2021.02.17

CARS

「GT3もついに2ペダル!」 歴代ポルシェ911GT3を深掘り“991型篇”

991に加わる新しいGT3は、とんでもなく凄そうだ。ポルシェのなかで何かが吹っ切れたかのように挑戦的な内容なのだ。それは、新しい911の世界を見せてくれるかもしれない。1859万円也。


新しいGT3の内容を知ると、わくわくしてくる。997のRS4.0という一種の記念モデルを作っていったん終止符を打ったポルシェが、991のGT3をどのようなものにしてくるのか、期待と不安がない交ぜになった気持ちで待った僕らは、「なるほど、そうきたか、さすがはポルシェ」と、不安を忘れて新しい時代到来の予感に胸躍るばかりだ。ジャンプ・アップが必ずやある。


ポルシェ自身、RS4.0を作ることで、逡巡を振り払ったのだろう。


レースで使うための車両規定を満たすべく作られた996GT3の思わぬ大ヒットを受け、以来GT3はカタログ・モデル化してハードコアなファンの期待に応え続けてきた。カップカーとロードカーを乖離させず、後輪駆動911を思いっきり走らせたい人たちを喜ばせてきた。


996カレラ・シリーズが新世代エンジンに移行したにもかかわらず、ポルシェはGT3にそれを使わなかった。長い歴史と比類ない実績を誇る空冷クランクケースを使って高回転高出力型の自然吸気水冷エンジンを専用に仕立て、それを磨き続けて次世代の997GT3にも使った。997カレラで再度エンジンを直噴式の新世代ユニットに切り換えても、GT3では空冷クランクケースを捨てなかった。潔くハイスピード・ランに的を絞って低く締め上げられた996、997GT3の脚は、顧客層の拡がりに合わせて快適性の両立を目指さざるをえなくなるが、その最大の武器になるはずの電子制御運転支援装置の採用にはどう見ても消極的だった。ドライビングの喜びを削ぐものとして敵視していたフシさえある。ドライバーに大きな喜びを与えるけれど、それを受け取るためには一定水準に達した運転スキルを求めた。997の最後までGT3に2ペダル変速機を用意しなかったのは、顧客層の想定外の拡がりを食い止める意味もあったのだと思う。


991GT3は、違う。電子制御システムを快適性を両立させるためではなく、速く走るための武器として積極果敢に取り込んできたのだ。いま手にすることのできる最新技術をまるごと飲み込んで、2輪駆動の911の速さを新しい地平に押し上げようという断固たる決断を下したとしか思えない内容なのだ。


991GT3と一緒にジュネーヴで一般公開されたワンメイク・レース用の991GT3カップ。鉄アルミ混成の新モノコックになったのを受けて、ロール・ケージも再設計されている。こちらは空冷クランクケースの3.8リッターユニットを踏襲する。
変速機はレース専用のコンスタント・メッシュ6段シーケンシャルMTのままで、発進時などに使うクラッチ・ペダルも残されているが、変速操作はGT3と同じくパドルで行なうように変更されている。

エンジンは最新世代の直噴型をベースにオイルサンプを作り直して完全ドライサンプ化を決行。シリンダーヘッドもロッカーアーム援用型を新規に起こして動弁系の慣性質量を減らし、911の市販型としては初めて、9000rpmを許容する超高回転型ユニットを作り上げた。最高出力は475ps! 3.8リッターエンジンの比出力は125ps/リッターにも達する。


変速機は3ペダルのマニュアル・ギアボックスと決別して2ペダル化、ツインクラッチのPDKを投入してこれのみの設定としてきた。内部構造はもちろん制御プログラムもGT3用に変更されている。オーバーオールのギアリングも大幅に低められ、315km/hの最高速度には7速で達する。ついにスポーツ走行に的を絞ったPDKを投入してきたのだ。


ドライブ・トレインやシャシーはもっと凄いことになっている。駆動輪のブレーキを左右個別につまむトルクベクタリングに加えて、ディファレンシャルに組み込まれる差動制限装置も電子制御化、さらには、電動パワーステアリングの採用に合わせて、リア・アクスルにもアクティブ・タイプの操舵機構を組み込んできた。後輪駆動911の限界性能とその領域でのコントロール性能を極限まで引き上げている。専用PDKには、左右のパドルを同時に引くと、走行中に駆動力を遮断したり、もう一度引くと瞬間的に再繋合させたりできる「パドルニュートラル」という仕組みを組み込んでいる。それを使って故意にリアを瞬間的にブレークさせることすら許容するのである。


RRの弱点を完全払拭した911が遂に生まれたとしか思えないのだ。

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文=齋藤浩之(ENGINE編集部)


■991 GT3
駆動方式 リア縦置きエンジン後輪駆動
全長×全幅×全高 4545×1852×1269mm
ホイールベース    2457mm
トレッド 前/後 1551/1555mm
車検証車両重量(前:後) 1430kg
エンジン形式 自然吸気水冷水平対向直噴6気筒DOHC 32V
排気量    3799cc
ボア×ストローク 102.0×77.5mm
最高出力 475ps/8250rpm(許容9000rpm)
最大トルク 44.9kgm/6250rpm
変速機    デュアル・クラッチ7段自動MT(PDK)
サスペンション(前) ストラット/コイル
サスペンション(後) マルチリンク/コイル
ブレーキ (前後) 通気冷却式ディスク+6/4ピストン・キャリパー
タイヤ (前/後) 245/35ZR20/305/30ZR20


■991 GT3 Cup
駆動方式 リア縦置きエンジン後輪駆動
全長×全幅×全高 4545×1852×1269mm
ホイールベース    2457mm
トレッド 前/後 1551/1555mm
車検証車両重量(前:後) 1175kg
エンジン形式 自然吸気水平対向6気筒DOHC 32V
排気量    3800cc
ボア×ストローク 102.7×76.4mm
最高出力 460ps/7500rpm(許容8500rpm)
最大トルク 44.9kgm/6250rpm
変速機    コンスタントメッシュ6段シーケンシャルMT
サスペンション(前) ストラット/コイル
サスペンション(後) マルチリンク/コイル
ブレーキ (前後) 通気冷却式ディスク+6/4ピストン・キャリパー
タイヤ (前/後) 27/65-18/31/71-18


(ENGIEN2013年6月号)

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