島崎七生人さんが乗ったのは、ランボルギーニ・レヴエルト、ヒョンデ・アイオニック5ラウンジ、キャデラックXT4、アルファ・ロメオ・ジュリア・クアドリフォリオ、アバルト500eツーリズモ・カブリオレの5台

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今年も乗りまくりました2025年版「エンジン・ガイシャ大試乗会」。各メーカーがこの上半期にイチオシする総勢33台の輸入車に33人のモータージャーナリストが試乗! 

島崎七生人さんが乗ったのは、ランボルギーニ・レヴエルト、ヒョンデ・アイオニック5ラウンジ、キャデラックXT4、アルファ・ロメオ・ジュリア・クアドリフォリオ、アバルト500eツーリズモ・カブリオレの5台だ!

ランボルギーニ・レヴエルト「
日常の中にある非日常」

誤解を恐れずに言えば、昔のスーパーカーのような、速度を高めれば高めるほど空を飛ぶか空中分解でもしそうなイメージは微塵もない。時代の進化とはそういうもので、当然といえば当然のことだが、ランボルギーニ・レヴエルトには、とにもかくにも現代のスーパーカーとは、これほどまでに完璧な仕上がりぶりなのか! と驚かされることしきり、だ。

ランボルギーニ・レヴエルト

カーボン・モノコックのいつもの平べったいボディながら、乗り込みはいたってスムースに可能だし、案外と優しい感触のシートに収まりポジションを取ってみても、視界は良好、駐車時などの取り回しも車高の低さを除けばまったくストレスはない。1人なら、スーパーでレジ袋が2つになっても助手席に載せればよいから毎日の買い物にだって使える。

ランボルギーニ・レヴエルト

……とまあ、気楽なことを書いているのも、このクルマの存在が日常の中にある非日常そのものだから。6.5リットルのV12+8段DCTに3基の電気モーターを組み合わせたハイブリッド・ハイパフォーマンスEVとは! ヤルなぁ、の意欲作。

ヒョンデ・アイオニック5ラウンジ「より品質感がアップ」

2024年に登場したアイオニック5Nは、試乗してみると実にヴィヴィッドな走りで、いかにもクルマ好きのカーガイが作ったのだろう……と想像ができた。が、ごく個人的な嗜好でいうと、ヤル気満々なあのルックスや高い動力性能ではなくとも、フツウのアイオニック5でも十二分。EVはどれだけ快適に、穏やかに、神経を逆撫でされることなくドライブが楽しめるかどうかを価値としたい。

ヒョンデ・アイオニック5ラウンジ

試乗車は2024年11月登場のアップデート版で、電池容量の増大(72.6→84kWh)、モーター出力の向上(前:70→74kW/後:155→165kW)を見たほか、ADAS系の性能向上などの改良(一部は昨年の5Nに入っていたのだそう)も。

ヒョンデ・アイオニック5ラウンジ

で、走らせた印象は、より品質感がアップしたというべきか。2022年4月の導入時には、何となくクルマ全体のザワザワ感を感じたものだが、今やそれらがスッキリと消え、乗り味もステアリング・フィールも音も振動の具合もより磨きがかけられ“いいモノ感”が向上した。ステアリング・ホイールはスポーク形状(と本数)が新しい。

キャデラックXT4「いかにもキャデラック流」

目下のキャデラックのSUVラインアップは、エスカレードを筆頭に、XT6、XT5、XT4が用意される。この中でXT4はもっとも身近なモデルであり、2リットル直列4気筒の直噴ターボ(230ps/350Nm)を搭載。

キャデラックXT4

ボディ・サイズは全長4605mm×全幅1875mm×全高1625mm、メーカー希望小売価格は790万円とそれなりだが……などと、輸入車アルバムの原稿であれば、そんな紹介から始めるところ。いずれにしてもこのクルマの魅力は “手頃なキャデラック”というところに尽きると思う。

試乗車は初対面の2024年12月から導入されたマイナーチェンジ版だったが、ユニークな33インチのカーブした(平面ではない)ディスプレイの採用に「ほほぉ」と思わされた。いかにもキャデラック流の上質感の表現である。

