プレミアム・ミニバンの元祖としても知られる日産エルグランドが間もなく4代目となる。高級ミニバンという新しいカテゴリーを開拓したエルグランドは、どのような歴史を辿ってきたのだろうか。新型モデルが登場する前に歴代モデルを振り返ってみよう。
「キャラバン/ホーミー エルグランド」としてデビューした初代(E50系)
1997年5月19日、日産は最高級新世代1BOX「エルグランド」を発売した。「キャラバン/ホーミー エルグランド」の名称で販売された初代エルグランドの名を聞くと「懐かしい!」と思う人もいるだろう。

初代エルグランドは、高く構えた押し出し感あるメッキ処理が施されたフロントグリル、2段構えのヘッドランプ、ワイドな大型バンパー、ロングホイールベース&ショートオーバーハングの安定感あるスタイリングなどが特徴だ。

インテリアは、水平基調としながら流れるような面構成とすることで広がり感を演出。シートは厚くスクエアな形とすることで上質感や高級感ある仕上げとなっている。

発売当時のエンジンは、ディーゼルエンジン(QE32ETi)とガソリンエンジン(VG33E)の2種類。駆動方式は、2WD(FR)と4WD(オールモード4×4)。グレードは、7人乗りの「X」、8人乗りの「V」と「J」の3グレードだった。
存在感抜群のプレミアム・ミニバンとなった2代目エルグランド(E51系)
2002年5月21日、2代目となる「エルグランド」が発売された。

2代目では、「“夢”と“くつろぎ”と“感動”を提供できる最高級ミニバン」をコンセプトとし、ゆとりの室内空間、存在感あるスタイリング、走行性能などを進化させるだけでなく、最先端の情報技術などを取り入れることで、より利便性を向上させている。

リビングルームにいるようなゆったりとくつろげる空間を実現した2代目エルグランドでは、使い勝手の良いセカンドマルチセンターシートの採用により、多彩なシートアレンジを実現するとともに、8人乗りでもセカンドシートとサードシートのウォークスルーを可能としている。

スタイリングは、見るからに「エルグランド」とわかるワイドで押し出し感のあるフロントフェイス、大きな面で構成されたボディサイド、横一文字のリアコンビランプなどが特徴だ。

2代目エルグランドデビュー当初のエンジンは、3.5リッターV6(VQ35DE)エンジンのみだったが、後に2.5リッターV6エンジンが追加された。駆動方式は、初代と同じく、2WD(FR)と4WD(オールモード4×4)だ。

また、2代目エルグランドでは、日産のカーナビシステム「カーウイングス」や、今では当たり前となっているスマートキーシステム「インテリジェントキー」といった便利な技術も採用していることもトピックだった。
【2代目エルグランドの主なスペック】
・全長:4835mm
・全幅:1795mm〜1815mm
・全高:1910mm
・エンジン:V6(3.5リッターと2.5リッター)
・駆動方式:2WD(FR)、4WD
・2代目発売時の価格:289万円〜450万円
デザインと走りを両立させつつFFとなった3代目エルグランド(E52系)
2010年8月4日、3代目となるエルグランドが発売された。

3代目では、エルグランドらしい風格を感じさせるエクステリア、ドライバーを高揚させ同乗者へのもてなし感にあふれたインテリアに加え、意のままの走りとクラストップレベルの燃費性能を両立するダイナミックでラグジュアリーな高級車として開発された。

また、乗員を包み込むような上質な乗り心地のトリプルオットマン付シートや電動開閉式11インチ大型ワイドモニターとBose 5.1chサラウンドサウンドシステムを採用した後席プライベートシアターシステムなど、くつろぎと快適性を追求した多彩な装備を採用しているのが特徴だ。

ただ、ボディはワイド&ローのスタイルとしたために、2代目と比べると全高が100mmほど低くなった。そのため、従来モデルと比べるとワゴンのようなスタイルになっている。
エンジンは、3.5リッターV6と2.5リッター直列4気筒の2種類。駆動方式は、2WDと4WDをラインナップしているが、2WD車がFF(前輪駆動)となった。

2014年1月15日には、ビッグマイナーチェンジがされ、デザインが新しくなり、利便性が向上した。
デザインで変わった主な部分は、ヘッドランプ、フロントグリル、フロントバンパーだ。フロントグリルを大型化し、全周をクロームメッキで囲むことで押し出し感と高級感を高めた。
また、シグネチャーLEDポジションランプを配して目力を強調したデザインのヘッドランプと組み合わせることにより、存在感と高級感を高めている。

ヘッドランプには、クラス初となるLEDヘッドランプを採用。夜間および雨天時の視認性を高めている。リヤコンビランプは新デザインのクリアコンビランプを採用した。
足まわりは、マルチスポークデザインに切削処理を施した専用18インチアルミホイールを装着している。

機能面では、3列目シートに前方向240mmのスライド機能を追加し、サードシートに人が座っていても後部ラゲッジ長を拡大することができるようになった。加えて、室内高を拡大し、ウォークスルーがしやすくなっているのも変更点だ。

2020年10月12日、エルグランドは2度目となるマイナーチェンジを実施。デザインを一新するとともに、全方向から運転をサポートする360°セーフティアシストを全車標準装備した。
加えて、漆黒のフロントグリルやフォグランプフィニッシャーなどの専用装備に加え、存在感を際立たせる輝きと力強さを誇る特別仕様車の「アーバンクロム」シリーズも設定した。

【3代目エルグランドの主なスペック】
・全長:4945〜4975mm
・全幅:1850mm
・全高:1805〜1815mm
・エンジン:3.5リッターV6、2.5リッター直列4気筒
・駆動方式:2WD(FF)、4WD
・3代目発売当時の価格:356万4750円〜605万8500円
プレミアム・ミニバンとしての威厳を取り戻せるのか?4代目エルグランドがまもなく登場
2025年4月22日、4代目となる新型エルグランドのデザインの一部が公開された。

新しいエルグランドでは、第3世代となる日産のハイブリッドシステムe-POWERを搭載するプレミアム・ミニバンとなる。新型エルグランドは、2025年10月に開催されるジャパン・モビリティ・ショー2025(JMS2025)で世界初公開され、2026年の発売を予定している。
4代目となるエルグランドに搭載される第3世代e-POWERは、新開発となる発電専用1.5リッターエンジンと、モーターやインバーターなど5つの部品をモジュール化することにより軽量化された「5-in-1」ユニットを採用する。この新しいユニットは、静粛性が高く、燃費性能が向上していることが特徴だ。

新しいユニットを搭載する新型エルグランドの登場により、アルファードからプレミアム・ミニバンの座を取り戻すことができるのか、さまざまな困難に直面している日産の起死回生となるのか、JMS2025での公開や2026年の発売が楽しみだ。
文=齊藤優太(ENGINE編集部)
(ENGINE Webオリジナル)