2022.01.01

CARS

ホントに飛ぶかと思った! ビートたけしさんのポルシェ959の運転もした、つまみ枝豆さんの愛車とは?

根っからのクルマ好きで、国産車をはじめメルセデス・ベンツ、フェラーリ、ポルシェなどを乗り継いできたタレント、つまみ枝豆さん。師匠であるビートたけしさんや、愛する奥さんとのクルマ話を伺いました。

19歳で買った中古のグロリア

黒いハットに黒の上下という出で立ちは、乗りつけた純白のポルシェ911との対比でとてもシックに見えた。クルマから降り立ったのはタレントのつまみ枝豆さん。私と同い年の62歳である。「おはようございます」と、笑顔で挨拶する枝豆さん。白い顎ひげや微笑んだときに出来る目尻の皺に、なんとも言えない雰囲気がある。とても人懐っこいというか、人を安心させる笑顔なのだ。

枝豆さんは静岡県伊豆市で育った。免許を取ったのは18歳のとき。19歳で中古の日産グロリアを買った。自分名義の初めてのクルマである。「とにかくデカいクルマが欲しくて。本当はセドリックが欲しかったんですけど、いい中古がなくて。クリーム色のグロリアを28万円ぐらいで買ったんじゃなかったかな? コラム・シフトで、シートもフカフカでね(笑)。でも喜んで乗ってました。東京へも行ったし」

静岡ではお姉さんのご主人が持っていた箱スカや、先輩が乗っていた510のブルーバードなども運転させてもらったという。

「姉の旦那さんが勤める会社の社長が箱スカのGT-Rを持っていて、見せてもらいに行きました。リア・ウィンドウに熱線が入ってないから本物だあ! などと言って喜んでいました」

つまみ枝豆 1958年静岡県生まれ。地元の先輩で幼なじみでもあったガダルカナル・タカとお笑いコンビを結成、その後「たけし軍団」に参加する。ビートたけしのテレビ番組や映画監督作品に出演することを機に、一躍有名となり数多くのドラマ、バラエティで活躍する。2018年、ビートたけしが抜けた事務所の社長となった。2020年、事務所名をTAPに変更、タレントおよび社長業を務めている。妻はタレントの江口ともみ。

東京に出て芸能界に入ったのは22歳のときだった。

「おカネがなくてクルマなんか買える状況じゃなかったのに、どうしてもクルマが欲しくてスズキ・セルボを買いました。軽自動車ですけど、すごく車高が低くて、ゴーカートみたいで楽しかった」

軽自動車から乗り換えたのは、なんとBMWだという。

「知り合いのクルマ屋さんから“ビーエムあるけど乗る?”って、連絡があったんです。見に行ったらモス・グリーンのボディにストライプが入った3シリーズ(E30)のハルトゲだったんです。カッコイイ! と思って買いました」

まだ駆け出しの芸人だった枝豆さんが、いきなりのハルトゲ。枝豆さんの人懐っこさと、人付き合いの良さによるものだと想像した。

「非難轟々ですよ(笑)。プロダクションの副社長に“ガイシャなんか乗って!”って言われて。でも、たけしさん(ビートたけし)が“枝豆はクルマ好きなんだから、いいんだよ”って言ってくれて、許されました」

そんな師匠をハルトゲに乗せて首都高速を走ったという。

「代官町の出口付近でラジエターがブワーッと吹いちゃって。首都高速を降りたところでクルマを停めて、“すいません、殿はここからタクシーで行ってください”って。それ以来、“オマエのクルマには絶対乗らない”って(笑)」



師匠の930ターボ

枝豆さんのクルマ遍歴にビートたけしさんは欠かせない存在だ。枝豆さんはたけしさんの運転手をやっていたからだ。

「930ターボ(ポルシェ911)のフラットノーズを師匠が持ってたんです。それを僕が預かっていて、好きなように乗っていました。人間って不思議ですね。他人のクルマだとわかっていても、街へ出るとみんなが振り返るじゃないですか。窓を開けてポーズを決めたりして。ちょっと調子に乗ってましたね(笑)」