キャデラックXT4

それとADAS関連の警告がブザーなどではなく、運転席のシートをブルルルと震わすところも、ドライブ中の雰囲気に水をささない。走りや乗り味そのものも理屈抜きで穏やか、なめらかなもので、人と違うSUVをという人なら候補に挙げていい。

アルファ・ロメオ・ジュリア・クアドリフォリオ「GTAのトキメキが甦る」

時流に乗って(?)、アルファ・ロメオはこのジュリア以外はSUVばかりとなってしまった。もちろんトナーレもステルヴィオも乗ればアルファ・ロメオで何ら不満はないのだが……やはりアルファ・ロメオというからには……セダンやクーペに乗りたいところ。

アルファ・ロメオ・ジュリア・クアドリフォリオ

そこでこのセダンのジュリアとなるが、現状で用意されるのは4気筒2リットルターボのヴェローチェと、試乗車のクアドリフォリオ。自分で貼ったステッカーじゃない標準の立派な四つ葉のエンブレムだけでも心弾むが、19インチのピレリPゼロ・コルサと赤いブレーキ・キャリパーが覗くホイールで足元を引き締めた姿は、いかにも精悍な佇まい。

アルファ・ロメオ・ジュリア・クアドリフォリオ

2891ccのV6ツイン・ターボは実に510ps/600Nmのスペックを持ち、アクセルを踏み込めば踏み込むほど、どこまでも“もっと走れ!”とドライバーを鼓舞してくる。

僕は限界を攻めるタイプではないので、そんなメッセージを感じただけでも十分だが、かつてのV6を搭載した156GTAを駆ったときの胸のトキメキが甦った。

アバルト500eツーリズモ・カブリオレ「大人の遊びグルマ」

ICEの695、F595は目下のディーラー在庫車限りというのはベースの500と同様だ。

最低限だけスペックの話をすると、500eもアバルト500eも搭載するリチウムイオン・バッテリーの容量は同じ42kWhだが、最高出力/最大トルクは155ps/235Nm(500eは118ps/220Nm)と500eに対しアバルトのほうが数値が大きく、当然ながら一充電走行距離(WLTCモード)は、500eオープンの335kmに対してアバルト500eのカブリオレは294km。この41kmの差分がアバルトとしての走りに使われていることになる。

アバルト500eツーリズモ・カブリオレ

が、走りに関してはもともと500eもアクセルをグイと踏み込めばスウーッ! とEVらしい強力な加速を示すから、アバルトの体感上の差、スゴさは個人的には微妙な気もする。が、ICEの最初の頃のアバルト500のあのスパルタンだった乗り味に較べればアバルト500eの足まわりは遥かにアタリが優しいし、それでいながらヴォォォ……のレコード・モンツァのあの音を耳で楽しみながら走れば味わいはスポーツカーだし、大人の遊びグルマだと思う。

アバルト500eツーリズモ・カブリオレ

「夢の対価」島崎七生人から見た、いまのガイシャのここがスゴい!

自宅の2007年製のエコキュートがいつ寿命を迎えるかで目下ハラハラ、ドキドキさせられている我が家からすれば、近年のガイシャのどこがスゴイか? といえば車両本体価格である。

今回の担当試乗車でいえばランボルギーニ・レヴエルトなどベース車で6000万円超と超高額の部類で、我が家が2軒買えそうな勢いといってもいい。何ともため息交じりにスゴイとしか言いようがない。まあホウレンソウ1束、お米10kgの価格変動に較べれば支障はほぼないといえばそう。とはいえ最近は国産車の価格もそうだが、ガイシャの価格は、原稿を書きながら資料で見ているだけでもスゴイよなぁと思う。



だがそんなスゴイガイシャに乗りたいと思うのがクルマ好きのサガなのだろう。なぜなのか? きっと自分の夢の大きさの “対価”と考えるからだろう。額面の大小よりも、たとえ額面がスゴイものであっても、夢が叶うのならまったく構わないという訳だ。

文=島崎七生人

(ENGINE2025年4月号)

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