2025.07.05

CARS

男の秘密基地の匂いがプンプンする 1974年式ポルシェ911を自分でエンジンも下ろしてメンテナンス

東京の閑静な住宅街。白いシャッターが上がるとエンジン・フードを大きく開けた白いポルシェ911の前にはこのクルマから下ろされたと思われるエンジンが置かれていた。

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友人が買った964

さて、隣のあずき色の964型ポルシェ911が進木さんのところに来たのもちょっとしたエピソードがある。

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「これは91年式です。ラビットコーポレーションというショップが製作したものです。ご覧のようにリア・フェンダーが大きく張り出し、巨大なリア・ウィングも装着しています。正直に言うと自分の好みじゃないんですが、修理しているうちに少しずつ情がわいてきています」

ラビットコーポレーションが製作した91年式ポルシェ911。フロント・スポイラー、ゴールドのワイドホイール、巨大なリア・ウィング、そして大きく張り出した前後フェンダーなどにより威圧感がすごい。

この個体はもともと進木さんの友人が買ったもので、九州・大分のショップに預けっぱなしになっていたのだという。

「九州に取りに行ってくれないか?と頼まれたんです。家内と旅行がてら九州へ行き、自走で帰ってきました。しばらく家で預かっていると、友人から諸事情があり引き取れなくなった。助けると思って買い取ってくれないかと」

当時欲しいクルマがあって、そのためにガレージのスペースを用意していた進木さんだが、これも修業だと思い友人の申し出を受け入れたのだという。

「964はパワステのオイル漏れ、ABS不動、エアコンのガス漏れという三大疾患?があるんです。これを全部やりまして、所有してからも修業でした(笑)」



進木さんのガレージにある2台のポルシェ911は、本人がどうしても欲しいと思って手に入れたものではなく、偶然やってきたものだ。進木さんはポルシェ911に呼ばれた男なのである。

「74年式911の好きなところは回転落ちですね。どの回転域でもストンと落ちる。すごくバイクに似た反応なんです。自分でエンジンをいじるようになってわかったんですけど、ひとつひとつのパーツにレースからのフィードバックがあるんです。また工作精度も量産車ではありえないような高さになっています」

一方、964型には日常で使える敷居の低さがあるという。

「昔、86年式のメルセデス・ベンツ300TEに乗っていたことがあるんですけど、それと同じ匂いがします。この964に乗るとまったく疲れないですね。九州から帰ってきたときも疲労は感じませんでした。74年式はエンジンもトランスミッションもスポーツ方向に振ってあるので、疲れます。964はスポーツ方向というよりはラグジュアリー方向という感じです」

進木さんにとってポルシェとはなんですか?

「自分のストーリーそのものです」

これからも紡いでいってください。

文=荒井寿彦 写真=茂呂幸正

(ENGINE2025年6月号)

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