2025.09.20

CARS

このクルマには、100年先も愛される建築のヒントが秘められている! 建築家が絶賛する「控えめで美しいデザイン」のクルマとは?

「控えめで美しいデザインだと思いませんか」。オーナーで建築家の佐竹永太郎さんは、取材の冒頭、そう切り出した。

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歴史から学ぶ

佐竹さんの建築事務所入口のサロン(写真下)は、インテリアに古い建具や家具が使われた、雰囲気のある空間だ。クルマもインテリアも、旧いモノが好きなのには訳がある。

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「建築は、人間の寿命より長く使われることが少なくありません。では、百年先でも美しいと思われる建物を設計するにはどうしたら良いでしょう。今の我々にできるのは、歴史から学ぶことだと思っています。

子供の頃、家の近くに古い民家をリノベーションした建物がありました。日頃からよく訪れていたことで学んだことが随分とあります。建築家を志すようになったのも、学生時代に通学時の電車から、丹下健三が設計した国立代々木競技場が見えていたことが大きく影響しています」

古い建具や家具のある佐竹さんの事務所サロン。

時代が変わっても魅力が色褪せない優れた建築を、若い頃から数多く観てきた経験が、佐竹さんの建築には反映されているのだ。

もちろん、長い時間を共にしたフルヴィア・クーペを手放すことなど、佐竹さんは全く考えていない。他にデザインが好きなクルマを聞いてみると、こう答えた。

「スーパーカー・ブームがあったので、マルチェロ・ガンディーニがデザインしたクルマに随分と接してきました。その影響か、彼のデザインに強い魅力を感じます。もし一台というなら、フェラーリ308GT4でしょう。ランチア・ストラトスにも惹かれますが、控えめで美しいうえ4人乗れるGT4を選びます」

ホテル・旅館、別荘、納骨堂・葬儀場を中心に設計をしている佐竹さん。なかでもアーチ状の屋根が連なった白い別荘(写真下)は、海外のデザイン賞でグランプリを受賞するなど、国際的に評価が高い。

建築家・佐竹永太郎さんの代表的な仕事。アジアの著名なデザイン賞でグランプリを獲得した別荘。曲線が連なった屋根は、橋梁の構法を参照した木製。

「この別荘の屋根、実は木製です。17世紀に作られた、岩国の錦帯橋の建築技術を参考にしています。美しい形を実現させるため、高度な技術を用いているのは、フルヴィア・クーペと同じですね。また、ホテルなどのデザインは、幅広い層の利用者に喜んで頂けるよう、控えめで美しい意匠を心掛けています」

フルヴィア・クーペで出かけて、高速道路のパーキングエリアなどに停めていると、クルマに興味の無さそうなお年寄りやご婦人から「キレイなクルマですね」と、よく声を掛けられるそうだ。

「派手なスーパーカーに乗っていたら、そんなことはけっして起こらないでしょう。控えめな姿をしているからこそ、ランチア・フルヴィア・クーペの魅力が、クルマに詳しくない人たちにも伝わっているように思います。そんな愛車に通ずるような建築を、これからも手掛けていけたら嬉しいですね」

文=ジョー スズキ(デザイン・プロデューサー) 写真=茂呂幸正

(ENGINE2025年7月号)

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