村上 それでは、BMW3シリーズと同じクラスのライバル4台。どういう4台なの?
齋藤 エンジンの出力値や駆動方式は横並びにはなっていないということを最初に言っておかないといけないかな。まず、メルセデス・ベンツがC200。最新設計の1.5リットルターボ過給エンジンにマイルド・ハイブリッド方式で電動モーターを加えたパワーユニットを載せるモデル。トリムはアバンギャルド。これは後輪駆動。
次に、アウディA4。つい最近フェイスリフトが加えられて、上級車種と同じように、動力性能をエンジン排気量ではなくて2桁の数字で表わすようになった最新モデルになる。で、借り出したのは45TFSIクワトロ・スポーツ。オプションのSライン・パッケージが加えられた個体なので、タイヤが1インチ・アップの18インチになっている。モデル名のとおり、4輪駆動。
ジャガーもXEシリーズに追加されたばかりの最新モデルとなる300スポーツ。数字は2リットル直4エンジンの最高出力を示している。後輪駆動
最後にアルファ・ロメオのジュリア。Q4ヴェローチェ。これも速いエンジンを載せた4輪駆動。
BMW3シリーズの試乗記はこちら→新型BMW 3シリーズ上陸! 330i Mスポーツ試乗した/エンジン座談会1
今回、乗り比べたのはこの4台!
村上 この4台、新型3シリーズも加えた5台を一堂に集めて乗り比べてみると、このクラスのセダンは、どのメーカーも主力車種のひとつということで、並々ならぬ力を注いで作っているから、やっぱりデキがいいなぁということを強く感じたな。3シリーズがそうだったように、どれも見た目と走りと使い勝手が三拍子揃っている。さすがだよ。そうした磨き上げられたクルマにどうやって独自の味を出しているのか、ということが興味を引くね。で、実際に走らせてみると、そのブランド独自の味わいがよく分かるものになっている。同じ方を向いているようでいて、それぞれにブランドの意向が反映されているという感じかな。
荒井 いやぁ、こんなに違うのかぁと思いましたよ、ほんとに。
齋藤 さっきも言ったけど、横並びガチンコじゃないから違いが際立ったよね。3シリーズは自然吸気3リットル相当の出力を発揮する330iで、仕様はMスポーツ。しかもファスト・トラック・パッケージまでオプションで加わっていた。M340iや今後出てくるM3を除けば、最も硬派な仕立てが施された3シリーズということになる。A4も性格的にはそれに近いスポーティな仕立てのモデル。ジャガーは現時点でシリーズ最強のユニットを積んだスポーツ・モデルだし、ジュリアのQ4ヴェローチェにも同じことが言える。
いずれも4気筒2リットルにターボ過給を施して3リットル級の性能を誇るモデルなのね。ところが今回借りたCクラスはひとりだけ1.5リットルターボと排気量が歴然と小さい。モデル名が表わすように自然吸気2リットル級の動力性能を持った仕様になっている。しかもオプションなしだから、C180系に次いで穏便な仕様ということになる。その結果、Cクラスの個性が際立っていた。他と比べると、歴然と穏やかな仕立てだった。これ見よがしにスポーティに振っていない良さが思いっきり出ていたように思う。
メルセデスは日本での販売ラインナップを、メルセデス・ベンツ名義では穏やかな180、200、そして220dだけに絞って、メルセデスAMG名義では43(3リットルV6ターボ)と63(4リットルV8ターボ)という具合に、中を抜いて上下に分けたシリーズ構成にしてきた。今回の他の4台に相当するモデルがない。
村上 なるほど。じゃあそろそろ各論に移っていいのかな?
