2021.06.08

CARS

輸入車のミニバンに乗るならオススメはこの3台 ルノー・カングー、プジョー・リフター、シトロエン・ベルランゴ

いずれも商用車がルーツのフランス製ミニバンの3台は、いったい何処が違うのか? なぜ走りがいいのかを、モータージャーナリストの渡辺敏史氏とエンジン編集部員が、見て乗って確かめてみた。


中古車探検隊メンバーが再集合

上田 いやぁ、このメンバーで集うのも久しぶりですね。最後の中古車探検隊の取材が去年の春の緊急事態宣言明けでしたから、1年近く経ってるかもしれません。


新井 ナベさん相変わらず中古車屋巡りやってんですか?


渡辺 うーん、最近はまた出歩いてると叱られる状況になっちゃってたから、もっぱらネットほじくって珍物件見つけては写真拡大してるけど、やっぱ店行って現物見ないとわからないところはいっぱいあるよね。


上田 そういえば中古車探検隊の終了後にクルマを買い替えたとか?


渡辺 コロナ禍でいよいよ家人が乗れる右ハンのオートマが必要になってきて、見た目ヨロヨロの996ティプトロにしましたよ結局。


新井 それ、前に取材したネタがそのまんまリアル化したんですか。


渡辺 そういうことだね……。


フランスマジック?

上田 ナベ家のファミリーカー選びもようやくひと段落ついたわけですか。で、今回は普通に暮らす読者の皆さんにお薦めしたい気の利いたファミリーカーとして、この3台を取り上げてみたいんですが。


渡辺 ウチが普通じゃないみたいな言い方しないでよ。


新井 あ、今回の企画は中古車ではなくて新車なわけね。


渡辺 えーっ、せっかく新車なんだったらウチらもディフェンダーとかDBXとかイマっぽいブリッとした車種がいいよなあ。


新井 この3台、かばいきれないほどダダ漏れの上田プレゼンツ感があるような……。


上田 し、仕事なんだから贅沢言わないでくださいよ。


新井 しかもこの対決構成はあまりにベタすぎだろう。


渡辺 まぁ確かにベッタベタなんだけど、この手のイタフラ貨客車系を検討する人って、多分フリードとかシエンタとかと比べて悩むことはないんだろうね。ヘタすると同じ貨客車系でハイエースとかN VANなんかに目が向くのかも。


新井 なるほど。或いは電源という実利を採ってアウトランダーPHEVみたいなのにいくとか。


上田 そうなんですよ。多分ニュアンスとしては2人が言われている感じなんだと思います。でも、その辺ってシュッと乗りこなすにはなかなかハードルが高い。


渡辺 確かにウチらでN VAN乗ってても、カルロス・ゴーンの保釈にしか転がらないものなぁ。


新井 まぁそこはこの3台、油断しててもフランスマジックで嵩上げしてくれる感はありますよね。


渡辺 フランスパン抱いてるだけで業スー帰りには見えなくなるしね。


新井 なんすかギョースーって? 餃子スープ?


渡辺 知らないの? 業務スーパー。爆安だよ。


上田 あの、そろそろ話を本筋に戻してもらえないかと。


渡辺 まぁカングーって、業スー詣でもカルフール気分にしてくれる、そういう平凡な常がちょっとアガるものとしても広く長く受け入れられ続けて、気づけば見過ごせない支持層を築いていたわけだ。


新井 カングージャンボリーに1000台以上集まるっていうんですから、大変なもんですよね。


渡辺 で、そんな票田をなんで独り占めにさせておくのようという話は昔からあった。


新井 ベルランゴ売ればいいのにって、ずーっと言われ続けてました。


上田 まぁ変速機やハンドル位置の問題があったわけですが、それが現世代でようやく解決したと。


新井 で、プジョーもパートナーを商用専用にして、乗用を独立させるかたちでリフターが生まれたわけですか。しかしそれがベルランゴと併せて輸入されることになるとは思わなかったですね。


すでに欧州では新型の発表があったカングー。日本仕様は現在ゼンのみで、変速機のみ6段MTとDCTを選択できる。リアハッチは分割式のダブルバック・ドアのみで、リフターやベルランゴのような一体の跳ね上げ式ドアは日本市場では選択できない。前席の上と後席の上にはそれぞれ蓋なしと蓋つきの小物入れが備わっている。後席側は3分割されているように見えるが、内部で繋がっている。タイヤ・サイズは195/65R15が標準。

渡辺 フランスの3社各々のフルゴネットが日本でも正規で選べるようになったって、そんな時代が来ようとは思わなんだよ。


上田 ちなみに3車の中身などを掘り返していきますと、ベルランゴとリフターは兄弟的な関係で、アーキテクチャーは現行プジョー308が用いるEMP2がベースになります。


新井 対するカングーは初代はルーテシアがベースでしたけど現行はメガーヌII系の車台がベース。この手はCセグメント系の骨格っていうのが定着したんですね。


渡辺 日本ではちょっと幅広いボディが気になるけど、これは欧州の規格サイズの物流パレットがきっちり積めるようにという商用サイドからの要求なんだって。考えてみればプロボックスやハイエースもコンパネやダンボールの積載性で車の形状が決まってくるもんなあ。


上田 そういう縛りの中で出来た真四角のガランとした空間がなんかこう、使いこなしへの挑戦心を湧きたてるんでしょうね。


新井 カングーって外装に手を加える人はそんなにいないけど、内装は色々自分で工夫してデコってる人、多いですよね。


渡辺 外装はむしろ飾り気がない方が喜ばれるのかもよ。クルマに表立ったアピールはいらないと思っているというか。そのぶん外からは見えないインテリアに凝っちゃうというか、お家が一番的な感覚なのかも。


上田 そういう視点でみるとベルランゴやリフターはちょっと頑張りすぎちゃってるんですかね?


