2025.08.25

LIFESTYLE

その数なんとCD60枚! 名指揮者、カルロ・マリア・ジュリーニの没後20周年記念ボックスが発売 毎日1枚聴いても2カ月も楽しめる! 

■カルロ・マリア・ジュリーニ 没後20周年、オリジナル・マスターテープから最新リマスター音源による記念ボックス。未発表録音も含む60枚組。

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オペラと交響曲を両輪とし、偉大な歌手や器楽奏者から尊敬されたカルロ・マリア・ジュリーニ。その没後20周年にあたる今年、CD60枚組の記念ボックスが発売された。

命を捧げているような音楽作りが詰め込まれている

イタリアの名指揮者カルロ・マリア・ジュリーニは、私がもっとも敬愛する音楽家のひとりで、その音楽性にも人間性にも魅了され、演奏を聴くだけではなく、ぜひ実際に会って話を聞きたかった人である。機会があるごとにインタビューの希望を出していたにも拘わらず、どうしてもその機会がもてなかった。



1914年5月9日生まれ。少年時代を北イタリアのドイツ語圏ボルツァーノで過ごしたこともあり、ネイティブなドイツ語を話し、イタリア・オペラとともにドイツ系の交響曲などのレパートリーも得意とした。最初はヴァイオリンを習い、やがてヴィオラ奏者としてオーケストラで演奏し、1946年から指揮者としての活動を開始。ミラノ・スカラ座、ウィーン交響楽団、ロス・フィルなどの音楽監督(首席指揮者)を歴任し、ウィーン・フィル、ベルリン・フィル、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団などへの客演も多数行っている。

今年はそのジュリーニの没後20周年にあたり、スタジオ録音がリマスター音源(60枚)として登場。ここにはジュリーニの音楽に命を捧げているような真摯、純粋、高貴、高潔な音楽作りが詰め込まれ、毎日1枚聴いても2カ月楽しめるという豪華さだ。



ジュリーニは1984年以降、病気の夫人のそばを離れたくないという気持ちから海外での演奏を制限した。そのために来日公演もなくなり、私はイタリアの知人に、マエストロの自宅に行って話を聞くというチャンスを与えられるかもしれないといわれたが、結局それもかなわなかった。彼は1998年に引退を表明し、2005年6月14日に91歳で天に召されてしまった。いまとなっては残された録音を繰り返し聴くしかない。

ベートーヴェンの交響曲第7番、モーツァルトの歌劇「ドン・ジョヴァンニ」がおすすめ

ジュリーニは1969年から73年までシカゴ交響楽団の首席客演指揮者を務めている。就任当時55歳。ベートーヴェンの交響曲第7番は躍動感と生き生きとした新鮮な空気を漂わせ、ベートーヴェンの魂に寄り添うような演奏を聴かせている。とりわけ第2楽章がみずみずしく抒情的な表現で、心が奪われる。これは初演時に拍手が鳴りやまず、アンコールで演奏された楽章。ワーグナーが「不滅のアレグレット」と評した、ベートーヴェンのロマンあふれる傑作だ。

モーツァルトの歌劇「ドン・ジョヴァンニ」は若きジュリーニの統率力が際立つ演奏で、重厚さと軽快さが共存。シュヴァルツコップをはじめとする名歌手たちの快演が心をゆさぶる。フランスの実力派ヴァイオリニスト、ルノー・カピュソンは「ジュリーニには16 歳のときに出会い、“ヴァイオリニストではなく、音楽家であれ”という姿勢を暗黙のうちに叩き込まれました」と語る。まさにジュリーニこそ、真の音楽家だった。

文=伊熊よし子(音楽ジャーナリスト)

■カルロ・マリア・ジュリーニ
没後20周年、オリジナル・マスターテープから最新リマスター音源による記念ボックス。未発表録音も含む60枚組。フィルハーモニア管弦楽団、ロンドン・フィル、シカゴ交響楽団など強い絆で結ばれたオーケストラとの演奏。ピアニスト、チェリスト、歌手も歴史に名を残す名手がずらり。いずれも高い評価を得た録音で、オペラもシンフォニーも臨場感あふれ、ジュリーニの特質である豊かな歌心が満載。(ワーナー)

(ENGINE2025年9・10月号)

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