そんな新型7シリーズをベースとしたアルピナのB7に試乗する機会に恵まれた。ボディはロングホイールベース型で4輪駆動。エンジンは4.4ℓのV8ツインターボ。もちろんアルピナ専用の仕立てが施された強心臓で、最高出力608psを誇る。
最大トルクにいたっては81.6kgmにも達する。しかもその最大値は2000〜5000rpmという広い回転域で引き出せる。変速機は8段ATを使い、各段間のステップアップ比を小さくしてクロースレシオ化するなど、強力無比なエンジンに合わせて独自の仕様が織り込まれている。
それによってもたらされる動力性能には驚くほかない。車両重量が2.2tに達しようかという全長5.3m弱の巨体にして、0-100㎞/h加速はスーパースポーツ並みの3.6秒でこなし、0-200㎞/h加速には僅か11.9秒しか要しない。
アルピナの言う最高速度はいつものようにそれを燃料がなくなるまで延々と持続可能な巡航最高速度だが、このB7のそれは330㎞/hの高みにある。文句なしに世界最速級の4ドア・サルーンだ。
もちろん、日本にいてこの絶対性能を体感することはできないのだけれど、日本の道路環境が許す速度域でも、B7の並外れた能力を窺い知ることはできる。発進直後から高速道路で使う領域まで、どんな速度域であっても、右足を踏み込めば底知れない加速力を見せつける。
独自の制御プログラムを織り込んだ電子制御4WDと強大なグリップ力を後ろ盾に、いささかも荒々しくならず、驚天動地と言いたくなるような速度変化を起こしてみせる。心臓を鷲掴みにするような加速Gが襲ってくるが、その間も、まろやかなエンジン音は少し音量を上げるにすぎない。
排気音はいかにもアルピナらしい緻密でいて繊細な、それでいて胸板の厚さを連想させるような心地よいものだ。グッド・ミュージックである。ドイツの高性能車はごく低い周波数帯域の音を消さずに残す、ドスの効いたものが多いが、アルピナは例外である。品の良さを失わない。
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