新井 うーん、一概にはいえないけど、樹脂の地肌剥き出したようなバンパーが似合いそうな外装色は見当たらないかな。


渡辺 カングーの特色作戦はもうインポーターの熱意の賜物としかいいようがないよね。フィアット500なんかもそうだけど、特装車盛りすぎと言われようが、売る方の愛が感じられるクルマってやっぱり長続きしてる。出て間もないベルランゴとリフターが今後そういう風になるかは未知数だけど、インポーターにも頑張って話題提供を続けて欲しいね。


新井 ベルランゴ&リフターでいえば、インポーターの独自企画でディーラー・オプションに設定されたスピーカーシステムは良かったですね。この手のオーディオって鳴ればいいやくらいのものが多いけど、きちんと聴く気になれる音でした。


渡辺 内装はクルマ屋視点で見るとさすがに開発年次の差はあらかたで、ベルランゴ&リフターの方が歴然と質感が高いけど、でも買う人の焦点がそこにあるか否かはわからない。


上田 飾る人にも使い倒す人にもカングーのざっくり感が好まれる可能性もあるってことですね。


渡辺 同じような話で、骨格も設計年次が全然違うぶん、ベルランゴ&リフターの方がガチッと守られてる感は高いけど、視界はカングーの方がヌケがいい。新しい衝突安全や歩行者保護要件を織り込んだ分、ベルランゴ&リフターはカウルの位置がドンと上がっちゃったんだろうね。


日本市場におけるリフターはスタンダードなアリュールと上位のGTの2グレード展開で、試乗車のGTラインはGTベースの特別仕様車。3分割された凝ったデザインのマルチパノラミックルーフや前席間を貫く巨大なセンターコンソールは標準装備。基本の内部構造は変わらないが、ベルランゴと比べるとメーター位置がまったく異なることが分かる。タイヤはGTが215/60R17、アリュールが215/65R16が標準サイズとなる。

新井 でも、カングーには望めないADAS系の機能が充実していることも含めてみれば、ベルランゴ&リフターは平日に奥さんや子供の乗る機会が多い家庭向けには安心感がありますよね。


新車で買える懐かしい仏車

上田 一長一短的な話がなかなか途切れませんが、実はベルランゴ&リフターとカングーで最も大きく異なるのはパワー&ドライブトレインでして、前者が1.5リッターディーゼル・ターボにアイシンの8段AT、後者が1.2リッターガソリン・ターボに6段DCTという組み合わせになってます。


渡辺 単純に動力性能的なことをいえば、差は思った以上に小さかった。


新井 カングーもなかなかトルクリッチで低回転域から元気よく走りますね。でも音・振動系は意外とベルランゴ&リフターが健闘してました。


上田 あのPSAの1.5リッターディーゼルは本当に静かで滑らかなんですよね。8段ATとの相性もいいし。


渡辺 まあ後は燃費もけっこう変わってくるだろうからねぇ。レジャーだ帰省だと足を伸ばす機会も多いクルマだと考えると、やっぱりここはベルランゴ&リフターに軍配かなあ。


上田 なるほど。ここまできたら最大の注目点である乗り味にも踏み込んでみましょう。


渡辺 まず、車高違いで足まわりのセットも異なるベルランゴとリフターなんだけど、これまた想像以上に差は小さかった。フランス車らしいアタリの柔らかさはなんとかキープしながら、高重心の上屋をフラットに保ってピタッと安定して走る感じ。


新井 カングーは安定のゆるふわライドでしたが、正直、ちょっと味が落ちたような気もしました。


上田 それは過去の想い出が美しすぎるからとか。この車台の初出時からは相当時間も経ってますしね。


ベルランゴはフィール、シャイン、シャインXTRパックの3グレードで展開。試乗車は素のフィールだがAppleCarPlay/AndroidAuto対応のタッチ・スクリーンやバックカメラ、ルーフレールなどを備える。センターコンソールはシャイン以上で標準装備。後席は3分割の独立可倒式で、助手席も前に倒すことができる。リアハッチはガラス部分のみの開閉も可能。タイヤはシャインとフィールが205/60R16、シャインXTRパックは205/55R17を履く。

新井 ベルランゴ&リフターはまさにナベさんの言ってる感じでしたね。期待値よりは冷静にイマ的なクルマで、正直ちょっと物足りない。個人的にはC5クロスバックみたいなアタリの丸さが欲しくなりました。