齋藤 あ、そうそう。5台を集めて乗ってみたら、空間設計の考え方に二通りあることが分かった。A4と新型3シリーズは前席と後席の扱いが完全に平等で、空間も広い。後席の快適性ではA4に分があると感じたけれど、単純に空間の広さだけでいったら、新型3シリーズの方が勝っているかな。一方で、XEとCクラスの2台は明確に前席優先の空間設計で、前後平等の扱いではない。とくにCクラスは空間設計だけでなく、後席のシートの作りも、座面前後長が明らかに短かったりする。後席に頻繁に大人を乗せるならEクラスをどうぞ、という意図が明確に出ている。ジュリアは中間的な空間設計かな。考え方としてはアウディやBMWのそれに近いんだけれど、それらほど後席は広くない。
同じクラスで戦うライバルで、ドライバーズ・カーとしての色合いを濃く持っているクルマたちだけれど、そうした自社ラインナップの中での位置づけみたいなものがはっきりしていることが分かって面白かった。前席だけで比べると、いずれも甲乙つけがたいぐらいに拮抗しているのにね。
村上 不思議なことに、その違いって後席のものなのに、運転席にパッと乗り込んで、目の前の景色を見て感じるクルマのサイズ感も、XEとCクラスは他よりコンパクトに感じるんだよ。そういう風に仕立ててあるということなんだろうね。
齋藤 偶然だとは思えない。その2台にはハンディーな感じがある。
村上 ほかの3台は逆に、乗り込むと、このクルマ、けっこうでかいぞ、という印象をまず受けるんだよ。
齋藤 実際のところ、全長で見ると、アウディとBMWだけが4.7mを超えている。いちばん長いのはアウディ。フロント・オーバーハングに縦置きエンジンを積む機械レイアウトのせいもあるだろうけれど、このボディにフルモデルチェンジした時に、アウディは前席重視のパッケージングと決別したんだね、明確な意図を持って。それまでは後席の狭い感じがあったのを一気に払拭する決断を下したんだと思う。BMWはアウディに追従したというべきかな。
村上 じゃあ、1台1台見ていこうか。今は再び見た目がコテコテとしたものになってきつつあるけれど、そういう中で見ると、ジャガーXEのエクステリア・デザインは極めてシンプルなラインと面で構成されていて、清々しくて気持ちいい。
齋藤 クリーンで、見るからにカッコイイ姿形をしている。
村上 デザイン・ディレクターのイアン・カラムの監修が行き届いている感じがする。彼の意向、趣向が強く反映されていて、そこが時代の潮流に迎合しない独自性になっている。
齋藤 XEとXFは同じプラットフォームを使い、並行して開発されたクルマといっていいんだけれど、ことエクステリア・デザインのまとまりがよくて説得力が強いのはXEの方だと思う。スピード感があるよ。
村上 洋服の世界でいうところの、デザイナーズ・ブランドに近い匂いを感じる。反対にBMWやメルセデスはデザイナーの存在以上に、メルセデスかくあるべし、BMWかくあるべしというのが強くて勝っているように見える。そうは言っても、W201ショックやクリス・バングル改革とかでBMWも大きな変化を遂げてはきたんだけれど、時の流れの中で長年かけて醸成されたイメージの方が強いんだね、きっと。
齋藤 それが伝統とか歴史というものなんじゃないの。
村上 アウディも一時期はデ・シルヴァさんを前面に立てて、シングルフレーム・グリルの導入に代表される改革を加えたこともあったけれど、やはりアウディかくあるべし、という印象が見た目には強い。
齋藤 それがドイツの会社のやり方なんじゃないかな。
村上 ジャガーはこのクラスに参入して日が浅い。
齋藤 XEを出すときに御破算で願いましてはをやっているしね。
村上 そういう意味ではモデル毎のデザインを重視した古典的な手法なのかもしれないけれど、クルマ好きの目で見ると、カッコイイよね。
齋藤 走らせても、ジャガーの味わいは独自色が濃かったよねぇ。他のどれよりも大径の20インチを履いていながら、街中も高速も山道も何の我慢も要らなくて、しかもスポーティ。走らせる喜び横溢。脚がしなやかによく動く。なのに決してフワフワじゃない。公道がどういうものかをよくよく知っていないと出来ない仕立てだと思うよ。上手い!
