2025.09.20

CARS

このクルマには、100年先も愛される建築のヒントが秘められている! 建築家が絶賛する「控えめで美しいデザイン」のクルマとは?

「控えめで美しいデザインだと思いませんか」。オーナーで建築家の佐竹永太郎さんは、取材の冒頭、そう切り出した。

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デザインのための技術

ランチア・フルヴィア・クーペは同社がフィアットの傘下に入る前の1965年に世に送りだされた、ランチア最後のオリジナル・モデルだ。ボディ・デザインは有名どころが手掛けたものではなく、社内デザイナーの仕事である。

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製作を指揮したのは主任設計者のアントニオ・フェッシア。戦前のフィアットで技術者として長く活躍し、フィアット500の担当技術者に、部下であるダンテ・ジアコーサを抜擢した人物だ。戦後ランチアに加わり、フラミニア、フラヴィア、フルヴィアの3モデルを手掛けた。フルヴィア・クーペの薄いフロント部の秘密を知ると、外観のデザイン担当者より、この主任技術者の名前が広く知られているのに納得する。

フルヴィア・クーペはラリーで活躍したこともあり、佐竹さんのクルマには通常の4灯に加え、フォグランプが2灯付いた状況で日本に。

そんな見どころ満載のフロント部に加え、リアの造形に対する佐竹さんの分析も興味深い。

「この時代のイタリア車は、後端が緩やかに下がっているのが普通でしょう。そこを、スパッと断ち落とした形で終えています。デザイナーは予定調和でなく、心に訴えるエモーショナルな形を選んだのではないでしょうか」



20代の頃からフルヴィア・クーペに憧れていた佐竹さんは、9年前にエンジ色のこのクルマを手に入れた。2011年までイタリアにあったこの1台は、イタリアの自動車遺産のゴールドメダルに登録され、当時の車検証も備えている。佐竹さんのもとに来て、走行距離は3万キロほど延びた。

「しかも、こう見えて4人乗りです。2人乗りだったら我が家の場合、妻か娘のどちらかが乗れなくなってしまいます。フルヴィア・クーペは、妻と娘に愛犬を加えた家族“4人”で出かけることができる、実用的なところも良いですね。トランクも広いですし。

近場のドライブだけでなく、クラシックカーのイベントにも随分と参加しました。色々な方のフルヴィア・クーペを拝見して、私のクルマは特に音がいいように思います」

ウッドパネルと白レザーのコントラストが上品だ。

ダッシュボードのウッドパネルが、ヴィンテージ家具のように経年変化して良い色合いになっているこのクルマ。入手後は通常の整備を行うだけで、どこも換えていないというが、60年前のクルマとは思えないほど素晴らしいコンディションだ。助手席に座って都内を少しドライブしたが、乗り心地も良い。

そんな佐竹さんの普段の足は、16年間乗っている1995年製のメルセデス・ベンツE320ワゴン(S124型)。旧いクルマの、2台持ち生活を送っている。

「模型を運ぶので、建築事務所にはワゴンが必要です。妻も運転するため、メルセデスを選びました。124型は、理想のクルマを追求して全てが合理的に作られた、メルセデスらしい最後のメルセデスではないでしょうか。ランチア・フルヴィア・クーペとは全く設計思想が違いますが、どちらも“良いクルマを作ろう”という情熱に共感を覚えます」

イタリア初の四輪ディスクブレーキを採用するなど、当時の最新の技術が使われている。

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