常に磨いて、きちんと整備に出していたそのフラットノーズを売ってくれという人が登場した。

「師匠の知り合いの社長さんがどうしてもって。僕、同席してたんですけど、社長が現金をテーブルにドン! って置いたんです。そうしたら、売らないって突っ張ってた師匠が“ま、いっか!”って。自分のクルマじゃないのに、すごくショックでした。悲しかったです」

フラットノーズを買った社長は九州在住の人で、枝豆さんは自走で届けたという。

自分のクルマはハルトゲの後はトヨタ・クレスタ、日産テラノと国産車が続き、そのあとはずっとメルセデス・ベンツに乗ってきた。

「最初のベンツは560SEL(W126)。ペッタペッタに車高落して、所ジョージさんに“関東一低いベンツ”という称号をいただきました」

メルセデス・ベンツはパゴダ・ルーフのSLをはじめ、SL500(R107)、ゲレンデ・ヴァーゲン、Vクラス、124型ワゴンのAMG、500Eなどを乗り継いできた。

「フェラーリは328GTSを持っていました。カリカリに改造したら、クラッチが重くなりすぎちゃって、運転しづらいったらなかった(笑)。でも、手間のかかるクルマってその分愛着が湧くんですよね」



PORSCHE 911 CARRERA S(997型) 997型は2004年にデビュー。先代の996型で不評だった涙目型ヘッドライトは丸目型に戻された。枝豆さんは2007年に新車で購入した。いわゆる前期型で3824ccのフラット6は355ps/6600rpm、400Nm/4600rpmを発生する。枝豆さんが一番好きなところは、ブレーキの素晴らしさ。



愛着の1台

撮影に乗ってきたポルシェ911カレラS(997型)も愛着のある1台だ。

「実はカミさん(タレントの江口ともみさん)が、2007年に番組で大怪我したんです。バギー走行中の落下で内臓にダメージを受け、手術ということになりました。医師にそんなに簡単な手術ではないと言われたんです。手術室の前で“オレ、待ってるからな”って言ったら、ストレッチャーの上でニコッと笑ったんです。そうしたら、うわーっとこみ上げるものがあって、声をあげて泣きました」

奥さんの手術が無事成功したことを記念して、奥さんが大好きだったポルシェ911を購入した。

「だから、ほとんど乗らないんですけど、これは売れないんです」

PORSCHE 959 WRCグループBのホモロゲーションを取得するために、1987年に生産された。200台限定の予定だったが、あまりの人気のために292台が生産された。水冷式水平対向ツイン・ターボ・エンジン、電子制御シャシー、4WDシステム、複合素材ボディ、空力ボディなど、ポルシェが当時の自動車エンジニアリングの粋を結実させたモデルとなる。ビートたけしさんが所有しており、枝豆さんだけに運転を許した。

師匠のクルマも含めて、これまで最も印象深かったのはポルシェ959だという。

「難しいなあ。でも師匠の959ですかね。あの加速はシビレました。ホントに飛ぶかと思った(笑)。師匠のクルマで言えば、ブガッティ・ヴェイロンも運転したし、レーシング・カーでレースにも出たけど、やっぱり959かな。自分のクルマなら328GTSですね。あのカタチがすごく好きなんです」

国際C級ライセンスを持ち、数多くのレースにも出た枝豆さん。あなたにとってクルマとは何ですか?

「うーん。愛人かなあ。カミさんの方が大事だけど、これもないと困る」

結婚生活25年、一度も喧嘩したことがないという枝豆さん。いつか、キャンピング・カーで奥さんと日本一周をしたいと思っている。

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文=荒井寿彦(ENGINE編集部) 写真=筒井義昭

(ENGINE2021年7月号)

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