新井 公道を走るスポーツ・セダンとしていちばんピントが合っている。
村上 見た目も走りも、こういうのがスポーツ・セダンだよなと皆が思うものそのものになっている。クルマ好きの心に突き刺さるものがある。
齋藤 ただし、300psを出すエンジンは、本格的に過給効果が発揮されるまではちょっとレスポンスがおっとりしている。低回転低負荷域から電光石火のレスポンスを見せるようになった近年のターボ・エンジンとはそこがちょっと違う。
荒井 ターボ・バンがくる前はちょっと眠い感じが確かにした。そういうものだと理解して乗れば問題ないんだけど、街中ばかりでちょこちょこ走っていると、気にはなるかな。普通に走っていて気持ちよかったのは、僕はジュリアかな。
村上 BMWも入れた5台で考えると、いちばんスポーツ指向が強かったのがその330iMスポーツで、次がXE300スポーツ、そしてジュリアという順かな。この3台のスポーツ指向はそれぞれに濃厚だった。
齋藤 いやいやアウディのクワトロ・スポーツもテイストこそ違えど、スポーツ指向が明快だったよ。
村上 そうだね。ジュリアのそれはちょうどいい塩梅だったといえるかもしれない。気持ちイイっていう感じが強かった。スポーティという基準だけでなくて、ナチュラル感というのか、心地よい肌合いというのか、それを併せ持っているのがジュリアなのかな。他のクルマは各種電子制御が入って進化した時代の走りとでもいうべき感触が強くある。
荒井 ある程度速度域が高くなってくると、A4の45クワトロ・スポーツは凄いなぁと思うんだけれど、交差点を曲がっている時でも、楽しいなぁという気持ちになるのはジュリアだったなぁ。速度域は関係ない。
新井 回頭性の良さ、鋭さはアルファがダントツにいいですよね。しかも、それでいて怖くない。2WDの後輪駆動モデルはさらに気持ちいいですけどね。4WD版は2WDモデルと比べるとちょっとクセがある。
荒井 そういうクルマたちと直接比べると可哀相なんだけど、C200は別の世界のクルマみたいに感じる。
齋藤 でも、そういう仕様だからこそ、路面状況だとかに気を使わないでどこでも気楽に走れちゃうということもあるよね。
新井 Cクラスはずいぶん良くなったなぁという感じがした。C200アバンギャルド仕様同士での新旧比較を記憶に頼ってするとですが。
村上 ランフラット・タイヤは素のC180以外では止めたしね。
齋藤 欲張らずにC200アバンギャルドまでで踏みとどまっておけば、こんなに円満な世界が手に入るんだという思いを強くした。
村上 他から乗り換えると、ホッとする。快適至極。じゃあ、C200はスポーティじゃないのかといったら、そんなことは全然ない。シャシー性能が高いから、すごく速い。単純な直線加速のことを言っているんじゃないよ。エンジンが他みたいにパワフルではないっていうだけの話。柔らかい脚でも速い。
齋藤 クルマの世界で“スポーティ”というとね、競技の世界から来るイメージが先立って、とにかく速いものということになりがちだけれど、そこには人が自分の体を使って速度の緩急を問わず思うがままに自在に操れるかどうか、という意味が根幹にある。その考え方に重きを置くなら、今回乗った5台の中でC200が最もスポーティなクルマだったと言うことだってできるわけだよね。
脚が硬くてノーズがギャッと向きを変えて加速が速いのがスポーティっていうのではあまりに浅薄。そこだけを見ていては、スポーティとい言葉の意味の本質を見失ってしまうに等しい。スポーツ・セダンを買ったからといってレースに出るわけじゃないんだから、どれだけ自在に気持ちよくコントロールできるクルマなのかということの方がずっと大切。世の中ではだんだんそういうことが忘れられているようで、シンドイよ。
村上 そのとおり。とにかくこの4台はいずれも説得力があった。見た目がスタイリッシュで、独りで走らせれば存分にスポーツ・ドライビングが堪能できて、ツブシが利いてファミリーカーに使える使い勝手の良さもある。しかも、いたずらに余計な重量を抱え込むこともない。スポーティなセダンはやっぱりイイよ。
話す人=村上 政編集長+齋藤浩之+荒井寿彦+新井一樹(すべてENGINE編集部) 写真=望月浩彦
アルファ・ロメオ・ジュリア・2.0ターボ Q4 ヴェローチェ
メルセデス・ベンツ C200 アバンギャルド
アウディ A4 45 TFSI クワトロ・スポーツ
ジャガー XE 300 スポーツ
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