2019.10.26

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セイコー プロスペックス ルクスライン にこめた「コト作り」の哲学[第3回]

1968年に発売されたダイバーズウォッチをベースに現代の技術・感性で進化させたLXライン。ブランドアドバイザーの奥山清行氏が、この時計にこめたデザインの哲学とは?

自動車愛好家にその名を知らぬ者はいないだろう。奥山清行。だがその辣腕は、クルマ以外にもさまざまなジャンルで発揮されている。たとえば急須やカトラリー、アイウェアなど身近なプロダクト全般に広がる。そこにセイコー プロスペックスのルクスラインが新たに加わった。


奥山清行/KEN OKUYAMA ポルシェのシニア・デザイナーやピニンファリーナ社のデザイン・ディレクターなどを歴任した世界的工業デザイナー。現在はKen Okuyama Design 代表として幅広いジャンルの企業コンサルティングを行うほか、自身のブランドでクルマやインテリア、アイウェアなどの開発も行う。

カテゴリーを横断し通底するデザインの哲学は、「モノ作りよりコト作り」にあると奥山氏はいう。
「たとえばこの急須(上写真)は、岩手盛岡で作っています。地元には古くから鋳物師や釜師が多く集まり、良質な砂鉄を用いた南部鉄器は地場産業として発展してきました。これはイタリアで学んだのですが、地場産業が育つには歴史的な背景があり、そこに人がいて、町があって、最初のお客さんは地元。そして地産地消になることで最初のリスクヘッジができ、そこから他所へ広がっていく。こうしたコトが重要であり、それを育てていきたいんです」


Seiko Prospex LX line
セイコー プロスペックス ルクスライン

1968年に発売した10振動メカニカルハイビート搭載の300m防水ダイバーズをデザインベースにする。独自の自動巻きスプリングドライブを採用し、見た目の重厚感に比して軽量なチタンケースと耐傷性に優れるセラミック表示板のベゼルを組み合わせる。300m飽和潜水用防水。写真下はスーパー ブラックダイヤシールドを施し、シリコンストラップを装着。ケース直径44.8㎜。写真右「SBDB021」、写真左「SBDB027」各税別63万円。


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だからこそ自分はただのデザイナーになるつもりはないという。
「デザインというのは売れてなんぼ。そうなると商品を作って、後は誰かにやってもらいましょうというのは僕はやりたくない。売れてちゃんと利益が上がって、また次に繋がり、それで業界が潤って作り手が育つところまですべてデザインしたいし、それがデザインだと思っています」


ではルクスラインのブランドアドバイザーとして、今回どのようなデザインに取り組んだのだろう。
「まず1968年のオリジナルに対し、レトロをやってはいけないと思いました。モチーフはヘリテージにあって、考え方や姿勢は変わらないのだけど、表現方法や技術、素材は変わっていくべきだし、結果として商品はモダンに見えなければいけない。でもそれも最小限に抑え、やり過ぎちゃいけないんです。新しくすべきところと残すべきところをわきまえた、この継承と進化が重要」


2013年に発表したkode9は、奥山氏の真髄、シンプルデザインを極めたライトウェイト・スポーツカーだ。


ハイビートや防水機能などの当時のハイテクを詰め込んだ初代と同様、現代の先進技術を注いだ上、存在感のある印象を残しつつ、全体のボリュームをよりモダンに変えた。
「重視したのは、形ではなく、光り方。面の構成、角度、磨きや仕上げに一番こだわりました。だから形状で新しいことはやっていません。でもよく見ると整合性があって、すべてのポイントが一点で合うようにしています。簡単なようでそれで構築するというのは、とても難しく、ねじれや歪みのない高度な磨きの技術を前提にしなくてはいけません。量産を考慮すると、現場の作業性を考えるのも不可欠だし、むしろそれがすべて。クオリティとはデザイナーやエンジニア、マーケティングでできるのでなく、いかに現場で作りやすい形を作ってあげられるか。それに反していると、どこかが破綻してしまいます。とくにブラックケースは、周囲の色の影響を受けない分、輝きの度合いが素材や仕上げの違いによってより大きく変わるので、そこが魅力ですね」


こうして完成したルクスラインからは、奥山氏のデザインピースの根底にある“モダン、シンプル、タイムレス”の三原則が伝わってくる。使うほどに愛着が湧き、新しい発見がある。これをデザインと呼ぶ。


◇商品のお問い合わせ=セイコーウオッチ お客様相談室 Tel.0120-061-012
    www.seikowatches.com

  

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文=柴田 充 写真=近藤正一,PROMOTION



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