東京オリンピックの前年にデビューして以来、55年以上にわたって たゆまぬ進化を続けてきたスポーツカーの中のスポーツカー、それが911だ。その最新モデルである992型のカブリオレ・モデルの試乗車がようやく日本に上陸した。それを機に、日本にある911 シリーズのすべての広報試乗車を借り出して比較試乗した。
村上 ついにというか、ようやくというか、992型911のカブリオレ・モデルの広報車が日本で用意され、これで日本にある992型の広 報車は4種類になった。すなわち、 最初に入ってきたカレラ4S、次にカレラS、そしてカレラ、今度がカレラ4カブリオレ。これでクーペかオープンか、カレラかカレラSか、後輪駆動か4WDか、という幅広い バリエーションを持つ911ならではの悩ましい選択を、比較試乗しな がら考えることができるようになったわけです。そこでその4台をいっぺんに借り出して箱根に赴いた。ところが、あいにくの梅雨空で、私は運悪く大雨の中でしか乗ることがで きなかった。ウエット・モードの優秀さはよくわかったけどね。というわけで、今日はこれまであまり911の座談会に加わっていなかった新井君の意見から聞いてみようか。新型911はどうですか?
新井 992型に乗って思うのは、911の独特の味が本当に薄くなったな、ということですね。
村上 おっ、いきなり大否定的意見。
新井 否定というのではないのですが、僕が初めて993型で911を体験した時に感じた、ドアをガチャと閉めた時の気密感とか、コーナーを曲がる時にもスロットルのちょっとした操作でアンダーにもオーバーにもなる独特の操縦感覚とか、ステアリングがそのままタイヤと路面の接点に結びついてるかのようなダイレクト感とか、そういう911ならではの感触が薄くなったことは間違いないと思います。昔はスロットルを100入れたら100伝わっていたのが、今は98とかもう少し減った感じがある。あいまいになったとまでは言いませんが、あの頃に感じた研ぎ澄まされたような、その代わり突然リアが出たりする特殊な運動特性を持った乗り物という感じは、ハッキリ薄れたと思います。
村上 それって、我々が何度も言ってきた"911の民主化"っていう話と結びつくのかな。圧倒的に乗りやすくなった。その代わりに、911ならではの、とりわけRRというレイアウトからくる良くも悪しくも独特の乗り味はなくなっていった。
新井 992型は991に比べても、さらに味が薄くなった気がします。
村上 さらにフロントのトレッドが拡がっているからね。一段と安定して、操縦感覚はずいぶん変わった。

新井 だから992型は911というより、もはや完全なスーパースポ ーツの世界に入ったと思います。そういう意味ではフツウになりました。 それを踏まえて僕が4台の中でいい と思ったのは素のカレラです。今回のように4台を順番に乗り換えていけば、カレラとSとのパワーの違いや、後輪駆動と4WDの違い、クーペとオープンの違いがハッキリわかりますが、そうでなければどれに乗っても同じだと思いますよ。雨の日にも乗りたいとか、サーキットを走るとか、特別の目的を持っている人は別にして、911をスーパースポーツとして楽しみたいのだったら、もはやカレラで十分だと思います。

村上 いや、カレラでも十分というより、僕は今回、カレラが積極的に一番いいと思ったけどね(笑)。
新井 僕はいくらでもお金があるのだったら、Sの方がいいと思います。でも、カレラでも十分にスーパースポーツとして通用するから……。
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話す人=村上 政(まとめ)+齋藤浩之+荒井寿彦+新井一樹+上田純一郎(すべてENGINE編集部) 写真=望月浩彦
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