スズキがあまりの人気に一時受注を停止していた「ジムニー・ノマド」の増産を発表。ジムニー・シリーズに試乗した自動車評論家の国沢光宏が、増産に至るまでの背景と、どうやって転売目的での購入者へ対策をしたのかを考察する。
大人気のノマド、乗ったらどうなのか?
スズキからプレス・リリースが届いた。“新型ジムニー・ノマドの増産を開始”とある。御存知の方もいるだろうけれど、2025年4月3日に5ドアのノマドの発表したところ、瞬時に5万台という月販販売目標1200台からすると3年半分のオーダーを受け、受注停止していた。
そこでノマドの生産工場であるマルチ・スズキ・インディア社での現地生産を7月から月3300台に増産するという。

このニュース、多くのメディアでポジティブに伝えているが、少し掘り下げて考えてみたい。当然のことながら一番重要なのはクルマの魅力だ。
すでに納車が始まっており、読者の方から「乗ってみてくれませんか?」と連絡貰ったので味見してみたら「う〜ん!」。
オーナーも「こんなものですか?」。
パワー不足なのだった。考えてみたら(5段MT仕様の場合)1180kgのボディに102馬力の1.5リットルである。

イメージとしては軽ミニバンのターボなしのモデルや、ランクル250の2.7リットル・ガソリン・エンジン車といったあたり。クルマについての要求レベルが高くないユーザーなら問題ないと思う。

ただいろんなクルマを知っている人だと、なかなか厳しい。読者の方は輸入車をメインにしており、ノマドは奥様用に買ったという。その奥様も「パワーがない」と不満なんだとか。
当たり前のことながらクルマ好きのパートナーは普通の人より目が肥えている。読者の方も「この動力性能だと遠出する気にはなれません」。

少しノマドの援護をすると、頑張ってアクセルを踏めば必要レベルの動力性能は確保できている。とはいえ、確かに流れの乗ろうとするとアクセルをたくさん踏み込まなければならず、振動大きいエンジンの高回転域を使う。なんたってATは4段ですから。
そんなことから試乗して以後、クルマ好きから「ノマドを考えているけれどどうでしょうか?」と聞かれたら「試乗してから決めたらいいと思います」と答えている。

ただ、ここまで読んで「試乗してから決めたら納期は3年以上掛かる」と考える人もいることだろう。