東京オートサロンでメーカーやショップと並ぶ見どころが、自動車大学校の生徒たちの力作だ。ここでは、北ホールに出展した4校の展示を紹介しよう。
いったいどこの若者がクルマ離れしているの?
まず、群馬自動車大学校のブースを飾るのは、カスタマイズ科が製作し、鮮やかなインディ・イエローパールIIで全身を包んだ「トヨタ86」だ。

2年前に出展した“MFゴースト”風の赤い車両を全面改修し、バージョン3へと進化したこの86は、群馬のカスタム・ショップであるムーンテックとのコラボ作品だ。ロケットバニーのフルキットをベースに、ワンオフのボンネットやハンドメイドのジャッキアップ・バーなどでオリジナリティを持たせた。

エンジン・ルームは、各部を磨き込み鏡面仕上げに。ブレーキ・キャリパーはメッキ加工で輝きを持たせた。内装は、ドア・パネルの植毛塗装で質感を高め、イエローのパネルなどで外装とのコーディネートも図った。デザインやパーツ選択、そしてフィニッシュのクオリティと、いずれをとってもショップのデモカーに見劣りしない出来栄えだ。

同じく小倉学園が運営し、ボディクラフト科を擁する東京自動車大学校は「レクサスIS」に昭和のレーシング・カーをイメージしたオリジナルのボディ・キットを装着。

巨大なフロント・スポイラーや電動式リア・ウイングも装着し、荒削りながら往年のグループ5を思わせる迫力を醸し出している。

内装は対照的に、未来的なレーシング・カーがテーマ。ダッシュボードにはタブレットを装着し、明るいトーンのクールな色調でまとめている。昭和の雰囲気と平成のベース車、令和の学生のセンスと技術が融合した意欲作だ。

埼玉自動車大学校は、特別講師を務める谷口信輝選手が2015年にドライブしたGT300クラスの「メルセデスAMG SLS GT3」が陣取ったが、その隣にはピンクのボディ・カラーが眩しい「マツダ3セダン」が。“スタンス3”とした車名のとおり、人気が高まるスタンス系カスタムを施した。

ボディは、ベース車のラインを破綻させることなくワイド・フェンダー化。エア・サスペンションを用いて、ホイールアーチがきっちりホイールにかぶった、着地せんばかりのローダウンを達成している。ノーマルでは地味な存在のベース車が持つ、見過ごされがちなデザインの美しさを引き出しつつ、スタンス系のワルな空気感も味わえる一台に仕上がっている。

4台のカスタム・カーを並べたのは、トヨタ自動車大学校。2JZ-GEスワップでスポコン風に仕立てたキャンディ・グリーンの「トヨタ・アルテッツァ」や、レーシーなスタイルでまとめた「トヨタ・パブリカ・ピックアップ」、キャンディ・ブルー塗装が美しい4代目「トヨタ・スープラ」いわゆる80スープラと、いずれも作り込まれた作品が揃ったが、個人的にグッときたのは達磨と銘打った1974年型の「トヨタ・セリカ」、通称“ダルマセリカ”だ。

ダルマセリカらしいグリーンをまとい、普通にキレイな旧車だと見過ごしそうだが、もとはボンネットすらない状態の車体を、ダルマの如く七転び八起きの精神でコツコツとレストアした成果なのだとか。フルオーバーホールしたエンジンをはじめ、ボンネットの下も美しい仕上がりで、足まわりはオリジナルの車高調を組んでいる。そして、旧車再生ではパーツの確保がネックになりがちだが、このクルマはワイパー・アームをトヨタの佐藤恒治社長が提供しているのだとか。
このセリカの説明をしてくれた学生さんは、将来はこうしたレストアを手掛ける仕事に就きたいと熱く語ってくれた。常套句のように若者のクルマ離れが連呼される昨今だが、東京オートサロンの自動車大学校ブースを訪れ、彼らのような頼もしい青年たちの熱意に触れると、まだまだ捨てたもんじゃないという気持ちにさせてくれる。
文=関 耕一郎 写真=神村 聖
(ENGINE Webオリジナル)