上田 僕の場合はシートの印象も大きかったですね。カングーのムチムチしたタッチに比べると、ベルランゴ&リフターは結構座面が張っていて、パツッとした座り心地でした。


渡辺 カングーのシートなんて、表皮だけ見ると競艇場のオッさんみたいな灰色のグラデーションなんだけど、座るとなんとも華やかだよね。ベルランゴ&リフターもC3エアクロスのようなシートが採用されるといいんだけどねえ。


上田 やっぱりカングーの味付けは巧いですよね。ロールが大きくても接地感は途切れず、安心感がある。確かにピッチやバウンドは大きめだけど落ち着いていられます。


新井 山道をきっちり踏んでいっても四肢がベターッと張り付いてしっかりついてきてくれるしね。


渡辺 サンクや205で下地が出来てるうちらみたいなオッさんは、その味こそがご当地感だと認識してるからねえ。そういう目で見ればカングーは、新車で買える最高に懐かしいフランス車なのかもしれない。でも、ベルランゴ&リフターも充分包容力あるとは思うけどね。もしここにVWキャディなんかあれば全然違う味わいに思えるんじゃないかな。


上田 まぁ確かに我々は想い出語りをし過ぎてるのかもしれません。


新井 同窓会になっちゃったかな。


渡辺 クルマ酔いしやすい子供がいる家なんかはベルランゴ&リフターの方がかえって優しいのかもよ。あと、忘れてならないのはリフターにはアドバンスド・グリップ・コントロールがついてること。これ、3008で試させてもらったことがあるけど、想像以上に効果的に走破性高めているよ。単なるオマケ以上のことはやってくれると思う。


新井 そうやって考えると、今までカングーには望めなかったリフターの超充実ぶりというのは、一定のニーズがありそうですね。


上田 むしろカングーとガチになるのはベルランゴの方かもしれません。


渡辺 ドライバー目線でみれば、クルマとの対話濃度が濃いのはやっぱりカングーの方だろうね。


新井 異議なしですね。


上田 低速域からわかりやすくクルマが喋りかけてくる感じがカングーの美点ですね。


渡辺 でもベルランゴの方が対話感がないかといえばそれは違う。むしろイマ的なクルマとしては情報量は多めかもしれない。


新井 でも、クルマの側がやってくれる感が大きいのも事実でしょう。


上田 我々はクルマに関しては面倒くさい方につい反応してしまいますからね。


渡辺 折角の週末にクルマと対話すんな家族と対話しろと奥さんにツッコまれたら返す言葉がない。だったらADASにフォローしてもらいながら家族とのコミュニケーションを密にするという幸せもあるよね。


新井 そういう総合力というかバランス感というか、そこでベルランゴは勝ちに行こうというわけですね。


話す人=渡辺敏史(まとめも)+新井一樹+上田純一郎(ともにENGINE編集部) 写真=茂呂幸正


■ルノー・カングー・ゼン
駆動方式 フロント横置きエンジン前輪駆動
全長×全幅×全高 4280×1830×1810mm
ホイールベース  2700mm
トレッド(前/後) 1520/1535mm
車両重量 1450kg
エンジン形式 冷直列4気筒DOHCターボ
排気量 1197cc
最高出力 115ps/4500rpm
最大トルク 190Nm/1750rpm
トランスミッション デュアルクラッチ式6段自動MT
サスペンション(前) マクファーソン・ストラット+コイル
サスペンション(後) トレーリングアーム+コイル
ブレーキ 通気冷却式ディスク/ディスク
タイヤ(前後) 195/65R15
車両本体価格 264万7000円


■シトロエン・ベルランゴ・フィール
駆動方式 フロント横置きエンジン前輪駆動
全長×全幅×全高 4405×1850×1850mm
ホイールベース  2785mm
トレッド(前/後) 1570/1560mm
車両重量 1610kg
エンジン形式 直列4気筒DOHCターボ・ディーゼル
排気量 1498cc
最高出力 130ps/3750rpm
最大トルク 300Nm/1750rpm
トランスミッション 8段AT
サスペンション(前) マクファーソン・ストラット+コイル
サスペンション(後) トーションビーム+コイル
ブレーキ 通気冷却式ディスク/ディスク
タイヤ(前後) 205/60R16
車両本体価格 312万円


■プジョー・リフターGTライン
駆動方式 フロント横置きエンジン前輪駆動
全長×全幅×全高 4405×1850×1880mm
ホイールベース  2785mm
トレッド(前/後) 1550/1560mm
車両重量 1650kg
エンジン形式 直列4気筒DOHCターボ・ディーゼル
排気量 1498cc
最高出力 130ps/3750rpm
最大トルク 300Nm/1750rpm
トランスミッション 8段AT
サスペンション(前) マクファーソン・ストラット+コイル
サスペンション(後) トーションビーム+コイル
ブレーキ 通気冷却式ディスク/ディスク
タイヤ(前後) 215/60R17
車両本体価格 379万円


(ENGINE2021年5月号)

無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。

無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。

いますぐ登録