2020.04.27

CARS

4代目に生まれ変わった新型ホンダ・フィットに試乗した

不具合を乗り越え、満を持して市場投入された新型フィット。以前テストコースで試乗したプロトタイプの出来はかなり良かったが、果たして量産バージョンの出来映えはどうだったか。


フレンドリー

2019年秋に行われたプロトタイプの試乗から5カ月。ようやく新型ホンダ・フィットの量産モデルに乗ることができた。あえて"ようやく"と言ったのは、プロトタイプ試乗記のときにも書いたとおり、発表直前に発覚したリア・ブレーキの不具合により、発売が当初の予定よりも4カ月ほど遅れたから。


ちなみに、リア・ブレーキは不具合を解消するにあたり、当初予定したドラム式からディスク式に変更されている。


緑に囲まれた広大なテストコースで初めて新型フィットを見たときも愛嬌のある好感度の高いデザインだと感じたが、建物のある風景の中でもその印象は変わらなかった。超個性派ではないけれど、人のことを不快にさせない癒し系のいいカタチだ。


柴犬をイメージしたという愛らしいフロント・マスクをはじめ、前後の意匠は先代と比べるとガラリと変わったが、初代から受け継いでいるワンモーション・フォルムのおかげでひと目見ただけでもフィットだとすぐにわかる。


最近、ホンダ車には"んっ?"と思うデザインが多いけれど、新型フィットに関しては、ホンダはとてもいい仕事をした。ライバルたちがどんどん肥大化するなか、全長4mと5ナンバー・サイズの全幅を死守しつつ、クラス・トップの室内スペースをキープするなど、初代から受け継いだパッケージの良さも健在。


なお、濃い色だと愛らしさが若干抑えられるので、新型のデザインが可愛らし過ぎると感じるなら、濃い目のボディ色がオススメだ。


開放感に溢れる室内。白色の内装色を選ぶとその感がさらに強まる。メーターは液晶式を採用。
フロント・シートは骨格や構造から見直され、掛け心地の向上が図られた。体重をシート全体で支えてくれ、掛け心地はいい。クッションが効いていて当たりも柔らか。
後席や荷室の広さは相変わらずクラストップ・レベル。

メーター・フードなど余分な物を廃し、水平基調を取り入れたインパネはシンプルかつスッキリとした意匠。明るい色味の内装色だとその印象がさらに強まる。こちらも外観に勝るとも劣らず好印象。


さらに、プロトタイプのときは見通しのいいところばかり走っていたので気付かなかったが、前方の死角が少なく、視界が広いことに驚いた。


フィットは初代からキャビン先端とドア・ミラー付近に配した2本の支柱を組み合わせたフロント・ピラーを採用しているが、新型ではキャビン先端の支柱を細くすることで、とくにフロント左右部分が今まで以上に見やすくなっている。


1.3ℓも悪くない

新型フィットのパワートレインは先代同様、1.3ℓ直4と1.5ℓ直4にモーターを組み合わせたハイブリッドの2タイプが用意される。


ハイブリッドは1モーター+デュアルクラッチ式自動MTからインサイトと同じモーター主体で走行する変速ギアを持たない2モーター式に刷新された。1.3ℓ、ハイブリッドともスポーツカーのようなドラマチックな仕立てではないけれど、常にいい仕事をしてくれる実直なユニットだ。


HONDA FIT

プロトタイプのときは全方位的にハイブリッドの方が秀逸でオススメだと思ったが、今回試乗して好印象だったのは1.3ℓ。1090㎏で98‌psだから絶対的には速くないものの、コンパクト・カーらしい軽やかな走りを見せる。


もちろん、モーターの25.8kgmという2ℓターボに匹敵する大きなトルクとレスポンスの良さのおかげで、力強い加速やアクセレレーターの動きに対する俊敏な反応など、動力性能ではハイブリッドに大きなアドバンテージがある。電池の残量が多いときはモーターのみで走れるので音や振動面でも有利だ。


しかし、電池の残量が少ないときは1.3ℓよりも車重が100㎏重いこともあって、その差は俄然小さくなる。そのときのガッカリ度が意外に大きい。ハイブリッドの魅力は十分理解できるが、1.3ℓに体が馴染んでくると「これで十分かも」という気になってきたのもまた事実だ。


初代から連綿と受け継いでいるセンタータンク・レイアウトのシャシーはプロトタイプで感じたように先代よりもよく脚が動くようになった。走り味はいい意味で穏やか。見た目に合った癒し系に仕上がっている。


今回から加わったSUV風デザインの"クロスター"。大径タイヤを履き、車高も高い。

愛らしい外観と開放感に溢れる室内はまさに新型フィットが掲げた「心地よさ」というコンセプト・テーマ通りの仕上がり。初代譲りの実用性の高さを失うことなくそれらを実現したのも評価に値するだろう。


見ても乗っても「ほっこり」する、肩肘張らずに気軽に使えるフレンドリーなクルマだった。


■ホンダ・フィット・ホーム(FF)


駆動方式 フロント横置きエンジン前輪駆動
全長×全幅×全高 3995×1695×1515㎜
ホイールベース 2530㎜
トレッド 前/後 1485/1475㎜
車両重量(前後重量配分) 1090㎏(前700㎏:後390㎏)
エンジン形式 直列4気筒DOHC16V
総排気量 1317㏄
ボア×ストローク 73.0×78.7㎜
エンジン最高出力 98ps/6000rpm
エンジン最大トルク 12.0kgm/5000rpm
変速機 CVT
サスペンション形式 前/後 ストラット式/トーションビーム式
ブレーキ 前/後 通気冷却式ディスク/ディスク
タイヤ(取材車) 前後 185/60R15 84H(185/55R16 83V)
車両価格(税込) 171万8200円


文=新井一樹(ENGINE編集部) 写真=郡 大二郎


(ENGINE2020年5月号)

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